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MIRAIプロジェクトの成果を生かし、社会の役に立たせる方法を考える

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MIRAIプロジェクト成果報告会に出席した。More Mooreとして微細化を推し進める結果、デバイス物理からレビューし、衝突のないバリスティックトランジスタや、FINFETのような3次元トランジスタ構造、ショットキーバリヤのソース接合といったアイデアなど、半導体がさらに発展することは明確になった。半導体産業の重要性も経済産業省は認識している。ならばプロジェクトのやり方を再検討することが重要ではないか。

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米ソ冷戦時代の米国DOD(国防総省)プロジェクトではメーカーはDODから資金を出してもらい、研究開発して学会発表しておしまい、というプロセスをたどっていた。当時のIEDMやISSCCではDODが資金提供した研究報告が山のように出ていた。しかし、手掛けていた研究成果を使ってビジネスすることは許されない。DODによるがんじがらめのしがらみ研究でしかなかった。IEDMでこのようなDODがらみの講演(確かロックウェルかヒューズの発表だと記憶している)を聞いていた時、後ろにいたアメリカ人同士は次のような会話をしていた。「おい、あのようなDODからの資金援助による研究をやってみたいと思うか?」「おれは嫌だね。あんながんじがらめの研究は。自分で得た成果は自分で起業してビジネスをやってみたい」「全く同感だ」。

研究者は自分の研究成果がどの程度世の中で通用するか問うてみたいはずだ。自分で研究開発した仕事を売り物にしたいと思う研究者もいるだろう。しかし、日本ではこういった考えの研究者はなかなか出て来ない。折しもこのMIRAIプロジェクトは来年度で終了するという。実にもったいない。せっかくのアイデアがビジネスにならずに終わるとしたら実にもったいない。これまで国家プロジェクトのやり方は、何年計画で計画が終わったらそれでおしまい、というやり方だった。

しかし成果ならば、なぜスピンオフして事業化しようという人が出て来ないのか。日本の産業が活性化するためには、国家プロジェクトで成果を上げて、それを持ってスピンオフしてビジネスへつなげるようにすべきではないか。IMECも台湾のITRIも積極的にスピンオフを進めている。IMECからスピンオフして生まれた企業は20社以上ある。アルバニーのIBM/SEMATECH関係のプロジェクトの目的はニューヨーク州における雇用創出である。このために州政府が資金を拠出している。スピンオフしビジネスがうまくいけば雇用促進につながる。国家プロジェクトからスピンオフして起業し、ビジネスを大きくし雇用を創出する、といった方向に持っていくべきではないだろうか。そうなれば国家プロジェクトは大いに意味がある。スピンオフ→新ビジネス創出→雇用創出、という成長戦略につながるのである。こういった仕組み作りを経済産業省は進めるべきではないだろうか。

今回のMIRAIも2010年度でおしまいという形に終わらせてはもったいない。もちろん、いたずらに継続するだけではやはり税金の無駄にもなりかねない。雇用創出へつなげてこそ、使った税金が国民に還元されることになるのではないだろうか。

だとすれば、経産省が次に行うべきミッションは、起業できる環境を作ることだろう。会社設立のために必要な手続きは言うまでもなく、全国のVC(ベンチャーキャピタル)を組織化したり、起業したい人にVCを紹介したり、VCに資金提供してもらうためのアドバイスを行ったり、インキュベーションセンターという箱モノを作ったり、その箱の中でビジネスできるようにするための仕掛けを作ったり、成長できそうな分野のベンチャーが税制優遇策を得られるように財務省に掛け合ったりする、といった環境は必要である。幸いにもヘラクレスやジャスダックというベンチャー向けの証券取引所は出来た。既存のVCが動かないのなら、政府系VCを作ってもいい。技術の目利きができる人を契約コンサルタントとして集めてもいい。

日本経済を活発にし、かつ新規雇用を促進するためにはやはり若い人たちが起業できる環境を作り、彼らが思いっきり世界に向けて暴れまわれる環境を作る必要があるのではないだろうか。いつまでも古い体質の大企業に頼っているようだと日本経済はいつまで経ってもさっぱり活性化しない。

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