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UMC、製造委託からパートナーとの共同開発重視へ

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ファウンドリビジネスが変わりつつある。「従来、IDMの生産能力を上げるためやファブレスが設計データを渡して製造を委託するビジネスであったが、LSIユーザーがファウンドリと共に設計する時代へと変ってきている」。5月下旬に東京国際フォーラムで開かれたUMC Technology Forumで、UMCジャパンの張仁治社長が語った言葉である。

図1 UMC Tech Forumで講演するP. W. Yen社長(CEO)

図1 UMC Tech Forumで講演するP. W. Yen社長(CEO)


張社長は、今はユーザーと共に新しいテクノロジーを作っていく時代だと述べ、成長が見込まれる工業用、自動車エレクトロニクス、IoT(Internet of Things)など日本が強い時代に入るかもしれない、と日本のパートナーを期待した。

この認識は、台湾UMCの方針でもあり、本社UMCのP.W. Yen社長(図1)は、パートナーを含めたサプライチェーンともっと密にフレンドリーな関係を構築していくことを強調した。これは、半導体の用途がさまざまな分野にまで広がると同時に、さまざまな技術を揃え微細化にも対応し、しかも素早く設計・製造しなければならない時代になってきたことを表している。もはやMore MooreもMore than Mooreも同じレベルで進んでいるのである。

そこで、ロジックの単なる微細化やアナログ、パワー、メモリなどだけではなく、超低消費電力のRFやミリ波、RF-SOI、MEMS、CMOSイメジャーなど様々なテクノロジーを用意しつつある(図2)。例えばIoTには欠かせない超低消費電力RF技術は65nm/55nmプロセスでは生産中であり、更なる微細化プロセスも開発中だ。また、第5世代のモバイル通信、すなわち5G技術の一つであるミリ波技術は40nm以降から開発している。


図2 UMCの製造委託可能なプロセスの種類は多い 出典:UMC

図2 UMCの製造委託可能なプロセスの種類は多い 出典:UMC


IoTやモバイル、クルマにはクラウドとデータ解析技術は欠かせなくない。このため微細な技術も用意しており、例えば、14nmFinFETプロセスは台湾の300mm工場Fab12Aで手掛けており、これをベースに各地へ広げていく。UMCは台湾以外の工場として、シンガポールのFab12i工場や中国のFab12X工場、日本の三重富士通セミコンダクター(MiFS)なども供給基地として確保している。工場は8インチ(Fab8)と12インチ(Fab12)をベースに0.6µm以上から14nmまで揃えている。三重富士通セミコンダクターは日本のパートナー工場として、IoTやウェアラブル、クルマ、ロボットなどに向けた製品を期待している。

UMCが強い分野は、ディスプレイドライバなどの組み込み高耐圧プロセスで、50%の市場シェアを持つという。MEMSマイクロフォンも生産量が多く、30種類以上の製品と3万枚の出荷ウェーハ数量を誇り、シェアはトップだとしている。さらにもう一つの売りは、BCP(事業継続計画)を実行できる標準規格ISO22301を取得した最初で唯一のファウンドリだという。この規格は、地震や火災、ITシステム障害や金融危機、取引先の倒産、あるいは新型インフルエンザのパンデミックなど、災害や事故、事件などが現実となった場合に備えて、対策を立案し効率的かつ効果的に対応するための事業継続マネジメントシステム(BCMS)の国際規格である。日本と同様、地震の多い台湾ならでは事業継続に向けて方策を準備し、台湾とシンガポールの12インチ工場でこの規格を取得している。ユーザーの事業継続にいち早く対応できる体制を取っている。

UMCがパートナーとして成功した例を新日本無線(NJR)に見ることができる。NJRの小倉良代表取締役社長(図3)がこのシンポジウムの招待講演として、UMCとのパートナーとして成功してきた例を述べた。アナログ半導体に強いNJRは2009年の秋にUMCとのパートナーシップを締結し、それから共同開発してきたのだが、目覚ましい成果が現れ発表し始めたのは2014年ごろからだ。


図3 新日本無線の小倉良 代表取締役社長

図3 新日本無線の小倉良 代表取締役社長


NJR自身は、これまでAV(オーディオ・ビジュアル)機器向けの製品が多かったが、国内のAV機器を製造している電機メーカーが2009年のリーマンショック以降、一時的に回復したものの、ずっと総崩れ状態になっていた。NJRもAV機器用半導体の売り上げが下がってきて2012年に大赤字を出し、事業の再構築を行った。AV用を減らし、車載とスマートフォン用を伸ばした。特に、スマホ用のGaAsスイッチとSAW(表面弾性波)デバイス、MEMSマイクが伸びた。

クルマ用では、カーナビや電装仕様、RF用のSAWで伸ばしていった。これらには電源用のPMIC(パワーマネジメントIC)やLEDドライバ、バッテリ制御などパワー関係のデバイスが多い。スマートフォン用では、RF部分のSAWフィルタやMEMSマイク、オーディオ処理回路、水晶発振用ICなどで伸ばした。

NJRは4/5/6インチのファブを持っているが、8インチファブは持っていない。数量が多く見込めるデバイスには8インチファブのあるUMCに依頼する。クルマ向け製品にプロセスポーティングを行い、UMCジャパンを通してUMCで製造できるようになった。MEMSマイク製品ではNJRは今やファブレスであり、製造をほとんどUMCに任せているという。NJRは製造プロセスに投資する力がないため、0.5〜0.6µm以上のパワーやアナログ製品は自社のラインで、それ以下の微細なプロセスはUMCを活用する。

NJRの小倉社長は「UMCは話の出来る相手です」と語り、不測の事態に強調できる相手だとも述べている。特にクルマビジネスは長く続き時間のかかるビジネスだけに、クルマでの共同開発にはぴったりの相手だといえる。同氏は日本のUMCには非常に感謝していると述べて講演を締めくくった。
 
この招待講演を受けて基調講演を始めたUMCのYen社長は「小倉さん、素晴らしい講演ありがとう」と述べ、最初に述べたような話を始めた。

(2016/06/03)

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