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東芝の不適切会計問題報道の真相は?

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日本経済新聞が連日、東芝の不適切会計問題を報じている。東芝側もプレスリリースを発行して「当社が発表したものではありません」と応酬している。これまでの経験から、新聞報道は100%は信用できない、ことを踏まえた上で、先週の報道を振り返ってみる。また、半導体製造装置業界は好調であることも報じられている。

7月11日の日経は、「証券取引等監視委員会は、東芝の不適切会計を調べている第三者委員会が報告書を出すのを待って本格的な調査に入る」と報じた。利益の減額修正幅などから投資家への影響の大きさを見極め、課徴金などの行政処分が必要かどうかを検討するという。監視委は投資家保護の観点から不適切会計の中身を調べ、課徴金などの処分が必要な場合は金融庁へその旨を勧告、最終的な処分内容は金融庁が決める、とする。

この記事の中で、東芝は再発防止に向けて、公認会計士や弁護士などを中心とする専門委員会を7月中にも設置すると報じている。この委員会は社外の専門家が中心となり、社内を入れない方向だという。ただし、人事にも口を出し、取締役候補を選任する指名委員会に専門委の助言を採り入れるとしている。

東芝が発表したのは、「9日の日経朝刊において、当社が『インフラ関連案件で生じた損失の計上を意図的に先送りしていた』という旨の報道がありましたが、当社から発表したものではなく、・・・・(省略)・・当社としてその内容を把握しておりません」という趣旨である。また佐々木則夫会長の退任についても決まっていないと東芝は発表した。

意図的に先送りしていたかどうかは、まだ知る由もない。にもかかわらず、日経が報じたということは、誰かが日経の記者にリークあるいは意図的な情報(正しいか否かは不明)を流したと考えるのが自然であろう。実は、メディアの世界では「新聞人事」という言葉がある。これは、例えば社内で人事抗争がある場合、相手を蹴落とすために意図的に次期社長は自分だ、ということを本人以外の人間を使ってリークさせるのである。新聞で次期社長にはこの人が有力にと報じられれば、相手の社内での立場は弱まる。新聞報道にはこういった負の側面がある。

また、日経が「東芝は過去に遡って実施する利益の減額修正幅が1700〜2000億円に達すると金融庁や銀行に説明した」という記事に対しても、東芝は金融庁や銀行にそのような説明をした事実はありません、と発表している。

ただ、東芝は不適切会計そのものを否定している訳ではない。調査中ではあるが、リーマンショック後の業績悪化と東日本大震災後の原発事業の伸び悩みで、無理な会計処理を重ねたらしい。不適切会計は、本来、損失計上しなければならない会計年度で計上しなかったために利益を増やすことにつながり、正しい会計数字ではなくなることが問題である。利益が多かったように見せかけることは、株主(投資家)に対する裏切り行為であり、言葉を変えれば粉飾決算になる恐れさえある。投資家に対して正しい数字を公表することは上場企業の責務である。上場企業は投資家に対して、常に平等で公平であることが求められる。正しい数字があって初めて、投資家は株を買うかどうかの判断できる。だからこそ、不公平なインサイダーが罰せられるのである。東芝の改革により、公正、公平、透明、平等を担保できる仕組みが作られることを期待する。

半導体製造装置業界は好調で、アドバンテストは4〜6月期の営業利益が2割増えたようだ、と9日の日経は伝えた。サムコは京都市の本社の近くに半導体製造装置の拠点を新設する。東京エレクトロンは、中期計画を発表、微細化が必要ないIoT端末事業に向け、保守サービスや消耗品事業に力を注ぎ、2020年3月期までに売上額7200〜9000億円、営業利益率20〜25%、自己資本利益率ROE15〜20%を目指す。日本半導体製造装置協会(SEAJ)は、2015年度の日本製半導体およびFPD製造装置の販売額は前年度比15.8%増の1兆8105億円になるという見通しを発表した。

(2015/07/13)

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