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NI、RF/ミクストシグナルIC向けフレキシブルなテスターをリリース

National Instrumentsは、半導体チップの高性能化・高機能化に合わせてフレキシブルで再構成可能な半導体テストシステムSTS(Semiconductor Test System)を開発した(図1)。RFやミクストシグナル半導体のテスト向け。オープンなモジュラー方式のPXIハードウエアプラットフォームをベースにしているため、実験用から量産用にPXIを増設するだけで移行できる。最大の特長は開発から量産までの期間短縮だ。

図1 NIが開発したRF/ミクストシグナルIC向けのフレキシブルテスター

図1 NIが開発したRF/ミクストシグナルIC向けのフレキシブルテスター


特性評価に使ったソフトウエアとハードウエアを量産においてもそのまま使えるため、タイムツーマーケットを短縮できる。開発と量産でのデータの相関をとることは簡単にできるとしている。PXIシステムは広バンド幅のPCI Expressバスを標準としているため、他のデバイスや装置と接続可能だ。このPXIのエコシステムを利用することで、テストプログラム作成をサードパーティに依頼することもできる。

加えて、地震などの災害により工場がストップして、他の工場で製品を代替え生産する場合もすぐに対応できる。従来なら工場ごとに製品が違っていてテスターそのものも違う場合が多い。しかし、STSだと、ある製品が止まっても、DUT部分を取り換えるだけで、被災した工場のテストプログラムをそのまま移植できる。ハードウエアが共通だからだ。データの通信プロトコルも共通である。

半導体の集積度が上がるにつれ、テストカバレージを最適化するテストシステムは、生産性を上げるうえで極めて重要になってくる。しかもコストを上げずに集積度を上げた次世代チップのテストをしたいはず。特にミクストシグナル半導体製品では、このPXIベースのSTSテストシステムは従来のテスターよりも低コストでカバレージを上げることができる、とInfineon Technologiesの自動車用車体エレクトロニクス製品のシニアデザイン&アプリケーションエンジニアのHans-Peter Kreuter氏は述べている。

特に、最新のワイヤレス技術で使われるRFとミクストシグナルの半導体新製品をテストする場合、従来のATEで使われたテストカバレージが古すぎることもあるという。オープンでモジュラーアーキテクチャのこの新製品では、TestStandテスト管理ソフトウエアとLabVIEWシステム設計ソフトウエアを駆使できるため、半導体製造にとって豊富な仕様をプログラム化できる。カスタマイズ可能な操作インターフェースや、ハンドラとプローバの統合化、独自のピン配置を持つデバイス固有のプログラミング、テストデータ形式の標準的なレポーティング、マルチサイトのサポートなどが可能となる。これらの機能を使い、テストプログラムの開発とデバッグ、実行を早めることができる。

米国中部時間8月5日から開催されたNIWeek 2014において、NIがデモしたサンプル(シミュレーション)では、DCパラメータテストからACテスト、過渡応答テスト、高周波のsパラメータなど、RFデバイスに必要なテスト項目を一瞬のうちに済ませられる。さまざまな測定条件はGUI(Graphical User Interface)を使ってパラメータを変えると、過渡応答の波形の時間軸や電圧軸を拡大し、リンギングなどの波形の発振を確認できる。また、デバイスそのものを変える場合には、PXIプラットフォームに搭載しているFPGAを書き換えればよい。そのサポートスフトウエアもLabVIEWと呼ばれる、設計開発ツールを使って書き換えることができる。

NIはハードウエアプラットフォームのPXIシステムと、LabVIEWを備えているため、電子システムの設計とテストには、周辺回路システムを組み込むだけですむ。このSTS半導体テスターが、この周辺回路システムに相当する。

実際のSTSシステムは、通常のATEのように、半導体製品をテストするボードと、ハンドラを取り付け、テストする。ウェーハ上でのテストももちろん可能。STSシステムには3種類の装置があり、それぞれPXIシステムを1台、2台、4台を搭載できる。試作用、中規模生産用、大量生産用、と使い分けることができる。


図2 National Instruments社Automated Test Marketingのシニアマネージャー、Luke Schreier氏

図2 National Instruments社Automated Test Marketingのシニアマネージャー、Luke Schreier氏


NIのPXIシステムの責任者である、Automated Test MarketingのシニアマネージャーであるLuke Schreier氏(写真2)によると、同社はこれまで17年間に渡って、PXIモジュールを開発してきた。PXIシステムには、筐体(シャシー)にシグナルアナライザや、ファンクショナルテストやプロトコルアウェアテスト、高速シリアルインターフェースなどのモジュールを組み込んでいる。こういったモジュールは600種類にも及ぶという。これらのPXIモジュールをカーエレクトロニクスや工業機器、航空・宇宙用機器などの分野で実績を積んできた。今回のSTS筐体にPXIシステムを搭載した半導体テスターは、PXI応用の延長線上にある。

今後、NIは各PXIモジュールの性能・機能を増強し、PXIシステムを進化させる。半導体テスターも同様に進化する。今回、NIは半導体産業に向けてテストベッドまで作り込んだが、これをさらにカスタマイズするつもりはない。むしろオープンなプラットフォーム方式であるから、サードパーティに半導体用のテストベンチを作製してもらう方向だ。NIとしてはPXIモジュールをさらに進化させていくことに専念する。

(2014/08/07)

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