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Huaweiを巡り米中貿易戦争の影響がじわじわ浮上

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米中貿易戦争は、さまざまなところに影を落としている。先週も、中国Huawei(華為科技)への攻撃によって、TSMCの売り上げ低減や、東芝メモリの脱Huawei化などの報道があった。一方で5Gの免許を中国政府が4社に交付したが、Huawei支援の意味もある。

ファウンドリ市場シェアの半分を握る台湾のTSMCではHuawei向けビジネスが失速している、と6月6日の日本経済新聞が伝えた。Huaweiが米国政府から制裁を受け、Huaweiが米国市場を失うためだ。TSMCへの注文が当然減る、少なくとも前年よりも受注は減少する、と述べている。Huawei傘下のHiSiliconは7nmという最先端プロセスを使ったチップを設計しており、TSMCにとって最重要顧客の一つだった。

TSMCはHuaweiへのビジネスを継続すると表明しているが、その注文は徐々に減りつつある。日経によると、2019年1~3月期の中国向け顧客の売上比率は18%にまで高まっており、HiSiliconの売り上げは全売上の1割を占めていたという。製品価格に占める米国由来の技術が25%を超えると禁輸に対象になるが、TSMCのサービスはHuaweiへの輸出を禁じられている訳ではない。そうはいっても台湾の工場だけではなく、中国南京にあるTSMCの工場でも稼働率が下がってきており、スマホの中国需要が減少しているとする。

5日の日刊工業新聞は、東芝メモリがHuaweiショックを受けていると報じた。東芝メモリにとってHuaweiは、NANDフラッシュメモリの主要供給先の1社だ。NANDフラッシュは米国由来の製品ではなく、25%制限の対象ではないため今のところ、通常の取引を続けている。通信装置に使う高性能サーバーにNANDフラッシュメモリを使っており、基地局の基幹システムへの懸念が強いという。

東芝は基地局向けシステムではなく、スマホ向けへのNANDフラッシュとして、Huawei以外のスマホメーカーへの営業攻勢をかけていると日刊工業は報じている。韓国Samsungや中国のOppoとVivoとみられるが、そう簡単ではない。Samsungは自社のNANDフラッシュを持っており、OppoやVivoは企業規模がまだHuaweiほどではないため、中国政府は様子見に留まっているが、Huaweiを抜くようになれば、今度はOppoとVivoに対して支配力を行使するからだ。これまでの中国共産党政府は、企業が小さなうちは干渉せず、勝負がついてから支配力を高めてきた。レンタル自転車の業界では数年前は小さな企業が数十社が乱立していたが、今は2社に決着しその2社への支配力を強めていると言われている。

6月3日にドイツのInfineon Technologiesが米国のCypress Semiconductorを90億ユーロ(約1兆880億円)で買収すると発表したが、米国政府の許可が下りるかどうか微妙である。また、両社の半導体製品を中国で販売する場合でも中国政府の許可も待たなければならない。米国企業を買収相手とするだけに、トランプ政権の出方が全くみえない。

半導体産業全体は、2019年に前年比12%減の見通しが発表されたが、さらに下がる可能性もある。5月に入っても韓国経済の輸出額は減少が続き、前年同月比で9%減となり、これで6カ月連続のマイナス成長となった。韓国のSamsungとSK Hynix、米国のMicronのわずか3社で市場の95%以上を占有しているDRAM市場は、製品の生産量をほとんど上げずに単価の値上げだけで2017年、18年を過ごしたメモリバブルを起こしたツケが回っている。DRAMユーザーはその2年間、二重三重発注でやりくりしてメモリ不足を凌いできただけに、今は在庫が膨らみ、今度はしっぺ返しで単価の値下がりを求めている。8日の日経によると、4月におけるDDR4の4Gビット製品単価は前月よりも3%安い2.9ドルとなった。7カ月連続下落が続いている。

これらのDRAMメーカーはNANDフラッシュも生産しており、NANDフラッシュは価格を正当に下げてきたのだが、これも大きな引き下げを求められている。4月における128Gビット品の大口価格が2ドル前後と前月よりも5%安くなった。DRAMとNANDフラッシュの両方を使うスマホの需要が米中貿易戦争の措置によって、スマホ需要が落ちかねないと心配する向きもある。

中国政府は、Huaweiを支援する意味もあり、国内の5G通信免許を4社に与えた、と7日の日経が報じた。この4社は、中国移動通信集団と、中国電信集団、中国聯合網絡通信集団の携帯電話大手3社と、放送行政を担う国家広播電視総局(広電総局)傘下でブロードバンドサービスを手掛ける中国広播電視網絡(中国広電)である。Huaweiは5G用の通信機器を開発しており、これら4社に納入できる立場にある。政府は5Gで総額260兆円の経済効果を見込んでいる。

(2019/06/10)

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