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半導体のLinuxになるか、フリーのCPUコアRISC-V

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オープンソース手法でLinuxが普及したように、半導体業界でもオープンでフリーなマイクロプロセッサコアRISC-V(リスクファイブと発音)アーキテクチャに期待が集まっている。そのコンソーシアムRISC-V Foundationには、GoogleやOracle、IBM、Hewlett Packard Enterprise、Microsemi、Qualcommなど十数社がすでにプラチナメンバーとして(図1)、さらにゴールドメンバーも含めると40社以上が参加している。

図1 2016年7月16日時点でのプラチナメンバー 出典:RISC-V Foundation

図1 2016年7月16日時点でのプラチナメンバー 出典:RISC-V Foundation


「ARMのライセンス料、ロイヤルティ料は高いから簡単な制御ならステートマシンを利用する」。取材しているとこんな声をよく聞く。もちろん、ARMコアはソフトウエア開発やデバッグなどの開発環境やエコシステムが充実しており、短期間にシステムを開発したい企業には適している。しかし予算の少ない大学や中小企業、ベンチャー企業では高いARMを使いたくない、という声も聞く。こういった声に応えられるのがロイヤルティフリー、ライセンスフリーのRISC-Vプロセッサだ。残念ながら、この非営利団体のFoundationには日本のメーカーはまだ参加していないようだ。

RISC-Vは、University of California, Berkeleyが開発したオープンソースの新しいISA(instruction set architectures:命令セットアーキテクチャ)に基づいており、このコンソーシアムはUCBが中心となってスポンサとなるメンバー企業を募っている(参考資料1)。このCPUコアは、低消費電力で効率の高いプロセッサ設計であり、メモリを最大128ビットまでアドレッシングできる。低消費電力だからこそ、モバイル機器から組み込みシステムや高性能サーバーに渡り、拡張可能になっている。BSD(Berkeley Software Distribution)ライセンスを元にフリーで入手可能である。どのような使用法でも誰でもRISC-Vチップとソフトウエアを設計でき、製造・販売することができる。まさに、Linuxの半導体版といえそうだ。

ソフトウエアスタックのオープンでフリーのバージョンと同様、フリーでオープンな実行可能なISAを使っていくことで、オープンイノベーションを加速していくという。オープンなISAがさまざまな開発コミュニティから集まった設計エラーやセキュリティの問題を公開していくという。IoTのマイコンに使えば1ドルIoTデバイスができると期待している。

RISC-Vの活動はすでに始まっている。インド政府の研究開発機関が4500万ドルをつかい、RISC-Vの命令セットを使った64ビットマイクロプロセッサを開発中である(参考資料2)。またインドの別のグループであるIndia Institute of TechnologyのMadras校は、RISC-Vベースの32ビット/64ビットのオープンソースプロセッサShaktiを2年半に渡って開発してきた。RISC-V Foundationは、この8月に取締役会(Board of Directors)のメンバーを決め、毎月のようにワークショップを開催、啓蒙活動を展開している。

半導体産業は微細化の進展と共にコストの上昇をここ数年見てきた。Mooreの法則の終焉論も語られるようになっている。LinuxがAndroidやUbuntuの核(カーネル)として使われ、今日のコンピュータの繁栄を築いてきた。ウェブサーバーの95%以上がLinuxベースであり、スマートフォンの85%がLinuxベースのAndroidである。LinuxをビジネスとしたRed Hat社は年間20億ドル企業にまで成長した。RISC-V Foundationは、半導体産業でもフリーのマイクロプロセッサコアがLinuxの役割を果たすことを期待している。

参考資料
1. RISC-V Foundationホームページ
2. India Preps RISC-V Processors, EE Times, 2016年1月27日

(2016/09/06)

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