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iPhone 6Sをテクノロジーの視点で見る

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Apple社が新しいスマートフォン、iPhone 6Sおよび6S Plusをうわさ通り、発表した。期待の声が上がる一歩で、大きな変化が感じられず失望の声もある。6Sでは主に性能面が向上したようだ。これまで明らかになっているテクノロジーを整理する。また、半導体企業の買収話は台湾でも活発になっているようだ。

iPhone 6Sでは、CPUが70%、GPUは90%高速化した、とAppleは述べている。ただし、本日(9月14日)時点ではまだ発売されていないため、分解情報はない。このためAppleの発表資料をベースに見ていく。今回使われたアプリケーションプロセッサA9には64ビットのCPUコア、GPUコアなどが集積されている。Appleは第3世代の64ビットシステムと述べており、おそらく16/14nm FinFETプロセスを用いたものに違いない。これまで6SではFinFETプロセスによって性能が大きく上がるだろうと言われてきた。Samsung+GlobalFoundriesとTSMCが製造を担当したと考えると、第3四半期(7〜9月)の財務決算報告の発表があれば、はっきりしてくるだろう。

ユーザーエクスペリエンスを重視するAppleは、多数のセンサ処理用のコプロセッサ回路Mチップとして今回、M9を開発した。これまではA9とM9は別チップだったが、今回は一つのパッケージになっている。ただし、2チップかモノリシック(1チップ)かはまだ明らかになっていない。

このM9チップは、加速度センサとコンパス(磁気センサ)、ジャイロスコープ(回転角を測定)、気圧計(圧力センサ)からのデータを処理する。従来の歩数、移動距離、高度に加えて、今回はランニングやウォーキングのペースも測定できるとしている。今回は、3D Touchと呼ぶ触覚センサを導入した。これは容量性の圧力センサを使い、ディスプレイ画面を押す力を認識し、操作を読み取るという機能に使うようだ。

また、通信速度も上げた。LTEよりも高速のLTE-Advancedに対応、最大300Mbpsというデータレートを実現する。しかも最大23のLTE周波数に対応するため、ほぼ世界中どこに行っても使えるようになる。従来、ローミングするとその料金が高かったため、外国で3GやLTEなどのモバイルネットワークでデータ通信を使う人が少なかった。しかし、欧州では、ローミング料金を下げる、あるいは撤廃する、といった動きが出てきたため、この6Sはその動きに対応したものといえよう。モデム技術としては、これだけの周波数に対応するということは、さまざまなモデム方式にも対応することにつながる。それを実現するカギがSDR(ソフトウエア無線:Software-defined radio)である。おそらくSDR技術を使っているものと思われる。また、音声通話に関しても、最初からVoLTE(Voice over LTE:ボルテと発音)を導入し、通話だけのチップを不要にした。

半導体の企業買収の動きは、台湾でも活発になっている。IntelのAltera買収、NXPのFreescale買収、AvagoのBroadcom買収など米国を中心に半導体の業界再編が始まっていたが、台湾でも動きがあった。9月12日の日本経済新聞が報じたように、台湾での最大ファブレスのMediaTekは、M-Starの買収に続き、電源やLEDドライバなどパワー半導体メーカーのRichtekを買収することで両社が合意した。また、後工程でもトップメーカーのASE Groupが第2位のSPIL(Siliconware Precision Industries Co. Ltd.)を買収すると発表した。これは突然の発表で、敵対的買収としてSPILは、鴻海精密工業とも話し合いに入っている。

日本でも、12日の日経によると、村田製作所が自動エネルギー管理ソフトウエア会社の米国テキサス州のVedero Softwareを買収した。このBEMS(Building Energy Management System)ソフトウエアの会社を買ったことで、村田のスマートグリッドへの参入は加速される。ムラタは以前、RF回路向けのSOS/SOI半導体の米Perigrine Semiconductorや、MEMSのフィンランドVTIを買収しており、グローバル化のトップランナーともいえる。

(2015/09/14)

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