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動きだした熊本の有機エレクトロニクスの開発拠点Phoenics

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半導体メーカーと関連企業が集まっている熊本県の研究開発部門である、熊本県産業技術センターが有機エレクトロニクスの拠点を構築、実用化を目指す。この拠点を「くまもと有機薄膜技術高度化支援センター(Kumamoto Institute for Photo-electro Organics: Phoenics)」と名付け、ここにクリーンルームを設け、有機薄膜製造装置を揃えている。

図1 有機エレクトロニクス開発ロードマップ

図1 有機エレクトロニクス開発ロードマップ


開発拠点ではあるが、有機トランジスタを利用するプラスチックエレクトロニクス技術の実用化を目的とする。当面の応用として、有機EL(エレクトロルミネセンス)や有機TFT、有機太陽電池などを狙って開発する。プラスチックの有機薄膜は、物理的に柔らかく、かつ大面積の応用に向く。欠点として有機ポリマー材料は、水分が入り込みやすいため、プラスチックフィルムに水分を遮断するバリヤ層を設ける必要がある。このバリヤ層の形成が最大の課題であるが、バリヤ層の材料は地元の熊本大学の協力を仰ぎ、開発を進めていく。

熊本には、NEC(現ルネサスエレクトロニクス)や三菱電機、ソニーなどの半導体工場があり、その関連の装置・材料メーカーのテラダインやHoyaも控えている。この産業インフラを利用することで、Phoenics(フェニックスと発音)を立ち上げた。

有機エレクトロニクスに関しては、山形県が2003年11月に設置し、2010年3月に打ち切り解散した「有機エレクトロニクス研究所」がかつてあった。しかし、このまま打ち切らず、2010年7月に「産官学連携有機エレクトロニクス推進センター」と名を変え、実質的に継続した(参考資料1)。山形のプロジェクトは有機ELが中心で、山形県内にある企業と共同で事業化する場合に補助金を与え、有機EL事業を始めようとするもの。新たにできた推進センターの設備をホームページで見るとクラス1000のクリーンルームに蒸着機はあるが、製造プロセス装置よりも測定機器の方が充実している。

今回、熊本県に設置したPhoenicsは、蒸着機やCVD、スパッタ、インクジェット成膜装置などの薄膜形成装置に加え、ナノインプランターやFIB、プラズマ洗浄装置も備え、加工もできるようにしている。材料開発からテストデバイス、その評価までできる体制を整えている。

熊本県は文部科学省傘下のJSTから8億3000万円の補助金を得て、装置産業が強い熊本の産業インフラを利用し、かつ10年先のテーマとして有機エレクトロニクスを選んだ。有機エレクトロニクスの能動デバイスである有機トランジスタは、シリコンデバイスよりも性能は悪いが、シリコンでは実現しにくい大面積で、フレキシブル(柔らかい)という特性を生かした応用を見据えている。

熊本県は、ビジネスを立ち上げることを最優先し、最初の成功事例を作るため積極的に企業誘致活動を行い、イー・エル・テクノを熊本県のセミコンテクノパーク工業団地に誘致することに成功した(参考資料2)。イー・エル・テクノは、三洋電機とコダックの合弁会社にいたベテランエンジニアが立ち上げたベンチャーで、セミコンテクノパークに有機ELの量産工場を設立する。Phoenicsはイー・エル・テクノをバックアップし、成功事例につなげたいと意欲的だ。

3年後までには150社の参加企業を集めたいとしている(図1)。熊本県の役割は実用化支援であり、営業・マーケティング活動の一環として、パートナー探しなども手伝うという。技術的には、九州大学にある「最先端有機光エレクトロニクス研究センター(OPERA)」と協力し、人材育成や研究における連携を進める(参考資料3)。

有機エレクトロニクス分野で最初に実用化した用途には、有機ELディスプレイや、液晶バックライトなどがある。その次に可能性のある応用は有機EL照明であり、照明デバイスとして以前よりは明るくはなったが、明るさに関してはLED照明の方がまだ歩がある。しかし、多少暗くてもかまわない用途として、クルマのインテリアが有望視されている(参考資料4)。足元を照らす用途だと光がドライバーの視界にも入らず、運転の妨げにはならない。幸い、九州ではクルマ産業も盛んだ。クルマのインテリアへの応用は九州の特性を生かすことができる。有機EL照明の先には、10年後をにらんで太陽電池への応用がある。

参考資料:
1. 「産官学連携有機エレクトロニクス推進センター」ホームページ
2. 合志市にパネル量産工場、有機EL照明用、イー・エル・テクノ
3. 九州で進む有機ELの研究開発・製造拠点化
4. 「クルマのインテリアデザインの革命児になるか、有機ELライティング」マイナビニュース

(2012/01/10)

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