セミコンポータル
半導体・FPD・液晶・製造装置・材料・設計のポータルサイト
セミコンポータル

大きく変わる近未来の車載半導体

|

車載半導体が大きく変貌しようとしている。一つは、クルマのさまざまな機能をコンピュータで制御するのであるが、分散コンピュータであるECU(電子制御ユニット)があまりにも増えてしまったため、ECUや配線を整理しようという動きであり、もう一つは電動(EV)化である。機械部品からシリコンへ、という流れは急に加速している。8月23日にオンラインで開催するSPIフォーラム「近未来の車載半導体」ではこの流れを解説する(図1)。

図1 8月23日開催のSPIフォーラム

図1 8月23日開催のSPIフォーラム


クルマのECUは高級車だと1台当たり80〜100個にもなり、大衆車でさえ30〜40個も搭載されているという。この先、自動運転やコネクテッドカーなど複雑なECUが出てくるとさらにECUが増えていく。これでは配線がスパゲッティのように絡みつく恐れが出てくる上に、重量もかさんでくるため燃費/電費が悪くなってしまう。

そこで、車体のボディを制御するECUや、サスペンションやステアリング、タイヤなどシャーシを制御するECUをまとめようという考え方が出てきた。例えばボディにはワイパーやウィンカー、パワーウィンドウなどの各ECUを一つにまとめる。さらにカーナビやADAS(先進ドライバー支援システム)、カメラなどのインフォテインメント系のECUを一つにまとめる。それぞれのドメインにあるECUを制御するマイコンをドメインコントローラと呼んでいる。

そして、それらのコントローラに搭載するソフトウエアを無線で更新するOTA(Over the Air)技術を通して必要なドメインコントローラへソフトウエアデータを配信するゲートウェイ(中央コンピュータ)も必要となる。この中央コンピュータはセキュリティ回路を通らないとデータが出力されないようになっており、認証を受けた通信データしか受け付けない。それでもそれを破られるかもしれないため、秘匿性の強いデータには暗号をかけ、鍵のかかった部屋(メモリ領域)に保存しておく。サイバー攻撃からクルマを守るセキュリティ万全の中央コンピュータとなる。

これからのクルマは、コンピュータそのものになる。コンピュータは計算する機械だけではない。プラットフォームとなるハードウエアを中核に置き、機能はソフトウエアでカスタマイズする。つまり、ソフトウエア・デファインド・マシン(ビークル)である。クルマ自身がソフトウエアで定義される機能を大量に持つことになる。

そして、ドメインコントローラは複数のマイコン(ECU)を持つため、データセンターと同じ仮想化技術が使われるようになる。ソフトウエアのハイパーバイザでアプリケーションやコンテナを切り替えていく。まさにデータセンターそのものだ。

そしてコンピュータになじみのある電動化には、SiのIGBTを使うケースが多いものの、TeslaのEV「モデル3」にはSTMicroelectronicsのSiC MOSFETが使われている。さらにInfineonやロームなども激しく追いかけている。Siと比べてSiCの方が効率は圧倒的に高いが、価格がSiの10倍もしていたため普及が遅かった。しかし、SiCは徐々に使われ始めると同時に価格も下がってくる。高耐圧を活かして1200V以上の耐圧と、数十mΩ(ミリオーム)のオン抵抗は得られるから、急速充電器にはもってこいのデバイスである。

SiCよりもさらに高性能が期待されるのがGaN。これまで電流をウェーハ面に沿う横型HEMT(高移動度トランジスタ)タイプが主だったため、650V程度の耐圧しか期待できなかった。しかし、ウェーハ面に垂直に電流を流す縦型GaNなら1200V以上の高耐圧が期待できる。しかも理論的にSiCよりも電力効率が高いといわれている。

セミコンポータルは、SPIフォーラム「近未来の車載半導体」において、これからの半導体の性能を決める大きな技術を紹介する。一つ目の講演は、ソフトウエア・デファインドの流れを解説するNSITEXE(デンソーなどが出資したファブレス半導体)のCTOである杉本英樹氏、もう一つの講演は縦型GaNデバイスを研究開発している名古屋大学教授の須田淳氏にお願いしている。さらにもう1件の講演追加も予定されている。申込はこちらから;SPIフォーラム「近未来の車載半導体」

月別アーカイブ

Copyright(C)2001-2024 Semiconductor Portal Inc., All Rights Reserved.