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Infineonの完全自動化200mmラインとパワー半導体用300mmラインを見た

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ドイツのInfineon Technologiesは、パワー半導体向けに300mmウェーハラインをドレスデンに設置し稼働させている。パワー半導体は数量の点ではデジタルやアナログ製品に劣るが、そのチップを大口径化するメリットはやはり低コスト化にある。加えて、人件費の高いドイツでもコスト的に見合う生産をするため200mmラインを完全自動化した。

図1  Infineonのドレスデン工場 左の建物が300mm、右の二つとその半分の大きさの建物が200mmライン 出典:Infineon Technologies

図1  Infineonのドレスデン工場 左の建物が300mm、右の二つとその半分の大きさの建物が200mmライン 出典:Infineon Technologies

Infineonの量産ラインがあるドレスデンは、オペラハウスや歴史的な建造物の多い古い街だが、ハイテク分野ではシリコンザクソニーと呼ばれている。旧東ドイツに属していたドレスデンはザクセン地方にあるためだ。ここには半導体ファウンドリのGobalFoundriesがあり、製造装置、製造に必要なガス製造などの産業も揃っているからでもある。

Infineonはこのドレスデン工場に20年間で30億ユーロを投資してきた。元はQimondaの工場だったが、それを買い取った。ここに働く社員数は2000名、内50%が交替制勤務だとしている。図1の左端の建屋が300mmラインで、右の三つ(右端は小さい)が200mmラインである。300mmウェーハで生産される製品は、オン抵抗が低いCoolMOSと呼ばれる縦型パワーMOSFETやIGBTなどの製品。CoolMOSは耐圧が600V以上と高いながらオン抵抗が従来のMOSFETの1/4〜1/5と小さなパワー-MOSFET。コンピュータの電源やスマホや携帯機器の電源にも使う。IGBTは、電流が数十A以上と大きな電源やインバータなどに使われ、再生可能エネルギーや電気自動車、工業用のモータドライブなどに組み込まれる。


図2 200mmの完全自動化ラインを走る搬送システム 出典:Infineon Technologies

図2 200mmの完全自動化ラインを走る搬送システム 出典:Infineon Technologies


200mmのラインにはほとんど人がいない。メトロロジー計測のベイやモニターシステムの前に数人いる程度で、搬送系からウェーハの出し入れ、装置から装置への搬送には人手を全く介さない。このシステムはInfineonが独自に手を加え実現したものだという。ウェーハはオープンカセットに25枚入れられ、天井の自動搬送システム(図2)に載せられ、装置から装置へと移動する。全てのカセットにはRFIDが搭載され、MCS(Material Control System)がそのIDを読み取り次の作業工程へと搬送する。搬送コンベアはリニアモーター方式で搬送路の壁に設けられた磁石(図2の赤い部分)で動く。この搬送システムは村田機械が作ったモノで、Infineonによるとこの搬送システムの作製を数社に依頼すると、多くがしり込みし、村田機械が挑戦すると言ってくれて出来たものだという。搬送コンベアシステムの全長は5kmにも及ぶという。

さて、カセットが装置の近くに到着すると、天井からエレベータに載せられ、カセットが集まるカセットステーションに到着する。ロボットアームがカセットを持ち上げ、次の装置に行く前にカセットを並べ替える (図3)。ここでも無人だ。並べ替えられたカセットを今度は、ローディングロボット「HERO君」(図4)がカセットを受け取り、装置の前にセットする。このロボットは床に貼られたレールを認識、それに沿って動く。レールの前に異物、例えば人間の足などがあると即座にロボットは停止する。足をよけるとロボットは再び動き出す。


図3 ウェーハステーションのロボットアームがカセットの行き先を再調整する 出典:Infineon Technologies

図3 ウェーハステーションのロボットアームがカセットの行き先を再調整する 出典:Infineon Technologies

図4 装置の前でカセットを出し入れするロボット 出典:Infineon Technologies

図4 装置の前でカセットを出し入れするロボット 出典:Infineon Technologies


このクリーンルームでは、人はカセットの状況をモニターで見たり、制御用の機械をモニターしたりしているだけである。ウェーハは1分間に7万枚が動いている。時には、カセットが数時間待ち、他のカセットと同時に処理されることもあるという。ただし、急ぎ、いわゆる特急品の場合は人が運ぶこともあるとしている。

クリーンルームはクラス1の全面ダウンフロー方式で、基本的に人手を介さない設計にしている。クリーンルームの湿度や温度、気圧、ダスト数などの測定は一定の場所ではなく、さまざまな場所で行う。そのためのロボットもある(図5)。このロボット「AMOR君」はパーティクルのサイズも測定する。目の部分が時々動いて、心の癒しになる。測定結果において、問題があれば即座に知らせる。


図5 クリーンルームの状態をモニターするロボット 出典:Infineon Technologies

図5 クリーンルームの状態をモニターするロボット 出典:Infineon Technologies


300mmラインは、基本的にはミニエンバイアロンメントシステムであり、他社のクリーンルームとそれほど大きな違いはないとしている。クリーンルームの清浄度はクラス1000であり、密閉したFOUPカセットを利用する。ここでも村田機械の搬送システムを使っている。このラインでは人が近くだと装置から装置に運べるようになっており、ロボットはそれほどいない。300mmウェーハを25枚満載したFOUPの重さは8.5kgであり、人間が運べる重量ではある。300mmラインはSEMIスタンダードに沿って作られている。

Infineonのパワー半導体ウェーハは、最後の工程で裏面研磨して40µm程度に薄く削る。Infineonの300mmラインは、オーストリアのフィラハにもあり、そこはむしろ開発拠点となっている。300mmのラインの構築は2008年にフィラハで検討をはじめ、パイロットラインを構築した。ドレスデンでは、2011年に300mm量産ラインを完成させた。2014/2015年度にも生産能力を上げるために300mmラインとIGBTに重点投資する。

(2014/10/01)

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