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2016年世界半導体市場は2.4%減とWSTSが予測

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WSTS(世界半導体市場統計)が2016年の世界半導体市場の見通しを2.4%減とする、と発表した。これは、5月24〜26日の間、オーストリアのウィーンで開催された予測会議に世界の半導体メーカー14社から20名が参加し、その場で決めたもの。WSTSには現在48社の半導体メーカーが加盟している。

図1 2016年〜2018年の世界半導体市場予測 出典:WSTS

図1 2016年〜2018年の世界半導体市場予測 出典:WSTS


この会議では、2016年1〜3月までの実績データと今後の成り行きを元に予想した。ここ最近はスマートフォンの成長鈍化とパソコンの減少傾向が現れてきている。半導体市場全体の約6割を占めてきたスマホとパソコンの伸び、すなわち個人消費が弱いことで今年の見通しをマイナスと見ている。1〜3月の第1四半期は、IDCによれば(参考資料1)、スマホの台数はわずか0.2%しか増えなかった。

2016年全体の予想として、円高傾向がありドルベースでは1.7%減だが、円ベースでは6.3%減と日本における消費の弱さが浮き出ている。2015年は1ドル=121.1円として計算していたが、2016年は115.4円としている。ただし、最近はさらに円高が進んでいることからドルベースでは日本市場はマイナスにならない可能性もある。日本の消費の見通しとして、5月の会議時点では消費増税のはずだったが、それが延期されたことの影響は含んでいないという。

日本は、スマホが普及しておらず、しかも高齢者の比率が高いため、スマホの普及率が上がる方向ではないとしている。しかも日本におけるスマホの台数は少ないため、その影響は限られているとWSTSは見ている。

熊本地震の影響はほとんどないとしているが、昨日発表されたルネサスエレクトロニクスによると、熊本の川尻工場が生産停止に追い込まれた機会損失により、2016年4〜6月期におけるルネサスの売り上げは140億円の減収、営業利益80億円の減益を見込んでいる。さらに建物・設備などの固定資産修繕費用や棚卸資産の廃棄損なども含み、80億円の特別損失を計上する。

WSTSが今年の見通しをマイナス成長と見る要因は他にもある。自動車市場は台数が低成長に入り、中国での減税措置が終了する、米国市場が飽和気味、などの要因があるという。ADASは新しい安全技術として注目されてはいるが、市場をけん引するものではない。しかし、成長率で見る限り、2017年、18年は回復するだろうとしている。

製品別では(図2)、2016年メモリは10.2%減とその下落率が最も大きい。ただし、メモリはDRAMとNANDフラッシュが大きな売り上げを占めるが、DRAMは半分がコンピュータ用途で、NANDフラッシュはコンピュータ用が3割程度なので、NANDフラッシュはコンピュータの落ち込みの影響が少ない。WSTSによると、マイナス成長はDRAMが大きく、フラッシュはわずかにプラスとなるという。ただし、2016年は全体的に弱含みと見ている。


図2 製品別のIC市場予測 出典:WSTS

図2 製品別のIC市場予測 出典:WSTS


また、ロジックも2.5%減となっているが、ロジックにはアプリケーションプロセッサ(APU)を含めているため、スマホの飽和感と連動していると見てよい。APUは低価格の中国HiSiliconやSpreadtrumなどの製品がQualcomm製品を中国市場で追い出しているため、Qualcommの売り上げが2016年第1四半期に25%も落ちているが(参考資料2)、APU市場が大きく落ちている訳ではない。

参考資料
1. Worldwide Smartphone Growth Goes Flat in the First Quarter as Chinese vendors Churn the Top Vendor’s List, According to IDC (2016/04/27)
2. 2016年第1四半期の世界半導体トップ20社ランキング (2016/05/13)

(2016/06/08)

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