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UMCが中国企業との協力を大幅に縮小

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新年あけましておめでとうございます。
年明け早々、日本経済は株安・円高という不況をイメージさせる状況からスタートした。加えて、台湾のUMCが中国半導体産業への協力を大幅に縮小するというニュースが1月5日(土)に駆け巡り、米中貿易戦争の影響が半導体産業にやってきた。

マクロ的には中国の景気後退の影響を受け、Appleが今期業績の下方修正を表明したことから、米国におけるハイテク株安が引き起こされた。アップルショックとも呼ばれている。日本も1月4日の年明け東京証券取引市場は、日経平均株価が2018年末よりも452円安い2万円割れを引き起こした。4日の日本経済新聞によると、スマートフォン関連銘柄である村田製作所やTDKなどが大幅に株価を下げた。まさにアップルショックである。

これらの状況に鞭を打つように、UMCが中国から大きく手を引くという5日のニュースが流れた。直接の要因は、米国が産業スパイの罪で同社と中国側企業を起訴し、同事業への製造装置の輸出も規制したためである。2018年末には華為科技の副会長がカナダで逮捕され、米中の貿易戦争の影響は次第に大きくなりつつある。UMCは、中国のDRAMメーカーJHICCへの支援を縮小する。5日の日経は「関係者によると18年末、JHICCへの技術支援を担う約300人の部署に人員削減を通知。約140人を配置転換する方針で、一部に解雇を通告した」と伝えている。

中国は半導体の輸入超過が2014年時点で15兆円と大きく、毎年その超過額が増えていた。中国政府は昔から外貨準備高(ドル保有)を増やす方針を掲げてきており、2000年ごろにも半導体の輸入超過を解消するため、国産半導体を振興していた。しかし、中国で半導体ビジネスを継続できたのはSMICくらいだった。ほかの半導体企業は空中分解し、細々とファウンドリとアナログIDMで維持していた程度に過ぎなかった。中国が世界の工場の役割をまい進すればするほど、半導体の輸入超過額は毎年増えていった。

その輸入超過額が2014年に15兆円を超えるようになり、半導体製造の国産化を図るため、「中国製造2025」プロジェクトを掲げ、1年に1兆円もの半導体投資をするようになった。以来、米国や欧州の半導体企業の買収を試みたが、ほとんど失敗した。このため、Intelの大連工場、TSMCの南京工場など外資からの工場投資も推進してきた。中国の半導体工場としてファウンドリビジネスはそれほど発展しなかったため、半導体工場で製造する製品をメモリに絞った。NANDフラッシュが長江ストレージが製造し、DRAMを今回のUMCの支援によるJHICCと、Innotronが製造している。

米連邦大陪審が米国企業の技術を盗用という罪でUMCとJHICCを起訴していた。ただし、UMCはファウンドリビジネスが主体で、DRAM技術にはそれほど強くないため、この起訴に首をかしげる業界関係者も多かった。とはいえ、特殊なメモリや少量のDRAM生産をUMCが行っていたかもしれない。台湾にはファブレスのDRAMメーカーがあるからだ。

それでもUMCにとって、これ以上中国企業を支援していては、米国製製造装置を調達できなくなる恐れがあり、米国ファブレス企業がUMCに製造を依頼することが禁じられてしまうことを恐れたのではないだろうか。ファウンドリ企業にとってファブレス企業の依頼金額は大きいからだ。UMCのアニュアルレポートによると、製造依頼先の90%前後がファブレスである。もし米国のファブレス顧客を失えばUMCの打撃は極めて大きくなる。

(2019/01/07)

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