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CypressとSpansionが合併、どうなる旧富士通セミコン?

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米国のCypress Semiconductor とSpansionが合併する。共に中堅クラスの半導体メーカーで、どちらもファブライトの企業だ。Cypressはアナログ回路をプログラムできるpSoCでタッチコントローラを得意とし、SpansionはNORフラッシュや組み込みフラッシュとマイコンに強いメーカーで、旧富士通セミコンダクターのマイコンとアナログ部門がいる。

米国時間12月1日、両社が合併することを発表した。両社が合併することで、20億ドルを超える企業になる。株式交換方式で新会社は株式をそれぞれ50%ずつ持つことになる。Spansionの1株がCypressの2.457株に相当することで合意した。取締役はそれぞれから4名ずつ構成され、会長には現Spansion会長のRay Bingham氏、CEOにはCypressの社長兼CEOのT.J. Rogers氏が就任する予定。Spansionの現CEOであるJohn Kispert氏も取締役会のメンバーになる。本社はサンノゼに設け、新会社の名前は、Cypress Semiconductorとなる。いわば存続会社がCypressになる格好だ。

両者は極めて対照的な企業であるから、シナジー効果は生まれる可能性は高い(図1)。製品ではCypressがpSoC(Programmable System on Chip)と呼ぶアナログ回路搭載のプログラマブルなマイコンや高速SRAM、USBコントローラなどに強い。SpansionはNORフラッシュや、シリアルNOR、組み込み向けNANDフラッシュに加え、旧富士通セミコンダクターを買収して得たマイコンとアナログ製品を持つ。


図1 両社の製品群はお互いに補完し合う 出典:Spansion、Cypress Semiconductor

図1 両社の製品群はお互いに補完し合う 出典:Spansion、Cypress Semiconductor


両社とも日本に現地法人を持つが、日本市場の売り上げが大きいのはSpansion。Cypressも日本法人を持つが、日本におけるプレゼンスはまだ小さい。今後の成長市場として期待されるカーエレクトロニクスや組み込み市場で強いSpansionと一緒になることで、Cypressは強い民生での製品と共にポートフォリオを広げることになる。特に、CypressはAppleの最初のiPhoneのタッチパネルコントローラでタッチスクリーン市場をリードした。

元々、SpansionはAMDと富士通の半導体部門が合弁により、NORフラッシュメモリのメーカーとして設立された。大容量化において、NANDフラッシュと競争して敗北し、いったんは経営破たんした。その後John Kispert氏がCEOとなって再建を果たし、組み込みフラッシュをコアとしてNANDフラッシュがカバーできない高速分野をカバーしており、日本市場の売り上げが外資系半導体として30%を超え、非常に強い。Kispert氏にインタビューすると、決まって「日本のエンジニアの質がものすごく高い(tremendously high)」という言葉を頻繁に使う。エンジニアのモチベーションを常に考える経営者といえる。

3年後の目標は、現状の20億ドルを超えるように両社の成長プランを立てること、粗利益率50%、運用コスト30%、経常利益20%を掲げている。CypressのT.J.も、半導体エンジニアの地位向上や産業界の声を政府に届ける役割を担っており、米国半導体業界の代弁者として見られている。

両社の合併条件が公平に行われているか、Johnson & Weaver法律事務所が調査に入り、価格や合弁プロセスについて調べている。両社は2015年前半にはトランザクションを終了したい期待している。

(2014/12/03)

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