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半導体不足解消に向け、後工程への投資が相次ぐ

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半導体不足の解消に向けて、前工程に続き後工程の投資も相次いでいる。投資が先行するAmkorやASEなどのOSATに加え、Intel、ロームなどの半導体メーカーも続く。日本政府の国内製造支援は官民合わせて1.4兆円の投資になる、とセミコンジャパンにビデオ出演した岸田文雄首相が述べた。チップの元となるシリコンウェーハの出荷が過去最高という予測もある。

後工程を専門に請け負う製造サービスOSAT(Outsourced Semiconductor Assembly and Test)業界では、工場拡張のための投資が相次いでいる。業界2位の米Amkorがベトナムのバクニン地方に先進のSiP(System in Package)パッケージのアセンブリとテストのために2億〜2.5億ドルを投資、新工場を設立する。2万平方メートルのクリーンルームの第1期工事は2022年に始まり、大量生産開始は2023年後半になると見込まれている。Amkorに続き、最大手の台ASEは12月10日、マレーシアのペナン島のクラス10/100のクリーンルームをCMOSイメージセンサ用に拡張すると発表した。特に、車載用に強いOnsemi向けのラインとなる。


図1 ロームのマレーシア新工場完成予想図 出典:ローム

図1 ロームのマレーシア新工場完成予想図 出典:ローム


米Intelはマレーシアに300億リンギ(約8100億円)を今後10年間に渡り投資する、と12月17日の日本経済新聞が報じた。2024年にパッケージ工場を新設する。既存のアセンブリとテスト工場の拡張に加え、最新パッケージ工場も新設する。IntelはFoverosと呼ぶ3次元ICやEMIC技術と呼ぶ2.5D-ICの技術を開発しており、これから量産でTSMCやASEを追いかける。ロームは、82億円を投じ、マレーシア工場の生産能力を従来の1.5倍に拡大する。22年1月から新棟建設に着手し、23年8月の完成を目指す(図1)。アナログLSIとトランジスタの生産で、地上3階建て、延べ床面積は2万9580平方メートル。

世界的な半導体不足はまだ続く。トヨタ自動車が2022年1月の世界生産は過去最高の80万台規模になるという見通しを発表、半導体不足は解消されたかのように見える。しかし、12月8日以降、愛知県の田原工場や福岡県の宮田工場などの稼働は一時停止したとも言われており、サプライチェーン全体はまだ解消とは言えない。

それどころか、EV(電気自動車)という新需要も生まれる。日産自動車やVolkswagenなどのEVへの活発な大規模投資に続き、トヨタもEVに4兆円を投資すると発表した。EVの世界販売台数を30年に350万台とし、バッテリ投資額はそのうちの2兆円になる。燃料自動車(FCV)や水素エンジン自動車でさえもバッテリとモーター(発電機と始動用)が必要なため、どの道バッテリ開発は将来に渡ってマストとなる。トヨタは長年ハイブリッドカーを手掛けており、バッテリの自社開発の歴史は長く、EV向けバッテリ開発にも自信を持っている。

半導体メーカーが工場を拡張し生産量を増やせば、シリコンウェーハも増産する必要がある。2021年のシリコンウェーハ出荷面積が前年比13.9%増の138億9800万平方インチになりそうだとの見通しをSEMIは10月に発表したが、22年、23年もプラス成長で推移するとしている。ただし、結晶成長メーカーの製造装置の納期がかなり伸びており、実際に生産能力が寄与するのは24年以降になるとの見通しを信越化学工業が示した、と15日の日経産業新聞が報じた。

半導体不足がまだ切迫していることは、半導体テスターによく表れている。テスターはプロセスウェーハにもパッケージング後の半導体製品にも使われるからで、これがなければ半導体製品を出荷できない。半導体テスター最大手のアドバンテストによると、7〜9月期の受注額が前年同期比3.2倍の2038億円に達した。皮肉なことに半導体チップが足りないためテスターが製造できないという結果に陥っている。10〜12月期、22年1〜3月期はそれぞれ1000億円の受注額を抱えると見ているが、ここまで受注が拡大しているのは半導体製品が拡大しているためと見ている。

アドバンテストに見られるように、半導体購入量がコンピュータや自動車よりも少ないため、供給を後回しにされる傾向がある。しかし、テスターや半導体製造装置向けの半導体製品の供給プライオリティを上げてもらうように半導体メーカーと交渉しているという。


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(2021/12/20)

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