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東芝が第三者委員会の調査報告書要約版を公開

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東芝の不適切会計問題に関して、第三者委員会がまとめた調査報告書を受理し、要約版を公表した(参考資料1)、と7月21日の日本経済新聞が報じた。中国では、清華大学系のファブレス半導体メーカー紫光集団がMicronを230億ドルで買収するという提案を行った。

東芝の不適切会計問題は、2015年2月、証券取引等監視委員会から金融商品取引法第26粂に基づき報告命令を受けたことが発端となった。東芝内部での調査、4月に特別調査委員会の設置、調査などを経て、さらに日本弁護士連合会の定めるガイドラインに準拠した第三者委員会を5月に設置、調査を委嘱していた。今回は、第三者委員会の報告を受けて、その要約版を公表したもの。

第三者委員会者が調査したのは、4項目、すなわち工事進行基準案件に係わる会計処理と、映像事業における経費計上に係わる会計処理、ディスクリート、システムLSIを主とする半導体事業における在庫の評価に係わる会計処理、パソコン事業における部品取引等に係わる会計処理、である。

2008年度から2014年度の第3四半期までの6年弱の間に1518億円の税引き前損益の修正額があった。さらに自主チェックでの追加額44億円を加算し、合計1562億円になった。報告書は、1518億円の内訳として、工事進行、映像事業、半導体、パソコンがそれぞれ477億円、88億円、360億円、592億円の修正額があることを明らかにしている。

また、不正会計が行われた原因についても報告書では言及しており、直接的な原因を、経営トップらの関与を含めた組織的な関与、としている。これを整理して、経営トップらにおける見かけ上の当期利益の嵩上げを目的とし、目標到達へのプレッシャー、上司の意向に逆らえないという企業風土、経営者の適切な会計処理に対する意識や知識の欠如などを挙げている。

不正会計が行われた事実は取り消しようがないが、重要なことは二度と同じ問題を起こさないという仕組み作りである。そのために、不適切会計に関与した経営陣の責任の自覚、関与者の責任の明確化、経営トップの意識改革、さらには企業の実力に即した予算作りと「チャレンジ」の廃止、企業風土の改革、会計処理基準全般の見直しと厳格な運用、を報告書は挙げているが、具体的な施策については触れていない。これはむしろ東芝の「自己改革」力が問われる問題であり、どこまで企業風土を変え、透明な組織作りを行うか、は東芝にかかっている。他社でよく見られたように、業績悪化に対してトップを辞任し、会長や相談役に収まる、あるいは他企業のトップに収まる、といった甘い責任だと何も変わらない。東芝の本気度に期待する。

もう一つの話題、紫光集団がMicronを買収するというトピックスは、半導体業界を駆け巡った。この問題の発端は、2014年10月に中国の経済産業省に相当するMIIT(Ministry of Industry and Information Technology)が国家集積回路産業投資ファンドを設立したことにある。このファンドは、中国が自国の半導体産業を育成するために設立された。Micron買収の前は、Cypress Semiconductorがメモリー会社ISSIを買収提案したとたんに、中国のSummitView CapitalがISSIに提案している。

紫光集団は、中国内のアプリケーションプロセッサメーカーSpreadtrum社やRDA Microelectronics社などのファブレスを買収しており、自社ファブは持っていない。Micronを買うとなると、ファブを持つことになり、その運営費や設備費もかかることになる。しかし、これまでの中国では2000年ころにも自国の半導体産業を起こそうという動きがあったが、結局、育っていない。かつてオランダのPhilipsが資本を一部出した台湾と中国の半導体企業に対して、TSMCは大成功したが、上海のASMC社はパッとしない。紫光集団はかつての中国内企業育成から外国半導体企業の買収という方法に変えた。しかし、もし買えたとしても日々の運営をうまくできるかどうかは、人(タレント)にかかっている。

今回のMicronに対しては、5ヵ月前に1株当たり32ドルだった価値が今回21ドルなので安すぎるという声もある。紫光集団の現在の市場資本は76億ドルなので、230億ドルのMicronを買うためには国家の補助金などの支援が必要になる。また、中国が米国企業を買うというケースは、ハイテク製品の輸出規制(かつてのココム規制)に照らして、米国の外国投資委員会CFIUS(Committee on Foreign Investment in the United States)がこの買収に関して検討することになろう。


参考資料
1. 第三者委員会調査報告書受領及び判明した過年度決算の修正における今後の当社の対応についてのお知らせ (2015/07/20)

(2015/07/21)

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