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設備投資額から見る20年回復の妥当性

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半導体市場はいつどの程度、回復するのだろうか。2016年後半から18年の第3四半期までの2年間はメモリの価格高騰に浮かれ、設備投資もバブルの様相を示していた。今回の回復もやはりカギはメモリ、特にDRAMだ。米調査会社のIC Insightsがビット需要と設備投資額から20年回復の妥当性を見積もっている。

Capex Required to Achieve 20% DRAM Bit Volume Growth versus Actual DRAM Capex ($B)

図1 DRAMの設備投資とビット需要からの推測 出典:IC Insights


DRAM大手3社Samsung、SK Hynix、Micron Technologyは、今後数年間はDRAMビット需要が年率ほぼ20%で成長すると見ている。Micronは設備投資のガイドラインとして毎年ビット需要が20%で伸びていくと、2018年の投資家向けのイベントで発表している。

図1の青いグラフはMicronが見積もった設備投資額であり、赤い斜線のグラフが実際のDRAM設備投資額である。2015年後半から2016年前半まで続いた景気後退期からの急速な回復で設備投資が間に合わず、2017年に投資したものの生産増強のタイミングにも間に合わず、DRAM単価の値上がりは続いた。2018年にはさらに増強したが、値上がりは第2四半期まで続いた。DRAM不足で、ユーザーは二重、三重に発注していたからだ。値上がりが止まりつつあった2018年第3四半期でさえ単価は崩れなかったが、第4四半期に入り急速に値下がりが始まった。在庫があふれてしまったからだ。

2018年の設備投資がDRAM設備投資需要よりも多すぎたため、2019年は需要よりも少なめになっている。実際の投資額で見ると19年は18年よりも28%も少なくなる見通しである。17年、18年は値上げが続いたためにビット需要も小さくなり、17年が20%成長だったが、18年は13%に縮まった。19年は投資を控えることでビット需要は17%成長に上向くと見ている。

2015年に設備投資額80億ドルの見積もりで20%のビット需要に対応して設備投資額も20%で伸びるとすると、2016年は96億ドル、17年115億ドル、18年138億ドル、19年には166億ドルになる。実際には18年が237億ドルと多く、作りすぎにつながるため、稼働を遅らせても19年の投資額は妥当な金額よりもやや多すぎる額になる。

ただ需要は変動するため、図1の青で示すグラフが妥当な投資額に見えるが、それでも18年には多すぎる投資を行ったといってよいだろう。19年は170億ドルにおさえておけば20年には再び投資が上向くと考えても無理がない。20年には需要と供給のバランスが取れるだろうとIC Insightsは見ている。

毎年20%というビット需要の成長率は、今後ニューラルネットワークのモデルを使う機械学習やディープラーニングなどの需要も高まることから、妥当であると言えそうだ。

(2019/07/12)

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