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黒字決算相次ぎ、攻めに転じる半導体メーカー

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半導体メーカーが攻めに転じたニュースが続出した。東芝はSK Hynixと共同でナノインプリント技術を開発、ロームは、2001年3月期に記録した売上4000億円に近付いてきた。ルネサスは第3四半期の決算発表を行い、営業利益は8四半期連続黒字、経常利益も332億円の黒字になった。ソニーはCMOSイメージセンサ、三菱は暗号技術などで攻める。

東芝は、横浜事業所でSK Hynixの技術者と共同でナノインプリントリソグラフィ技術の開発を行う。費用を折半し、2017年の実用化を目指すという。これまではキヤノンと一緒にこの技術を開発してきたが、さらに実用化のための開発をSK Hynixと一緒に行う。ナノインプリントは、「ハンコ」の手法でパターンを描くため、ほんのわずかなコンタミでさえ、不良品となってしまう難しい技術。

日刊工業新聞は2月5日、ロームの澤村諭社長とのインタビュー記事を載せた。これによると、構造改革に加え、顧客をこれまでの日系の民生機器メーカーから自動車や産業機器、海外の民生機器などのメーカーへとシフトしてきた。クルマと産業機器の比率は、10年前の14%から現在は34%へと増えた。さらに3年程度で40%に増やしたいと述べている。クルマ事業ではこれまで、抵抗から個別トランジスタ、集積回路へと広げてきた。今後、クルマと産業機器に向けSiCモジュールの利用も期待する。海外OEM獲得に向け、IntelやFreescaleの開発ボードにロームの電源用ICや個別部品を搭載、協業も進めている。

ルネサスエレクトロニクスは、第3四半期の決算を5日発表した。これによれば売上額は1919億円、RSP(ルネサスSPドライバ)の分を除くと1852億円となった。売上総利益率は40.9%だが、RSPの分を除くと42.4%になる。営業利益は295億円、経常利益は332億円、純利益は382億円となった。RSPの事業譲渡益として197億5400万円を計上し、リストラ費用としての特別損失72億円と相殺し、黒字を確保した。また、経営安定具合を示す自己資本比率も第2四半期での27.9%から33.2%へと上げた。フリーキャッシュフローも第1四半期の-89億円から第2四半期347億円、今回の第3四半期482億円と確保できるようになった。また通期見通しでは、RSPの分を除き、売り上げは7408億円、営業利益980億円、純利益740億円と見込んでいる。

6日の日経産業新聞は、ルネサスの自動車部門の責任者である大村隆司執行役員常務とのインタビュー記事を載せた。それによると、マイコンのプログラムを書き換えるのに無線でアップグレードするオーバー・ジ・エアという新しいソリューションの必要性を訴求している。この技術は欧州では実用化されているが、日本では法規制があり、遅れている。エンジン制御の効率を上げ、燃費改善や排ガス規制に対応するためマイコンの性能をさらに上げていく。そのために最新の40nmから28nmへの微細化も必要だとしている。

ソニーのCMOSイメージセンサをはじめとする電子部品部門の営業利益は2014年度(2015年3月期)見込みでは1000億円になりそうだ、と5日の日経が報じた。ただし、他部門はこれからで、構造改革を進めている。ソニー全体として2015年3月期の連結営業損益が従来400億円の赤字から200億円の黒字になると見ている。テレビ事業が黒字になりそうだが、スマートフォン事業では1000人の追加削減が続く。営業損益は黒字でも純利益はまだ赤字が続くはず。リストラ費用を特別損失として計上しなければならないからだ。

ソニーは1050億円を投じてCMOSイメージセンサを増産すると3日の日経が報じた。長崎県と熊本県、山形県にある3工場に新たに設備を導入、2016年6月末までに生産能力を現在よりも3割多い8万枚/月(300mmウェーハ換算)に増やす。

三菱電機は、立命館大学と共同で、新しい暗号化技術を開発したと6日の日経産業が報じた。これは、LSIの製造バラつきという個体差を暗号化の鍵とする技術だという。チップごとに暗号化の鍵が異なるため、解析に労力がかかるだけではなく、LSIが動作している時しか、その固体差を検出できないため、解析されにくい。IoTでは、センサで取得したデータをインターネットに載せる前に抜き取られて悪用される恐れがある。これを防ぐための暗号化技術である。2015年度以降に自社製品に技術を組み込むとしている。

台湾のTSMCは台湾中部に1兆8500億円を新たに投資する、と7日の日経が伝えた。台湾当局の認可が下りたもの。詳細は不明。

最後のニュースとして、大陽日酸が米国でのヘリウム生産を再開すると、6日の日刊工業が報じた。ヘリウムは天然ガスの副産物として産出されるガスで、液体に圧縮すると4Kになるため、極低温の実験には欠かせない。米国ではここ2〜3年シェールガスブームだったため、ヘリウムを産出していなかった。しかし、原油価格の下落により、シェールガスのメリットが失われた。シェールガス関係で倒産したところもある。再び天然ガスを産出することになった。ヘリウム工場は大陽日酸の米国子会社と米ガスメーカーとの合弁会社が運営している。

(2015/02/09)

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