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米国発2点:米中「第1段階合意」署名、2019年半導体ランキング

半導体業界を見る目に米国発の大きな注目2点である。まずは、2018年7月に勃発の関税合戦で初めての文書とりまとめとなる米中貿易交渉「第1段階合意」への署名である。まだまだ第2段階への協議など世界を揺るがす分断への歯止めを要しながら当面は休戦ということで、米株式市場も期待の最高続伸である。一方、中国の2019年の国内総生産(GDP)は6.1%成長と29年ぶり低水準となり、生産年齢人口の減少はじめ忍び寄る影が挙げられている。もう1つ、Gartner社による速報データ、2019年の世界半導体売上げランキング・トップ10である。メモリ価格の急落からサムスン電子がインテルに首位を明け渡しているが、本週報レポートによりこの30年の推移を振り返っている。

≪発展的成長継続に向けて≫

米中貿易交渉「第1段階合意」を控えた直前の論調である。

◇China tariffs to remain until after 2020 election despite deal-US reportedly to keep China tariffs until after election (1月14日付け BNN Bloomberg (Canada))
→米国の中国輸入品billions of dollarsに対する関税は、大統領選挙の後まで有効である旨。その後の削減あるいは撤廃は、中国が初期貿易合意を遵守と米国が見なすかどうかに依る旨。

◇US-China pact signing to ease tension but leave much undone-A primer on "phase one" of the US-China trade deal (1月14日付け The Associated Press)
→18か月の経済闘争を経て、米国と中国が水曜15日、平穏に向けた1ステップを取る運び、少なくとも当面は。

そして、「第1段階合意」への署名が行われている。

◇米中、第1段階貿易合意に署名…中国、2年間で2000億ドル米国商品購入へ (1月16日付け 韓国・中央日報)
→米国と中国が15日(現地時間)、第1段階貿易合意案に最終署名した旨。中国が2年間で合計2000億ドル(約22兆円)の米国商品を購入することが合意の骨子。ドナルド・トランプ米大統領はこの日、ホワイトハウスで中国側の高位級貿易交渉代表である劉鶴・中国中央政治局委員兼副首相と第1段階貿易合意案に正式に署名した旨。トランプ大統領と劉副首相は今回、「米中経済および貿易合意第1段階」というタイトルの86ページ分の合意文も公開した旨。

◇米中「第1段階合意」に署名、中国、米製品の輸入5割増 (1月16日付け 日経 電子版 04:08)
→米中両国は15日、貿易交渉を巡る「第1段階の合意」で正式に文書に署名した旨。合意内容は、中国が米製品の輸入を1.5倍に増やすことや、知的財産権の保護など7項目。米政権は2月に制裁関税の一部を下げる旨。ただ、中国は産業政策の抜本見直しを拒んだままで、米国も中国製品の7割弱に制裁関税を課したまま。米中対立は「薄氷の休戦」にすぎない旨。
米通商代表部(USTR)は約90ページの合意文書を公表し、中国による金融サービス市場の開放や人民元安誘導の自制――など7項目の詳細を開示した旨。両国が貿易拡大や市場開放などで合意文書にとりまとめるのは、2018年7月に関税合戦が勃発して以降で初めて。
米国側は「第1段階の合意」を受けて、2月中旬をメドに、2019年9月に発動した制裁関税第4弾(1200億ドル分)の関税率を15%から7.5%に引き下げる旨。発動済みの制裁関税を緩和するのは初めてで、過熱し続けた貿易戦争がようやく休戦に向かう旨。

今回の合意のポイントがあらわされている。

◇China trade deal details protections for American firms (1月15日付け SILICON VALLEY BUSINESS JOURNAL)
→合意の一部として、中国は、corporate通商機密を侵害あるいは盗用する中国の会社を罰し、中国の会社が買収を通して繊細な海外技術を獲得させないようにすることを約束の旨。

◇Four key parts of Trump's China trade deal (1月16日付け The Hill)
→以下の点:
 China commits to buy more U.S. crops, products
 China to crack down on patent theft, forced technology transfers
 U.S., China declare truce on exchange rate, interest rate battles
 China opens financial markets to U.S. firms

米国・Semiconductor Industry Association(SIA)より早速に、本日のところは歓迎とともに依然横たわる問題の打開を急ぎ求めるステートメントである。

◇Semiconductor Industry Applauds U.S.-China Trade Deal (1月15日付け SIA/Latest News)
→Semiconductor Industry Association(SIA)が、本日調印された米中貿易“phase one”合意に関してpresident & CEO、John Neuffer氏からの次のステートメントをリリースの旨。SIAは、半導体製造、設計および研究における米国のleadershipを代表しており、メンバーが米国半導体販売高の約95%を占めている旨。
「本日調印された‘phase one’貿易合意は、半導体業界における不安定性を緩和し、世界2大経済圏の間のより包括的な取引への踏み石となることを期待する。本日行われた重要な進展を称賛し、引き続きphase two、すなわち中国における公平な競争の場を確実にし、marketplaceを広大に歪め得る国家補助金などより困難な問題のいくつかを打開する、合意に達するよう両サイドに督促する。」

「第1段階合意」署名の前後で並行する米中間の駆け引きの動きそして実情データである。

米国のHuawei牽制強化である。

◇Trump administration moves toward blocking more sales to Huawei: sources-US reportedly aims to tighten Huawei restriction (1月14日付け Reuters)
→米国商務省が、中国・Huaweiに対する製品の販売を阻止する広大な力を政府に与える規則を提案する見込み、該規則をOffice of Management and Budget(大統領府行政管理予算局)に見直しに向けて送っている旨。

米国が、中国の「為替操作国」指定を解除している。「第1段階合意」に伴う措置である。

◇U.S. says China is no longer a currency manipulator (1月14日付け SILICON VALLEY BUSINESS JOURNAL)

◇中国の「為替操作国」解除へ、米政権、貿易交渉進展で (1月14日付け 日経 電子版 02:00)
→米財務省は近く公表する半期為替報告書で、中国の「為替操作国」への指定を5カ月ぶりに解除する方針。米中は貿易交渉の「第1段階の合意」で、人民元政策を透明にする為替条項を盛り込む旨。米政権は中国の通貨安誘導の懸念が和らいだと判断し、強硬措置を撤回する旨。米中両国の通貨摩擦の懸念が和らげば、目先の外国為替市場の安定材料になる旨。

合意はしたもののまだ払拭しきれないところがあらわされている。

◇US business waits on clearer outcome of China trade deal (1月16日付け SILICON VALLEY BUSINESS JOURNAL)
→該合意はboardroomsでは明らかな気晴らしはあったが、中国製品へのbillions of dollarsの米国の関税、該休戦が守られるかの疑念、および北京からさらなる構造的譲歩を引き出す作業を完了する米国当局の願いを残している旨。

オランダ・ASMLの半導体先端リソグラフィ装置の中国への出荷が止められていることで、中国がオランダに対して警告である。

◇Chinese ambassador warns Dutch government against restricting ASML supplies (1月16日付け Reuters)
→中国の駐オランダ大使、水曜15日発として引用。オランダの半導体装置サプライヤ、ASMLがその最新機械の中国への出荷を許されなければ、中国とオランダの間の通商関係が害される旨。

合意&一時休戦としても収まらない米中間の軋轢に対する論調が続いている。

◇米中、止まらぬ分断、ハイテクなお禁輸・高関税 (1月16日付け 日経 電子版 12:22)
→米中両国は15日、貿易交渉を巡る「第1段階の合意」で正式署名し、貿易戦争は一時休戦に入る旨。合意内容は中国による米国製品の輸入拡大や、知的財産権の保護、金融市場の開放など7項目。米政権は制裁関税の一部を下げるものの、中国製品全体に課す関税率は高止まりし、ハイテク企業への禁輸措置も残る旨。世界経済を揺るがす米中の分断は止まらない旨。

◇中国、上場44社を2019年に国有化、ハイテク企業中心に−強まる国の産業保護 米側の批判必至 (1月16日付け 日経 電子版 15:00)
→中国の民営上場企業44社が2019年に国有企業に転換した旨。米中貿易戦争で打撃を受ける恐れがあるハイテク分野の企業を政府の資金によっててこ入れするケースが目立ち、国有化された44社の合計の時価総額は4兆円規模に達する旨。トランプ米政権は中国の先端企業への補助金などの政府支援を取りやめるよう求めてきたが、中国側はむしろ米国との対立長期化に備えて重点産業の保護を強めてきた実態が浮き彫りになった旨。
米中両国は15日、貿易交渉を巡る「第1段階の合意」に署名しており、近く中国の知的財産保護や中国企業への補助金問題などを巡る第2段階の協議に入る旨。今後の米中交渉でも米側が中国のハイテク企業の国有化を問題視するのは必至。

◇米中「管理貿易」ゆがむ世界、22兆円取引、供給国に余波 (1月16日付け 日経 電子版 23:30)
→米中両国は15日、貿易交渉を巡る「第1段階の合意」で正式署名、合意には中国が対米黒字の縮小に向けて、米国製品の追加購入分として今後2年で2000億ドル(約21兆6千億円)を上積みすることを盛り込んだ旨。貿易戦争は休止の局面に入るが、その引き換えに米中が「管理貿易」に傾けば、自動車や大豆などの品目で日欧や新興国の対中輸出が打撃を受ける旨。国際通商体制の動揺は続く見通し。

そして、中国の2019年国内総生産(GDP)が発表され、減速を色濃く反映、6.1%成長と29年ぶりの低水準となっている。中国経済に忍び寄る影の問題意識が続いている。

◇中国、2019年6.1%成長に減速、29年ぶり低水準−貿易戦争が打撃 (1月17日付け 日経 電子版 11:01)
→中国国家統計局が17日発表した2019年の国内総生産(GDP)は、物価の変動を除く実質で前年比6.1%増えた旨。伸び率は2018年から0.5ポイント縮小し、2年連続で減速した旨。天安門事件の余波があった1990年以来、29年ぶりの低水準。米国との貿易戦争で製造業が振るわなかった旨。2019年10〜12月の成長率は前年同期比6.0%と7〜9月と同水準だった旨。2019年の実質成長率は中国政府の目標「6〜6.5%」の範囲には収まった旨。

◇China GDP growth last year was 6.1 per cent, slowest rate for 29 years-Chinese economic growth hits lowest level in 29 years (1月17日付け South China Morning Post (Hong Kong))
→中国国家統計局(National Bureau of Statistics)発。昨年の中国経済は6.1%拡大、29年ぶりの低い伸び、しかし政府目標の6% to 6.5%の範囲内の旨。中国政府は、長期経済低迷を回避するために定期的に財政刺激および税削減を行っている旨。

◇China GDP grows 6.1% in 2019, slowest rate in 29 years-Sliding birthrate, tariffs and weak manufacturing investment remain a drag (1月17日付け Nikkei Asian Review (Japan))

◇中国経済に高齢化の影、迫る「団塊」退職、しぼむ内需 (1月17日付け 日経 電子版 23:00)
→中国経済に少子高齢化の影が忍び寄ってきた旨。17日発表した2019年の実質国内総生産(GDP)成長率は6.1%にとどまり、2018年から0.5ポイントも縮小した旨。米国との貿易戦争が主因だが、生産年齢人口の減少による個人消費の弱含みも無視できない旨。中国版「団塊の世代」が退職し始める2022〜2023年から下押し圧力は本格化する見通しで、世界第2の経済に大きな重荷となる旨。

米国株式市場の方は、「第1段階合意」署名を受けた最高更新の続伸基調の現時点である。

◇NYダウ続伸、最高値を上回って推移、米中景気の改善期待で (1月18日付け 日経 電子版 05:26)
→17日の米株式市場でダウ工業株30種平均は5日続伸している旨。15時現在は前日比32ドル73セント高の2万9330ドル37セントと前日に付けた過去最高値を上回って推移している旨。米中の貿易協議の第1段階の文書署名を受けた買いが続いている旨。米中で景気の改善期待を誘う経済指標の発表が続いたのも投資家心理を上向けた旨。

次に、年初恒例のGartner社による世界半導体売上げのベンダーランキングデータへの注目である。メモリ価格急落を受けた2019年の速報データが次の通りである。

◇Gartner Says Worldwide Semiconductor Revenue Declined 11.9% in 2019-Intel Reclaimed Top Spot in Global Semiconductor Market; Samsung Moved to No. 2 (1月14日付け Gartner)
→Gartner社による速報データ。2019年の世界半導体売上げが、2018年から11.9%減の$418.3 billion。Intelが、該市場におけるNo. 1の座を取り戻し、メモリ市場低迷が2017年および2018年の売上げNo. 1ベンダー、Samsung Electronicsなどトップベンダーの多くにマイナスのインパクトを与えている旨。

※2019年世界半導体売上げトップ10ベンダー(金額:USM$)

20192018ベンダー
2019
2019
2018
2018-2019
順位順位
売上げ
シェア(%)
売上げ
伸び率(%)
1
2
Intel
65,793
15.7
66,290
-0.7
2
1
Samsung Electronics
52,214
12.5
73,649
-29.1
3
3
SK hynix
22,478
5.4
36,240
-38.0
4
4
Micron Technology
20,056
4.8
29,742
-32.6
5
5
Broadcom
15,293
3.7
16,261
-6.0
6
6
Qualcomm
13,537
3.2
15,375
-12.0
7
7
Texas Instruments
13,203
3.2
14,593
-9.5
8
8
ST Microelectronics
9,017
2.2
9,213
-2.1
9
12
Kioxia (Toshiba Memory)
8,797
2.1
8,533
3.1
10
10
NXP
8,745
2.1
9,022
-3.1
Others(outside top 10)
189,169
45.2
195,713
-3.3
Total Market
418,302
100.0
474,631
-11.9

  [Source: Gartner (January 2020)]

本データを受けた業界各紙の取り上げ&反応である。

◇半導体売上高、2019年はサムスン首位陥落、インテルが奪還 (1月14日付け 日経 電子版 19:00)
→米調査会社ガートナーが14日発表した2019年の半導体メーカー売上高ランキングで、2017〜2018年に首位だった韓国サムスン電子が主力のメモリ市況の悪化で2位に後退した旨。年後半のサーバー向けCPUの需要回復などを背景に、同分野で圧倒的なシェアを持つ米インテルが3年ぶりに首位に返り咲いた旨。日本勢はキオクシア(旧東芝メモリ)が9位に入った旨。
ガートナーによると、2019年の世界の半導体売上高は2018年を11.9%下回る4183億ドル(約46兆円)にとどまった旨。

◇サムスン、2年ぶりに半導体王座をインテルに明け渡す…メモリ価格急落が原因 (1月15日付け 韓国・中央日報)
→サムスン電子が2年ぶりに半導体市場1位の座をインテルに明け渡した旨。
主力であるメモリ半導体価格下落の影響が大きかった旨。市場調査機関のであるガートナー(Gartner)は15日、2019年世界半導体売上高に対する予備調査の結果を発表、昨年の全世界半導体売上高は4183億ドル(約46兆円)で、前年に比べて11.9%減った旨。韓国が主導するメモリ半導体市場が特に目立って減少、ガートナーのアンドリュー・ノーウッド副社長兼アナリストは「メモリ半導体市場売上高は前年比31.5%減となった」とし「DRAMは2018年末から供給過剰が持続しながら昨年の売上高が前年比37.5%減った」と明らかにした旨。同氏は「今年は過剰在庫問題が解消してチップASP(平均販売価格)が上昇し、半導体市場、特にメモリ部門の売上が伸びるだろう」と見通した旨。

◇Samsung's chip revenue 2nd-largest after Intel in 2019: data (1月15日付け Yonhap News Agency)

◇インテル、半導体売上高で首位 (1月15日付け 日経)
→米調査会社ガートナーが14日発表した2019年の半導体メーカー売上高ランキングで、2017〜2018年に首位だった韓国サムスン電子が主力のメモリ市況の悪化で2位に後退、年後半のサーバ向けCPUの需要回復などを背景に、同分野で圧倒的なシェアを持つ米インテルが3年ぶりに首位に返り咲いた旨。

◇Worldwide semiconductor revenue drops 11.9% in 2019, says Gartner (1月16日付け DIGITIMES)

◇Worldwide Semiconductor Revenue Declined 11.9% in 2019 (1月17日付け SEMICONDUCTOR DIGEST)

メモリ価格が戻していく兆しが見られている現時点であるが、サムスンが如何に挽回を図れるか、今後に注目である。

ところで、2020年と新たなdecadeに入ったが、Gartnerの前身、Dataquestの頃からこのランキングデータには当然ながらの大きな関心ということで、30年前まで10年置き本週報で遡ってみて、以下に取り出している。

□Dataquest世界半導体メーカー1989年売上高ランキング
                   (USM$/前年比伸び率%)
 1. NEC       4,964   9.3
 2. 東芝        4,889   11.2
 3. 日立        3,930   12.1
 4. Motorola
 5. 富士通
 6. TI
 7. 三菱電
 8. Intel
 9. 松下
 10. Phillips
 11. National Semi
 12. SGS-Thomson
 13. 三星
 14. シャープ
 15. Siemens
 16. 三洋
 17. 沖
 18. AMD
 19. ソニー
 20. AT&T

□データクエスト 1999年世界半導体メーカーランキング
 1. Intel       25,810  13.3
 2. NEC         9,216  12
 3. 東芝        7,594  28.4
 4. サムスン電子    7,095  49.5
 4. TI         7,095  22
 6. Motorola      6,425  -9.4
 7. 日立        5.521  18.3
 8. STマイクロ     5,080  21
 9. Phillips      5,065  13.9
 10. Infineon      5,010  28.2
   総計       160,133  17.6

□Gartner: Memory segment helped some show revenue growth in 2009-The memory segment deserves attention, since much of what happened in 2009 appears contrary to what happened in other segments, Gartner says. (2009年12月17日付け Electronics Design, Strategy, News)
→Gartner発。半導体業界にとって2009年は最近では史上最悪の年の1つに、しかしいくつかのデバイスセグメントおよびメーカーはどうにか伸びを示している旨。

 【世界半導体メーカーランキングトップ10 (単位:100万ドル)】
                           出典:Gartner

20082009Company
2009
2009
2008
2008-2009
順位順位
売上げ
シェア
売上げ
伸び率(%)
1
1
Intel
31,990
14.2
33,814
-5.4
2
2
Samsung Electronics
17,827
7.9
17,391
2.5
3
3
東芝
9,749
4.3
10,601
-8
4
4
Texas Instruments
9,576
4.2
10,593
-9.6
5
5
STMicroelectronics
8,428
3.7
10,270
-17.9
8
6
Qualcomm
6,503
2.9
6,477
0.4
9
7
Hynix Semiconductor
6,150
2.7
6,010
2.3
7
8
ルネサステクノロジ
5,670
2.5
7,081
-19.9
11
9
AMD
4,820
2.1
5,361
-10.1
6
10
Infineon Technologies
4,530
2
8,461
-46.5
Others
120,750
53.4
138,951
-13.1
Total
225,993
100
255,010
-11.4

1989年、1999年、2009年そして2019年と、半導体業界の規模の拡大そしてベンダーそれぞれの激変の推移を改めて辿るところがある。


≪市場実態PickUp≫

【CESの余韻】

前回、概要および各社の競演ぶりを示したConsumer Electronics Show(CES)2020(1月7日〜10日:Las Vegas)であるが、その熱い余韻が週末から週明けにわたって以下の通りあらわされている。テレビでも紹介され、改めて納得した内容もいくつか含まれている。

◇CES Image Gallery: It's a Wrap (1月10日付け EE Times)
→量子computer、巨大な空飛ぶタクシー、小型&柔軟から膨大&鮮明に至る豪華なディスプレイ、virtual peopleおよびreal crowdsなど、CES 2020のvisual wonders、以下の内容:
*Quantum computing comes to CES
 …IBMのQ System One。"世界初、integrated universal approximate quantum computingシステム"
*Le Mans comes to CES
 …自動車レースのFormula 1の仮想シミュレーション体験
*LG's dazzling OLED
 …端から端まで約50ヤード、LGの広大なOLEDの天井
*Sights and more sights
 …LG LinQ smart-kitchen展示
*Flying autonomous taxi, anyone?
 …将来の空中ride-shareネットワークに向けてUber air taxisを開発するHyundai Motor Co.とUberの連携が発表され、HyundaiがUber Elevate initiativeに参画する最初の自動車会社となった旨。
*The ultimate in ultra-thin
 …超薄ディスプレイパネル・メーカー、Royoleが、自社製品を25-footの人工の木での仮想の葉としている旨。
*Nominee: dumbest corporate slogan
*Panasonic: swimmers & stuffed animals?
 …歴史的な日本のelectronicsメーカー、Panasonicは今年、OLEDディスプレイ、ワイヤレスヘッドフォンおよびFilmmaker Mode TVでの連携会社とのコラボを盛り込んでいる旨。
*You don't get the hunk
 …Homexの統合home experienceプラットフォーム
*This is not a giant toaster
 …Boschがshuttle vehicleを展示、driverless auto技術開発の進展
*Konka's 8K micro LED
 …Samsung以外ではただ1つ、壁画に向けたcapabilitiesを備えるKonka
*China at CES in one photo
 …CES展示フロアでのあるアングル。中国の2社のpowerhouses, ChangdongおよびHuaweiが天井の梁でつながっている。
*Who was that masked Huawei guy?
 …CESブースにいるHuaweiの従業員のだれもフルネームを明かさなかった旨。
*Those people aren't people
 …Neon(Campbell, California)のリアルな2Dロボットイメージ
*A place in the sun
 …砂漠の中のLas Vegasであるが、Las Vegas Convention Centerの前に休息がとれる一区画
*Elon Musk goes underground
 …展示フロアにはなかった1つに、Elon Musk氏のBoring Co.による開発

◇Qualcomm Wades Into Battleground With New WiFi Chip for Cars-Qualcomm offers auto chip for Bluetooth, Wi-Fi connectivity (1月10日付け Electronic Design)
→QualcommがCES 2020にて、自動車におけるBluetooth 5およびWi-Fi 5 connectivityをサポートするQCA6595AU統合半導体を投入、該半導体は、2.4 gigahertzおよび5 GHz周波数帯で動作する旨。車の至る所最大1 Gbpsのデータ速度を可能にし、2020年に顧客向け出荷開始の旨。

◇MediaTek promotes AIoT chip family-MediaTek touts chip line for AIoT applications (1月10日付け DIGITIMES)
→MediaTekが、CES 2020にて、edge-ベースartificial intelligence(AI)応用向けi300B, i300Aおよびi500チップセットを披露、それぞれ音声支援機器、multimediaディスプレイおよびAI vision機器対象の旨。
AIoT=IoTと人工知能(AI)を 組み合わせた技術

◇IBM doubles quantum volume in the race for computing supremacy-Q&A: IBM researcher touts quantum computing capabilities (1月13日付け TechRepublic)
→IBM Researchのglobal lead for Quantum Applications、Jamie Garcia氏がCES 2020にて、IBMが2019年に量子computingにおけるmilestonesに如何に達したか、語っている旨。

◇2020 Set to Be a Big Year for 5G-5G is here, according to Qualcomm Inc. President Cristiano Amon. At least the technology is. (1月14日付け EE Times India)
→「2020年は5Gが拡大する年」と、CES 2020にてQualcomm社のPresident、Cristiano Amon氏。

◇CES 2020 Deconstructed: 10 Lessons (1月16日付け EE Times)
→CES 2020でのtourから感じ取った10点:
 1. Camera-only AVs can create ‘internal redundancy’
 2. Filter ‘big data’
 3. AI chips on 40nm to be fabricated in Japan
 4. Selling into the future
 5. Let big data companies see the forest but not trees
 6. AVs with chutzpah
 7. Why are we doing AV?
  8. Can cars tell us their intent?
 9. Qualcomm-NXP: Life after the M&A was called off
 10. It takes a village…

◇10 Lessons Learned at CES 2020-What I derived from my tour of CES 2020. Dealing with big data, vision vs. lidar, what autonomy really means, and much, much more (1月17日付け EE Times India)

【$1 trillion club】

半導体設備投資では$1 billion clubに何社入るかを見ているが、これは米国株式市場での時価総額の話。Googleの親会社、Alphabetがこのほど、$1 trillion clubの仲間入り、Apple, AmazonおよびMicrosoftに次いで4社目とのこと。IT巨人の物差しではある。

◇Alphabet on the brink of joining the $1tn club (1月13日付け SILICON VALLEY BUSINESS JOURNAL)
→Googleの親会社、Alphabetの株式市場価値が初めて$1tnになろうとしており、該milestoneに達するBig Techの4番手となる旨。

◇Alphabet on the brink of joining the $1tn club-Alphabet closes in on $1T valuation (1月13日付け Financial Times)
→Alphabetが金曜10日、$1 trillion valuationの1%以内に入っている旨。
株価が本日ふたたび上がっており、該milestoneにまもなく達しそうな旨。

◇米巨大IT独走、アルファベット時価総額1兆ドル迫る (1月14日付け 日経 電子版 04:24)
→米株市場で巨大IT企業の独走が続いている旨。米検索大手、グーグル親会社のアルファベットの時価総額は1兆ドル(約110兆円)に迫る旨。達成すればアップルなどに次ぐ4社目。新興IT株が伸び悩むなか、創業から20年を超える「老舗」の強さが際立つ旨。世界の当局はデータ独占を懸念し、監督を強めているが、市場は「規模の優位性は不変」とみているよう。

◇Google reaches $1 trillion in value, even as it faces new tests (1月16日付け SILICON VALLEY BUSINESS JOURNAL)
→Googleの親会社、Alphabetの株が2020年1月16日、初めて時価総額$1 trillionに達し、Apple, AmazonおよびMicrosoftに加わってかつては考えられないvaluationに到達の旨。

【入り混じる人材採用】

先端半導体ものづくりにおいて米中の狭間の位置づけにあるTSMCが、米国での動きに備えてIntelからの人材を採用している。

◇TSMC Hires Ex-Intel Lobbyist to Deal With U.S.-China Tensions-Former Intel lobbyist added at TSMC for US-China trade issues (1月13日付け Bloomberg)
→Apple社およびHuawei Technologies Co.への主要半導体メーカー、TSMCが、米中貿易摩擦からのインパクトを和らげるWashingtonでの前例のない活動の先頭に立つよう、ライバル、Intel社の前トップlobbyist、Peter Cleveland氏を採用の旨。

◇TSMC hires ex-Intel executive to enhance global communications (1月14日付け Focus Taiwan News)
→TSMCが月曜13日、前Intelのexecutive、Peter Cleveland氏をグローバルcommunication活動に向けて採用の旨。

そのIntelは、データ重点の流れに備えて、Hewlett Packard Enterprise(HPE)社からの採用である。

◇Intel hires new CIO from Hewlett Packard Enterprise-Intel names Deskus CIO (1月14日付け The Oregonian (Portland))
→Intelが、別のトップexecutiveに向けて外部に向かい、同社の新しいchief information officer(CIO)にArchana (Archie) Deskus氏を起用の旨。

◇Intel hires Hewlett Packard Enterprise's chief information officer (1月14日付け SILICON VALLEY BUSINESS JOURNAL)
→Intelがますますデータに重点化、ベテランのchief information officer(CIO)、Archana Deskus氏がIntelに入る旨。

AMDは、サーバプロセッサ事業に向けてIntelからの採用である。

◇AMD Hires Top Intel Exec Dan McNamara To Grow EPYC Business-Former Intel exec picked to lead AMD's EPYC business (1月16日付け CRN (US))
→Advanced Micro Devices(AMD)にてEPYC(エピック)サーバプロセッサ事業を引っ張るのに、Dan McNamara氏が選ばれ、AMDのDatacenter and Embedded Solutions Business Group、senior vice president and general manager、Forrest Norrod氏にreportする旨。McNamara氏は、10月にIntelを離れるまでIntelのNetwork and Custom Logic Groupを率い、それ以前はIntelが2015年に$16.7 billionで買収したAlteraで働いた旨。

【連携の取り組み】

先端5-nmおよび7-nm設計に向けて、Cadence Design Systems社とBroadcom社のコラボである。

◇Cadence Expands Collaboration with Broadcom for 5nm and 7nm Designs (1月14日付け SEMICONDUCTOR DIGEST)
→Cadence Design Systems社が、次世代networking, broadband, enterpriseストレージ, ワイヤレスおよび産業応用に向けた半導体ソリューションの創出についてBroadcom社とのコラボを拡大する旨。

◇Cadence expands collaboration with Broadcom for 5nm and 7nm designs-Cadence works with Broadcom on 5nm, 7nm chip designs (1月15日付け New Electronics)
→Cadence Design Systemsが7-nanometer features搭載microchips設計でBroadcomとコラボ、両社は5-nm半導体設計の推進を図っていく旨。次世代ブロードバンド、enterpriseストレージ, 産業用, networkingおよびワイヤレス応用を狙っている旨。

パワー半導体で注目のSilicon Carbide(SiC)について、STMicroelectronicsとロームの間のSiCウェーハ供給についての契約合意である。

◇ST Secures Additional SiC Wafers with new $120m SiCrystal Deal-ST makes $120M+ deal with SiCrystal for more SiC wafers-The agreement will help meet demand for silicon carbide ICs for automotive and industrial applications. (1月15日付け EE Times)
→STMicroelectronicsが、複数年にわたる$120 millionを上回るsilicon carbide(SiC)ウェーハ買収に向けてSiCrystalと合意締結、STは、車載および産業用半導体の生産向けに該Rohm Group unitから150-millimeter SiCウェーハを購入する旨。

◇ロームグループとSTマイクロ、シリコンカーバイド(SiC)ウエハの数年間にわたる供給に合意 (1月15日付け 日経 電子版 17:40)
→ローム株式会社とSTマイクロエレクトロニクス(以下、ST)は、シリコンカーバイド(SiC:炭化ケイ素)ウエハをロームグループのSiCrystal GmbH(以下 SiCrystal)から数年間にわたり、供給する契約に合意したことを発表、SiCパワーデバイスが急速に成長し需要が高まる中、本合意は、欧州においてSiCウエハ生産量シェア1位のSiCrystalから、多種多様な電子機器に半導体を提供する世界的半導体メーカーのSTに向けた1億2千万ドルを超える先進的な150mmSiCウエハの供給を対象としている旨。

◇Silicon Carbide Boosts Power Electronics (1月17日付け EE Times)
→Silicon Carbide(SiC)がいくつかのpower応用で採用されてきており、ROHMとSTMicroelectronicsの間の合意が該業界での広大な採用を高めていく旨。

【Apple関連】

Appleが、ミリ波5G iPhonesおよび5G iPadsに向けて台湾・Advanced Semiconductor Engineering(ASE)のantenna-in-package(AiP)モジュールを取り入れるとのこと。

◇Apple reportedly taps Taiwan's ASE for mmWave 5G iPhone and iPad Pro (1月15日付け Apple Insider)

◇ASE reportedly enters supply chain for mmWave 5G iPads, iPhones-Sources: ASE scores entry into Apple supply chain (1月15日付け DIGITIMES)
→業界筋発。Advanced Semiconductor Engineering(ASE)が、同社substrate-ベースflip chip antenna-in-package(AiP)技術を用いてAppleのmillimeter-wave 5G iPhonesおよび5G iPadsのsupply chainに入っている旨。該5G iPhoneは3-4個のASE AiPモジュールを要する一方、5G iPadsは4-5個のモジュールを必要とする旨。

また、強化を図っているartificial intelligence(AI)技術について、AppleがXnor.ai(Seattle)を買収する動きである。

◇Apple Reportedly Acquires Xnor-Seattle startup runs AI on tiny embedded devices-Report: Apple purchases AI startup Xnor (1月16日付け EE Times)

◇Hey Siri. Why did Apple pay $200m for an AI start-up? (1月16日付け SILICON VALLEY BUSINESS JOURNAL)
→Appleが、“smart”機器へのintelligence持ち込みに特化するAI start upに約$200mをかけ、key技術における失地回復を目指す多数の買収で最大のものの1つの旨。同社のXnor(Seattle)に対する提示は、Microsoft, AmazonおよびIntelなど他の大手からのアプローチに勝った、と該買収に詳しい2人発。

◇AppleがAI技術企業Xnor.aiを買収、プライバシー重視の方針が合致か (1月16日付け iPhone-Mania)
→Appleが、米シアトルのスタートアップ企業Xnor.aiを買収した、と米メディアGeekWireが報じている旨。買収額は約2億ドル(約220億円)とみられている旨。Xnor.aiのAI技術は、機械学習をクラウド上ではなくデバイス上で処理する「エッジ型」と呼ばれるもので、ユーザーのプライバシーを重視するAppleの方針に合致する旨。また、Xnor.aiのAI技術はデバイスの消費電力を抑えることができるのも特徴で、iPhoneなどの小型デバイスへの搭載に適している旨。

【「カーボン・ネガティブ」】

米国・Microsoftが、2030年までに「カーボン・ネガティブ」になることを含む環境問題への取り組みを以下の通り発表している。排出するよりも多くの二酸化炭素を除去するということで、2012年に排出量と除去量をプラスマイナスゼロにする「カーボン・ニュートラル」を達成したが、これでは不十分であり、「大気からの炭素除去が急務であると考えている」としている。

◇Microsoft aims to become carbon negative by 2030, launches $1 billion Climate Innovation Fund-Microsoft to create $1B Climate Innovation Fund (1月16日付け VentureBeat)
→Microsoftが、2030年までにcarbon negativeでありたいとして、Climate Innovation Fundを打ち上げ、carbon削減, 捕捉および除去技術の展開ペースを上げていく旨。該ファンドは、株式&負債投資で革新的な取り組みを支持する旨。

◇Microsoft pledges to be ‘carbon negative’ by 2030, launches $1B Climate Innovation Fund (1月16日付け GeekWire)

◇CO2排出「マイナス」時代へ、投資家、ESG対応促す (1月17日付け 日経 電子版 23:00)
→企業に環境対策などを求める「ESG(Environment、Social、Governance)」の動きが強まるなか、温暖化の原因である二酸化炭素(CO2)の排出量を純減させる「カーボン・ネガティブ」に取り組む企業が広がってきた旨。米マイクロソフトは16日、2030年までに達成を目指すと発表、欧米企業は2025〜2030年に再生可能エネルギーで排出量を減らす従来の活動から新たな局面に入り、日本企業も対策の見直しを迫られる可能性がある旨。


≪グローバル雑学王−602≫

しばらく米中貿易摩擦&戦争の経緯&実態の読み解きに努めてきたが、ここらあたりで本来のグローバルな視点をより豊かにしていく期待をもって、世界各地に伝わる神話のエッセンスを凝縮した、宝石箱のような一冊という書、

『世界の神話』
 (沖田 瑞穂 著:岩波ジュニア新書 902) …2019年8月22日第1刷発行

を読み進めることにする。著者は、インド神話、比較神話が専門で、神話学者で学習院大学名誉教授、吉田 敦彦氏の本を読んで、神話を学ぶきっかけになったとのこと。個性的な神々が繰り広げる美しくも恐ろしくそして聖なる物語、すなわち神話を世界各地に求めて、長い時を経てなお魅了する個性豊かな神々や、美しくも恐ろしいストーリーに触れていく。まずは、インドの神話について2回に分けて見ていく1回目である。2つに分けて「古い神話」であるバラモン教の神話が今回あらわされている。神々や悪魔の名前で遡りながら話の脈絡を繰り返し辿っている現時点である。


≪はじめに≫

・神話は、一様ではない
・「神話」とは一体、何?
 →1つだけ、「神話」の中核をなす定義:「神話とは、聖なる物語である(であった)」
・「聖性」という言葉がキーワード
 →ある話が語られ、そして聞かれていた時に、それが「聖なるもの」ととらえられていたなら、その話は「神話」である
・その聖性はほとんどの場合、時代とともに失われていく
 →それでも、物語としての神話は綿々と生き続け、新たな聖性を吹き込まれ、そして新たな意味を持って、私たちに語りかけてくれる
・「世界の神話」をめぐる旅に、ご一緒に

1 インドの神話 …2分の1

・神話伝説が豊かに残されているインド
・豊富な文献で並ぶインドと中国、その性質においては正反対
 →歴史書を多く残す中国
  →古来より現実世界に対して強い興味
 →神話や哲学、宗教に関するおびただしい著作を残すインド
  →古来より現実世界よりも別の世界、つまり神々の世界や、死後の世界に興味
・大きく2つに分けられるインドの神話
 →1.「古い神話」、すなわちバラモン教の神話、あるいはその文献の名をとってヴェーダの神話
 →2.「新しい神話」、すなわちヒンドゥー教の神話

◆バラモン教の神話

・インド最古の宗教文献、『リグ・ヴェーダ』
 →紀元前1200年頃に成立
 →これをまとまった形で補う文献、「ブラーフマナ」
  →祭式の説明書
  →成立年代はおよそ紀元前1000年から前500年頃

⇒「マヌの洪水」
 …洪水神話
 *人間の祖先のマヌという男の手の中に一匹の魚
 *やがて洪水が起こって生き物たちを全滅させるであろう、とその魚が予言
 *予告した年に洪水が起こり、魚は北方の山(ヒマーラヤ)でマヌを船から降ろした
 *マヌは子孫を残すことを欲して苦行をし、祭式を行って、乳製品を水の中に供えた
 *一年経つとそこから一人の女が現れ、彼は彼女によって人類を生んだ
―オリエントからインド、ギリシアの洪水神話はすべて起源が同じ
―インドの場合、メソポタミアの洪水神話が元
―そこからインドの先住民に伝わり、のちにアーリア人(インド方面に移動してきたインド=ヨーロッパ語族の人々)の神話に組み込まれた

⇒「天女ウルヴァシー」
 …天女と人間の男の恋物語。世界中でよく知られている「天人女房型」神話
 *アプサラス(天女)のウルヴァシーは、人間の男、プルーラヴァスを愛して結婚
 *彼女は、「あなたの裸身を私に見せないでください」という条件を課した
 *やがて彼女は身ごもったが、ガンダルヴァ(楽神)たちは連れ戻そうとした
 *彼女が可愛がっていた子羊が奪われ、プルーラヴァスは慌てて裸のまま飛び出した
 *ウルヴァシーは夫の裸身を見て、それきり姿を消した
 *方々探し回っているうちに、とある蓮池に
 *アプサラスたちが水鳥の姿をして泳いでいるなかにウルヴァシーも
 *彼をあわれに思って1年後に会う約束
 *1年後、プルーラヴァスがそこに来て見ると、黄金の宮殿があり、その中にウルヴァシーがいた
 *彼はウルヴァシーの産んだ彼の息子とともに、ガンダルヴァの仲間に
―「自分の姿を見ないように」という禁止を課す、いわゆる「見るなの禁」の話は世界中に多く見られる
―似た例として、叙事詩、『マハーバーラタ』に蛙女房のスショーバナーの話
―ほかに、『マハーバーラタ』ではガンジス川の女神、ガンガーが人間のシャンタヌ王と結婚
 ⇒約束は「私がどのようなことをしても決して不愉快な言葉を吐かないこと」

⇒「不死の飲料アムリタの起源」
 …神々の「不死」の起源を語る神話
 *神々とアスラ(悪魔)たちの争いのなか、不死の飲料、アムリタは、シュシュナという名のアスラのもとに
 *インドラという神は、アムリタがシュシュナの口の中にあることを知った
 *インドラは手を尽くし、シュシュナの口からアムリタを盗み出した
 *神々は不死の飲み物を手に入れた
―神々と敵対する悪魔の一族であるアスラたちが、「不死」を独占
―それを「盗む」ことによって、ようやく神々も不死となれたことに

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