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Samsung、史上最大のメモリ工場を韓国内に建設

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Samsung Electronicsが156兆ウォン(147億ドル:)という巨額の投資をモバイル用デバイス向けのチップ製造のためにソウルの南75kmの平沢(ピョンテク)という場所に新たな半導体工場を作る計画を発表した。この工場はSamsungのどの工場よりも大きなものになるという。

半導体チップ製造工場の建設は2015年の前半にスタートし、2017年の後半に完成する計画である。Samsungのいうモバイルデバイス向けのチップとは何か、憶測が飛んでいる。メモリの市場価格を定点観測している調査会社DRAMeXchangeの副社長補佐のAvril Wu氏によると、「DRAMとNANDフラッシュに集中するのなら意味がある。内製のアプリケーションプロセッサならSamsungのスマートフォンに使われる数がしれているからだ」と語る。

Samsungの業績はこのところ下降気味。スマホビジネスが、華為技術やZTE、小米科技(シャウミー)など中国メーカーに食われつつあり、下降しているからだ。このため、スマホからメモリへの揺り戻し時期に来ていると見える。半導体とはいえ、Samsungのアプリケーションプロセッサに大きな差別化要素は少なく、Appleのファウンドリ注文がやってくるとは考えにくい。

しかし一方で、iPhoneの次のアプリケーションプロセッサA9のファウンドリ注文をSamsungが取ったといううわさがあり、これが本当だとすると新設する半導体工場はアプリケーションプロセッサ用も含まれるといえる。A9は14nmFinFETプロセスで作ることが確定しており、Samsungが確立したといううわさがその理由の根底にある。実際、Intelの14nmFinFETプロセスはまだ安定していないという声も聞くが、もう完成したといううわさもあり、どちらが真実か今の所わからない。

いずれにしても、NANDフラッシュの増産は間違いなく、今度の市場として従来のカメラやスマホからサーバーやストレージへ広がっていくことはもう間違いない。ストレージの拡大はIBMの10億ドルの投資の発表を見ても金融市場でのミリ秒を争うインターネット株式取引などからSSDへの要求は強い。ただ、DRAM(図1)は需給関係ではなく、「市場を独占する」という意味合いが強いようだ。


図1 2014年第2四半期におけるDRAMの世界マーケットシェア 出典:DRAMXchange

図1 2014年第2四半期におけるDRAMの世界マーケットシェア 出典:DRAMXchange


Samsungのライン17棟は2015年の後半に生産が立ち上がると当初見られていた。しかしこの工場の稼働は早くても2016年後半にずれ込んでいる(図2)。DRAMの全生産能力を拡大することになっていた。DRAM価格はさまざまな工場がコストを下げることで下がっていく。その内、生産能力を調整することになろう。その前の2015年は少なくともDRAMメーカーは利益を出せるだろう。


図2 Samsungの月産能力 出典:DRAMeXchange

図2 Samsungの月産能力 出典:DRAMeXchange


恐らくSamsungが新工場の建設を決めた理由は、DRAMやNANDフラッシュの増加する需要を満足させるのではなく、政府からのプレシャーによるものではないかという推測も飛んでいる。「数年前からSamsungは米国のテキサス州オースチンに巨大な投資を行ってきたことに対して、韓国政府は国内にもある程度は投資せよと言われていたからだ」とDRAMeXchangeのWu氏は見る。

DRAM産業は寡占化が進み、参入障壁が高まり、新規企業は参入しにくい。ライン17棟と18棟を両方立ち上げ、生産能力を大きく上げるというアグレッシブな戦略をSamsungがとれば、ライバル(SK HynixとMicron)はもはや追いつけなくなる。稼働が始まり、DRAMの需給関係はSamsungが保とうとするため、ライバルもSamsungに同調せざるを得なくなるだろう。

(2014/10/08)

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