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通信を巡る、華為幹部の逮捕、ソフトバンクの通信不能、大臣は適材?

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中国華為科技(ファーウェイ)の副会長が、米政府の要請を受けてカナダ当局に1日に逮捕された。この衝撃的なニュースが先週末に流れた。いよいよ、米中の貿易戦争は、幹部の身柄拘束、という事態に発展してきた。一方国内では、ソフトバンクの通信ネットワークが数時間もつながらないという事態が起きた。いずれも通信機器が共通点だ。

華為幹部の逮捕の理由は、米国が経済制裁を科すイランに違法に製品を輸出した疑いとされているが、米国政府は同社との取引を禁止しており、やはり中国の通信機器メーカーZTEとはその前に禁止している。12月7日の日経はさらに、米政府は同社に対し、米企業との取引禁止などの制裁に踏み切る可能性がある、としている。

そもそも、中国製通信機器を米国内の基地局に導入すると米国情報が筒抜けになる、というセキュリティ上の理由を持ち出すことによって、米国政府は中国製品の締め出しを狙っている。

これまでの中国政府の姿勢を見ていると、社会主義市場経済という矛盾を含む概念を標榜し、少しずつ豊かになることを目指してきた。2000年頃取材したときは、東の沿岸部から発展させ、50年かけて西の辺境まで豊かにすると、政府は述べていた。ただし、急速な経済発展と同時にインターネットというITサービスも急にやってきたため、50年がもっと早まっているかもしれない。ITの急速な発展は、アリババやテンセント、百度などの巨大ITサービス企業を生んだ。巨大なIT企業が生まれるまでは政府は自由に任せていた。しかし、巨大になると、政府が企業に干渉してくる、と言われている。中国は共産党の1党独裁政治であることには違いない。

実際、華為はもともと広東省出身の田舎の企業であったが、国内よりもグローバル市場を目指してきた。華為製の携帯電話機は中国内ではこれまではトップになったことがなかった。いつも5位~10位をうろついていたが、海外では上位に来ていた。最近になり、国内市場に目を向け始めたが、その裏に華為の幹部の意図に反して中国政府が干渉した可能性はある。だから米国政府が言うように、華為の通信機器には情報を中国政府に伝達している可能性もある。

ところが、世界のITビジネスは相互依存性が強く、ZTE製品の米国輸入を禁止し、ZTEに使う部品の輸入を中国政府が禁止すれば、ZTEも米国の半導体企業もビジネス機会を喪失する。華為の場合はもっと相互依存性が強く、米国からの半導体の輸入額はZTEの6倍にも上ると、7日の日経は伝えている。Qualcommは18億ドル、Intelは7億ドルに達するという。8日の日経によると、華為と日本企業との部品事業の取引額は5000億円に達しているとしている。

中国の習近平国家主席が『米QualcommがオランダNXP Semiconductorの買収計画を再提出すれば、承認することに抵抗はない』と述べた、と3日の日経は伝えた。7月に破談となった大型買収を、今更蒸し返せるほどIT、半導体の世界はゆっくりしてない。Qualcommはすでに違約金20億ドルをNXPに支払い、NXPもすでに財務処理を終えている。習主席は、三顧の礼でも要求しようとしたのかもしれない。

折しもソフトバンクの通信が数時間にわたって不通になった事件は、データ通信が個人の生活やビジネスのインフラの一つになったことを表している。原因は、通信基地局からコアネットワーク設備に導入されたソフトウエアのバージョンの食い違いだったようだ。通信機器は制御用のハードウエアは共通ながら、データネットワーク部分をソフトウエアで定義しようとしており、ソフトウエアの比重は時代と共に高まってきている。ソフトウエアを担当するスウェーデンのEricssonによれば、問題のソフトを廃棄処分しているという。

また日本の国会では、サイバーセキュリティ大臣がパソコンを触ったことがないという恥を世界にさらけ出したが、問題はUSBやパソコンを知っているかどうかではない。セキュリティをどのような切り方で構築していくのかが問われており、「うちの工場はインターネットから切り離しているから大丈夫」と漫然としている経営者こそ、ネットから切り離してもウイルスに感染するルートはあることを知らなくてはならない。人が出入りしている以上、持ち運びできるUSBやSDカード、など小さなデジタルメモリが工場内に落とされないようにする対策を考えなければならない。セキュリティでは、テクノロジーは言うまでもないが、それだけではなく、人々の意識向上も必要とされるのである。

(2018/12/10)

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