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「東芝メモリ」の売却、日米韓連合との交渉決定、米韓台の反応を追う

東芝の半導体メモリ子会社、「東芝メモリ」の売却について、官民ファンドの産業革新機構や投資ファンドの米ベインキャピタルなどが結成する日米韓連合と優先的に交渉するという決定が、東芝の取締役会にて行われて発表されている。融資提供でこの連合に加わっている韓国・SKハイニックスの一方、アップルなどを呼び込んでいる台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業は優先先から漏れてそれぞれの反応を引き起こしている。撤退の模様と報じられている米国ブロードコムと合わせて、各社、業界の動きを追っている。

≪それぞれの思い、思惑≫

日米韓連合で最終調整に向かう動きが、以下の通り続いた東芝のこのほどの取締役会の直前である。

◇東芝、日本勢主導を評価 半導体売却−日米韓連合で最終調整 (6月19日付け 日刊工業)
→東芝は半導体メモリ子会社「東芝メモリ」の売却先について産業革新機構や米ファンド、韓国SKハイニックスなどで構成する「日米韓連合」を軸に最終調整に入った旨。米ブロードコムが有力とされていたが、売却後のリストラの懸念がぬぐえない旨。日米韓連合の提案が固まり、東芝は日本が主導権を握れる同連合を評価している模様、東芝は21日に開催予定の取締役会での決定を目指し、詰めの協議を進める旨。

◇Toshiba to pick government-led Japan-U.S.-Korea group to buy chips unit-source-Sources: Group wants Toshiba to resolve WD flap (6月20日付け Reuters)

◇東芝半導体売却、日米韓連合と交渉へ、取締役会で検討 (6月21日付け 日経 電子版)
→東芝は20日、半導体メモリ子会社「東芝メモリ」の売却で、官民ファンドの産業革新機構や投資ファンドの米ベインキャピタルなどが結成する日米韓連合と優先的に交渉する方向で検討に入った旨。21日に開く東芝の取締役会で協議する旨。東芝と対立する米ウエスタンデジタル(WD)による訴訟リスクはなお残り、交渉は流動的の旨。日米韓連合による買収額は2兆円を超えるもよう。革新機構や日本政策投資銀行、ベインが組んで東芝メモリを買収、革新機構など日本勢が議決権の過半を握る見通しの旨。韓国の半導体大手、SKハイニックスも融資などの形で資金を出す方向で調整している旨。

その取締役会にて、以下の通り決定が行われている。協業先の米・ウエスタンデジタル(WD)の該売却反対を孕んでの決定となっている。

◇東芝、日米韓連合との半導体売却交渉を決定 −取締役会 (6月21日付け 日経 電子版)
→東芝は半導体メモリ事業の売却交渉で官民ファンドの産業革新機構を軸とした連合と優先的に交渉すると発表、21日午前に開いた取締役会で決議した旨。今後は同連合と個別交渉に入り、具体的な売却条件を詰める旨。ただ協業先の米ウエスタンデジタル(WD)が売却に反対しており、交渉が円滑に進むかどうかは不透明な情勢の旨。

◇Japan-led Consortium Wins Toshiba Memory Bidding (6月21日付け EE Times)

◇Toshiba Picks Bain-Japan Group as Preferred Chip Unit Buyers-Bain, Japanese group named preferred bidder for Toshiba unit (6月21日付け Bloomberg)
→東芝が、Bain Capitalおよびいくつかの日本投資が引っ張るコンソーシアムを同社メモリ半導体事業への優先的な入札者とする旨。該投資家グループは、東芝の半導体operationsに$19 billionを支払う用意がある旨。

◇Toshiba names preferred bidder for memory-chip business sale (6月21日付け DIGITIMES)

この決定に対する米国関連の反応として、WDの反対とこれを翻そうとする日本政府、そして最高額を提示していたとされる米国半導体メーカー、ブロードコムは撤退と伝えられている。

◇東芝半導体、米WDが反対声明、優先交渉発表受け (6月21日付け 日経 電子版)
→東芝が21日、半導体メモリ事業の売却先として官民ファンドの産業革新機構の陣営と優先的に交渉することを表明したことを受けて、協業先の米ウエスタンデジタル(WD)は改めて売却に反対する声明を発表、WDは「同意なしに同事業を第三者に譲渡する権利はない」と主張、「裁判を通して合弁会社の利益を守る」と強調した旨。

◇WD comments on Toshiba bid on flash JV (6月21日付け DIGITIMES)

◇Japan trade ministry asks Western Digital to join Japan Government-Bain consortium for Toshiba chip unit: sources-Report: Ministry urges WD to join preferred group (6月21日付け Reuters)
→経済産業省が、Western Digitalに対し、東芝の半導体事業買収に向けた日本政府が選択する入札グループに加わるよう説得しようとしている旨。
Western Digitalは、NANDフラッシュメモリ事業における東芝との製造パートナーであり、東芝の半導体部門売却に反対する問題として契約上の義務を挙げている旨。

◇ブロードコム、東芝半導体子会社買収から撤退か、米報道 (6月22日付け 日経 電子版)
→米半導体メーカーのブロードコムが東芝の半導体メモリ事業買収の交渉から撤退した模様、経済ニュースの米CNBCが21日、関係者の話として報じた旨。米ウエスタンデジタル(WD)が14日に売却差し止めを米地裁に申し立てており、訴訟リスクを嫌気して買収から距離を置く戦略に切り替えたとみられる旨。

韓国では、日米韓連合の一角にSKハイニックスが入ったことを以下の通りいろいろ詰まった思いでの表わし方となっている。ここでもWDの今後の率直な反応が注目されるところがある。

◇Toshiba picks consortium including SK hynix as preferred bidder for chip business-If concluded, deal could raise SK hynix's profile in memory chip segment, analysts say (6月21日付け Korea Herald)
→「東芝メモリ」への日米韓連合の一員、韓国のメモリ半導体ベンダー、SK Hynixは、buyout価格全体の約15%、約$2.62 billionを出す備えの旨。

◇競合会社に東芝を奪われるのは防いだ…技術共有は課題 (6月22日付け 韓国・中央日報)
→「SKハイニックスが盾(NAND型フラッシュ市場での立場低下を防ぐこと)を確実に握った。これからは槍まで握れるかがカギだ。」と、漢陽大学融合電子工学部のソン・ヨンホ教授。東芝が米ウエスタンデジタルやマイクロンのような競合企業の手に渡る場合、SKハイニックスの市場支配力の低下は火を見るより明らかなことの旨。
「NAND型フラッシュ市場の絶対強者であるサムスン電子も平面NAND型フラッシュ技術はほとんど東芝から持ってきた。東芝が投資タイミングさえ逃さなかったならサムスン電子に劣らず市場支配力を伸ばしただろう。」と、韓国半導体産業協会(KSIA)のアン・ギヒョン常務。
問題は株式投資ではなく融資提供の形態でコンソーシアムに参加したSKハイニックスがどれだけ東芝の技術を共有できるかの旨。SKハイニックスは韓日米連合に3000億〜5000億円程度の融資を提供する形態で参加した旨。
21日に東芝取締役会が発表した優先交渉対象者リストに産業革新機構、ベインキャピタル、日本政策投資銀行などだけが出ており、SKハイニックスの名前が直接取り上げられていないのはこのための旨。

◇SKグループ会長、抜群の勝負勘で東芝半導体事業買収に成功 (6月22日付け 韓国・朝鮮日報)
→SKハイニックスは当初有力候補ではなかったが、日本政府、米投資ファンドのベインキャピタルと韓米日連合を結成し、土壇場で大逆転を演じた旨。買収額2兆円のうち、SKハイニックスは3000億円を負担、韓国企業による日本企業買収としては過去最大規模の旨。

◇半導体宗主国・日本の没落の裏に…韓国の一足早いDRAM投資 (6月23日付け 韓国・中央日報)
→ソウルでオリンピックが開催された1988年。米国と日本の政府関係者は毎月、交渉テーブルで向き合った。「半導体協定の改定」が扱われた。日本半導体の米国市場シェアがあまりにも高いため、日本市場内の米国半導体シェアも10%から20%程度に高めようというのが案件だった。特に1988年には日本の世界半導体市場シェアが50%を超えた。・・・・・
サムスン電子は2002年、NAND型フラッシュメモリでも1位になった後、一度もトップを明け渡していない。NAND型フラッシュメモリ基盤の次世代保存装置のSSD市場でも業界1位を維持している。SKハイニックスが投資した韓日米連合が東芝買収に成功する場合、NAND型フラッシュメモリ市場は長期的に韓国企業が1、2位を占める可能性が高い。

◇【社説】ポルシェを抜いた現代車と東芝を買収したSKに拍手を (6月23日付け 韓国・中央日報)

台湾では、まだ引き下がれないと鴻海(ホンハイ)精密工業の郭台銘董事長が、別件の米国での雇用を増やす投資とともに打ち上げが見られている。

◇鴻海の郭董事長、東芝半導体買収「終わっていない」 (6月22日付け 日経 電子版)
→電子機器の受託製造サービス(EMS)世界最大手、台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業が22日、定時株主総会を開き、郭台銘董事長は東芝の半導体メモリ事業の買収交渉について「まだ終わっていない。我々にチャンスはある」と語った旨。東芝は21日、半導体メモリ事業の売却を巡って官民ファンドの産業革新機構などを優先交渉先に決めたが、ただ自社の同意がない売却に反対する協業先の米ウエスタンデジタルとの対立が解消しておらず、情勢は流動的との見方もある旨。

なにしろ間近、6月28日の東芝の年次株主総会までにこの売却をまとめたいという期待であり、今後の見通し関連が以下の通りである。予断を許さずさらに1日1日刻々と逐次目が離せない状況の現時点となっている。

◇東芝メモリ、革新機構が過半出資案、外資勢は3分の1超 (6月22日付け 日経 電子版)
→東芝が半導体メモリ事業の売却で優先的に交渉する日米韓連合の出資案が21日、判明した旨。官民ファンドの産業革新機構が東芝子会社の「東芝メモリ」に50.1%出資し子会社化、投資ファンドの米ベインキャピタルと韓国半導体大手のSKハイニックスは合計33.4%で議案の拒否権を持つ旨。主要行は融資枠延長の検討に入ったが、決着までなお課題は多い旨。


◇東芝、交渉見切り発車、総会前決着にこだわり (6月22日付け 日経 電子版)
→東芝は21日、半導体メモリ事業の売却交渉で官民ファンドの産業革新機構などを優先交渉先に決めたが、あくまで法的拘束力のない決定事項だった旨。自社の同意がない売却に反対する協業先の米ウエスタンデジタル(WD)との対立が解消しておらず、28日の定時株主総会を前に見切り発車した旨。28日までの売却合意をめざすが、WDは反発しており、着地点はいまだみえない旨。

◇東芝半導体買収、鴻海、巻き返し意欲、ブロードコム撤退報道 (6月23日付け 日経)
→東芝が半導体メモリ事業の売却先として産業革新機構を軸とした連合と優先交渉すると発表したことを受け、応札企業に波紋が広がっている旨。台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業は諦めない姿勢を強調し、米半導体メーカーのブロードコムには撤退報道が出た旨。協業先の米ウエスタンデジタル(WD)は反対を求めた訴訟を続ける構えの旨。

◇Toshiba says open to talks with Western Digital over chip unit sale-Toshiba may discuss sale of chip unit with WD (6月23日付け Reuters)
→東芝が、半導体部門売却についてWestern Digitalとの話し合いを考えているが、Bain Capitalおよび日本の投資家の優先入札グループにメモリ製造パートナーのWestern Digitalを加えることは予期しない旨。東芝は、6月28日の年次株主総会までに該売却をうまくまとめる期待の旨。


≪市場実態PickUp≫

【Design Automation Conference(DAC)】

恒例の第54回annual Design Automation Conference(DAC)(2017年6月19-22日:AUSTIN, Texas)にて、各社そして業界の実態模様が映し出される内容に注目させられて以下の通り。まずは、中国自前の32-ビットembedded CPU処理コアの設計メーカーについて。

◇Alibaba Fuels China's CPU Gambit-C-Sky to leverage Alibaba's investment, Yun OS (6月20日付け EE Times)
→第54回annual Design Automation Conference(DAC)(2017年6月19-22日:AUSTIN, Texas)にて、中国自前の32-ビットembedded CPU処理コアを設計するC-Sky Microelectronics Co.(2001年浙江省杭州市設立)のCEO、Xiaoning Qi氏。米国ではほとんど知られないながら、同社は昨年末までに500 million個のembedded CPUsをすでに出荷、set-top boxesからIC cardsおよびprintersまでいろいろなembeddedシステムで用いられている旨。

Mentorを買収したSiemensについて。

◇Siemens Lays Out Vision for Mentor-How Mentor fits into the Siemens strategy (6月21日付け EE Times)
→第54回annual Design Automation Conference(DAC)(2017年6月19-22日:AUSTIN, Texas)にて、Siemens PLMのexecutive chairman、Chuck Grindstaff氏。Siemens AGが昨年11月にMentor Graphics社を$4.5 billionで買収合意、この考えは20年間自分の頭にあった、とtrade press editorsとのインタビュー発言。

中国の半導体業界の進み具合について、キーパーソンの話。

◇Much Ado About China's Big IC Surge (6月22日付け EE Times)
→第54回annual Design Automation Conference(DAC)(2017年6月19-22日:AUSTIN, Texas)にて、清華大学学部長、Shaojun Wei氏。中国の積極的な"国家IC業界展開"はどうなっているか?について、「よい質問。結果はプラス、マイナス入り混じる」旨。以下の項目&注目点:
 Myth and reality of China's IC fund
 Booming manufacturing
 ・国家ICファンドの行く先…製造60%、ファブレス30%、装置&材料10%
 ・SMICでもTSMCからは2世代後れ
 Cut-throat competition among fabless
 12 things to know about China's chip industry
 1. How much has China's IC manufacturing grown?
  …2016年の中国の半導体製造分野は25.1%の伸び。初めて製造の伸びがファブレスを上回る
 2. Who are the top chip manufacturers in China?
  …2016年は、Samsung(China)、SMIC、SK Hynix(China)がトップ3。
 3. China fabless continues to grow
 4. China is the world's factory
 5. How much ICs does China import and export?
 6. How many ICs does China consume?
  …2016年に$93 billionのICs消費
 7. CapEx: The World vs. China
 8. How much money has gone into where in China?
 9. When and where are 300mm wafer fabs in China?
 10. Which companies were bought by Chinese money?
  11. Multinationals are also using China's money
  12. Truth about China's fabless
  …中国のファブレスの89%が従業員100人以下、54%が年売上げ10 million RBM以下

Silicon LabsよりIoTの取り組み、見方。

◇SiLabs CEO Plots Slow, Steady IoT Strategy (6月23日付け EE Times)
→第54回annual Design Automation Conference(DAC)(2017年6月19-22日:AUSTIN, Texas)にて、Silicon LabsのCEO、Tyson Tuttle氏基調講演、“Accelerating the IoT”について。

【International Supercomputer Conference】

これも恒例、年2回開催のISC(International Supercomputer Conference) High Performance 2017(6月18-22日:Frankfurt, Germany)より、スーパーコン・トップ性能および顔ぶれのアップデートである。トップ性能の「TOP500」および省エネ性能「Green500」、それぞれのランキングの概要である。

◇2017年6月の「TOP500」-中国が9連覇 日本トップはJCAHPC「Oakforest-PACS」 (6月19日付け マイナビニュース)
→スーパーコンピュータの処理性能ランキング、「TOP500」の2017年6月版が発表された旨。LINPACKのベンチマークで以下の順位:
 1位 「Sunway TaihuLight」   (93.014PFLOPS/s、消費電力15.3MW)
  …神威・太湖之光。中国National Research Center of Parallel Computer Engineering & Technology(NRCPC)が開発し、National Supercomputing Center(Wuxi)に設置
 2位 「Tianhe-2」        (33.862PFLOPS、     17.8MW)
  …Milky Way-2/天河2号。中国National University of Defense Technology
 3位 「Piz Daint」       (19.590PFLOPS、      2.272MW)
  …スイスSwiss National Supercomputing Centre(CSCS)
 4位 「Titan」         (17.590PFLOPS、      8.2MW)
  …米オークリッジ国立研究所(ORNL)
 5位 「Sequoia」        (17.173PFLOPS、      7.9MW)
  …米ローレンスリバモア国立研究所(LLNL)
 6位 「Cori」          (14.015PFLOPS、      3.94MW)
  …米国立エネルギー研究科学計算センター(NERSC)
 7位 「Oakforest-PACS」     (13.554PFlops、      2.72MW)
  …東京大学と筑波大学が協力して進めてきた最先端共同HPC基盤施設(JCAHPC)のスパコン
 8位 「京」           (10.510PFlops、     12.66MW)
  …理化学研究所

◇省エネスパコン、4位までが日本勢、首位は僅差で「TSUBAME3.0」 (6月19日付け 日経テクノロジーonline)
→スーパーコンピュータの省エネ性能を競うランキング「Green500」の最新版で4位までを日本勢が占めた旨。
 1位 「TSUBAME3.0」                14.110GFLOPS/W
  …東京工業大学の新型スパコン
 2位 「kukai」                   14.045GFLOPS/W
  …ヤフーのシステム。開発はPEZYグループのExascaler
 3位 「AIST Artificial Intelligence Cloud(AAIC)」 12.68 GFLOPS/W
  …NECが手掛けた産業技術総合研究所 人工知能研究センターのシステム
 4位 「RAIDEN GPUシステム」            10.6 GFLOPS/W
  …理化学研究所の革新知能統合研究センター(AIP)に富士通が納入

個別の関連の動きとして、以下の通りである。

◇Cray Moves to Lasso 'Big Data Deluge' -Like Knife Through Butter (6月20日付け EE Times)
→Cray社が火曜20日、ISC(International Supercomputer Conference) High Performance 2017(6月18-22日:Frankfurt, Germany)にて、同社Intel Xeon搭載high-end Urika-XCスーパーコンピュータ向け無料のdownloadable analyticsソフトウェア一式を打ち上げ、該一式は、open-source analytics, deep learningおよびartificial intelligence(AI)を用いて"Big Dataの大洪水をいとも簡単に切り開く"旨。

◇東工大のスパコン「ツバメ」、省エネ性能で世界一 (6月21日付け 日経産業)
→東京工業大学が今年8月の稼働を予定するスーパーコンピュータ「TSUBAME3.0」が、スパコンの省エネ性能を競う国際ランキング「グリーン500」で世界一を獲得、ドイツで開催中の国際会議で公表された旨。2〜4位にはヤフージャパン、産業技術総合研究所、理化学研究所のスパコンが入り、日本勢が上位を独占した旨。TSUBAME3.0は米エヌビディア製の最新型のGPU(画像処理半導体)を使用。外気に近い温度の水や空気を利用した冷却方式も採用し、消費電力を大幅に抑えた旨。

◇Intel Banks on Artificial Intelligence-Invests in CognitiveScale, AEye, Element AI (6月23日付け EE Times)
→昨年Intel社は、neural-networkハードウェアメーカー、Nervanaを買収、Nervanaの半導体を作ってIntel自身のon-processor deep-learningおよびartificial-intelligence(AI) capabilitiesと統合の旨。今月、Intel Capitalは、AI startups、CognitiveScale, Aeye社およびElement AIに出資の旨。今週のISC High Performance conferenceでは、Intel fellow、Pradeep Dubey氏が Intelの伸び行くAI portfolioの全体像をプレゼンの旨。

◇富士通、台湾からスパコン受注−最高性能システム構築 (6月21日付け 日刊工業)
→富士通と台湾富士通(台北市)は20日、台湾ナショナルスーパーコンピュータセンター(NCHC)から、スーパーコンピュータの新システムを受注したと発表、富士通製パソコンサーバの次期モデルなど715台のサーバで構成するクラスター型システムの旨。システム全体での理論演算性能は3.48ペタフロップス(ペタは1000兆、フロップスは浮動小数点演算性能)以上と、台湾で最高性能になる見通し。2018年5月に本格稼働する予定。

【Boschの半導体新工場】

自動車部品世界最大手、ドイツのBoschが、Dresden, Germanyでの300-mmウェーハfab建設計画を以下の通り発表している。自動運転車用MEMSセンサが主軸となりそうであるが、車載とあって足の長い線表という感じ方がある。

◇Bosch to Build $1.1 Billion Chip Plant for Self-Driving Cars-Bosch plans chip plant for IoT in Germany (6月19日付け Bloomberg)
→Robert Bosch GmbHが、自動運転車, smart citiesおよびsmart homesで用いられる半導体に向けた工場のDresden, Germanyでの建設に$1.1 billionを充てる旨。

◇Bosch is building a $1.1 billion self-driving and smart city chip plant (6月19日付け TechCrunch)

◇独ボッシュが半導体新工場、1240億円投資、センサ生産 (6月19日付け 日経 電子版)
→自動車部品世界最大手、独ボッシュが19日、センサとして使う半導体の300-mm新工場をドイツ東部のドレスデンに建設すると発表、投資額は約10億ユーロ(約1240億円)で、2021年に生産を始める旨。あらゆるモノがネットにつながる「IoT」の普及で、傾きや動きを計測するセンサの需要が高まることに対応する旨。ボッシュの単独の投資としては過去最大。生産するのはMEMS(微小電子機械システム)と呼ばれる微細センサで、スマートフォンの向きの変化や自動車の旋回などを測定するのに使用。同社のセンサは世界のスマホの4分の3に搭載されている旨。

◇Bosch Plans $1.1 Billion Fab in Dresden (6月20日付け EE Times)
→Robert Bosch GmbH(Stuttgart, Germany)が月曜19日、約1 billion euro(約$1.1 billion)を充てて、Dresden, Germanyに300-mmウェーハfabを建設、1週間以上駆け巡っているドイツのメディア報道を確認の旨。該fabの建設は2019年末までに完了、製造operationsが2021年に始まる予想の旨。

◇独ボッシュ、新工場に1240億円 (6月23日付け 日経産業)
→自動車部品世界最大手、独ボッシュが、センサとして使う半導体の新工場をドイツ東部のドレスデンに建設、投資額は約10億ユーロ(約1240億円)、2021年に生産を始める旨。この分野で世界大手であるボッシュは、あらゆるモノがネットにつながる「IoT」の普及で傾きや動きを計測するセンサの需要が高まることに対応する旨。

【2016年業界データ】

まずは、ディストリビュータ業界トップの顔ぶれの確認である。

◇25 Global Electronics Distributors Win Revenue Wresting Match (6月19日付け EE Times/Slideshow)
→Top 25 Global Franchised Electronics Distributorsから2016年売上げトップ6:
 Avnet(Phoenix, AZ)            $25.17 billion
 Arrow Electronics(Melville, NY)        $23.83 billion
 WPG Holdings(Chatsworth, CA)       $16.66 billion
 Future Electronics(Point Claire, QC)      $5.2 billion
 WT Microelectronics(New Taipei, Taiwan)    $4.47 billion
 Macnica Fuji Electronics(Yokohama, Japan)   $3.99 billion

着実な伸びが身上という性格の産業用半導体であるが、昨年も引き続く内容となっている。

◇Global industrial semiconductor revenues rise 4% in 2016, says IHS (6月22日付け DIGITIMES)
→IHS Markit発。2016年の産業用半導体売上げが、3.8%増の$43.5 billion。産業用electronics機器需要は広範囲に及び、商用および軍用avionics、ディジタルsignage、ネットワークビデオ監視、HVAC(Heating, Ventilation, and Air Conditioning)、スマートmeters, traction, PV inverters, LED照明およびいろいろな医療用electronicsが引き続き伸びている旨。

Gartner社が、IT市場という括りで初めて売上げトップ100ランキングを表わしている。牽引するAppleそしてSamsung、はたまた売上額に注目している。

◇Gartner: Apple rules IT market (6月23日付け EE Times India)
→Gartner社が、Gartner Tech Growth & Innovation Conference(2017年6月19-21日:Huntington Beach, CA)にてリリースした"Market Insight: Gartner Global Top 100 IT Vendors in 2016"発。IT(通信サービス分野を除く)およびコンポーネント市場分野関連の各社売上げに基づき、世界トップ100ランキングを発行するのは初めての旨。
Appleが$218 billion(Rupee 14.05 lakh crore)以上で首位、2位のSamsung Vendor Groupの$139 billionを約$79 billion上回った旨。3-5位は、Google、Microsoft、IBMの順。

【また1つの節目】

IC Insightsより、Handsetsすなわち携帯電話用のIC販売高がパソコン用のIC販売高を今年は上回るという見方が以下の通り表わされている。十分体感している時代の流れの中、また1つの節目を感じさせている。

◇Cellphone IC sales will top total personal computing in 2017 (6月20日付け ELECTROIQ)
→IC Insightsの2017 IC Market Drivers Report、更新版発。

◇Handset IC sales to top total personal computing in 2017, says IC Insights (6月20日付け DIGITIMES)
→IC Insights発。2017年のhandsets用IC販売高が16%増の$84.4 billionの見通し、一方、desktopおよびnotebook PCs, タブレットおよびthin-client Internet-centric unitsなどpersonal computingシステム用IC市場が今年今や9%増の$80.1 billionと予測される旨。

◇Demand for ICs for handsets set to beat PCs-IC Insights: 2017 phone chip sales to top PC ICs (6月21日付け Yonhap News Agency (South Korea))
→IC Insightsは、2017年のスマートフォン出荷が5%増えるのに対し、PC出荷は3%減る、としている旨。

◇Handsets Expected to be Largest Market for ICs (6月22日付け EE Times)


≪グローバル雑学王−468≫

米国、欧州そして中東と、日々日替わりのように激しい世界の変化をスマホあるいはテレビのニュースで目にするなか、

『日本人として知っておきたい「世界激変」の行方』
 (中西 輝政 著:PHP新書 1076) …2017年2月21日 第1版第4刷

を読み進めてきたが、今回で終えることになる。いまこそ突き抜けた歴史的思考をもつこと、そして「海洋国家・日本」の存在を確保すべく、自主性、自力をつけるべきという、これからの日本、特に2030年に向けてどうあるべきか、どうすべきか、という著者の主張を、日々の世界の激動の渦中、1つとして噛みしめている。


第6章−2 これから十年、日本はどうすべきか

◆日本は幕末の長岡藩の失敗に学べ
・長岡藩の失敗の根幹は、「重武装の局外中立」路線の選択に
 →局外中立…交戦国のどちらとも関係をもたず、戦争に影響を与える行動をしない立場
・日本がこれから自力をつけることは、きわめて大切なこと
 →だが、それがどのくらいの実力のものかは、つねに冷静に見ておかねばならない
・日本はすでに2つの過ちにより、二周遅れの国に
 →一つは平和憲法論
 →もう一つは、世界の変化にまったく対応できていないこと
・自前の戦略や気概を持たなければ、いくら核を持って憲法改正しても、自分から事態を切り拓いていく力はない
 →「一極として立つ」という日本の選択が、非常に現実味を帯びて迫られている
 →重要なのは、大きな世界の動きに対応する柔軟性
・まずは「海洋国家・日本」として生存の基礎を確保すべく、軍事力、情報力などの自衛のための自力をつける
 →日本の生存こそが最優先課題である――ここまでの覚悟を、2030年に向けて、日本は持たなければならない

◆「大きな底流」を見つけるためのシナリオ考察
・われわれは「大きな底流を早く見つける」ために、いくつものシナリオを考えておかなくては
 →今後、アメリカが中国になびいていくシナリオも十分に想定可能
 →「中国が共産党体制を清算し、本格的な民主化が始まったら」というシナリオを考えてみるのも参考に

◆大事なのはアメリカに「位負け」しないこと
・今後の残された10年をどうするか
 →いまならまだ打つ手。キーワードは「プラグマティズム(実用主義)」
 →まず、新しいパートナーを増やすこと
 →自立こそ、これからの日本のあらゆる局面でのキーワードとすべきもの
・日本が学ぶべきは、アメリカを最初からあてにせず、本当に大事なときだけアメリカの力を利用するイギリスのあり方
 →日本も価値観に関わる精神的・理念的な点で、いつまでもアメリカへのコンプレックスから「位負け」していてはならない
 →日米同盟から少しずつ自助努力の方向に力点を移していく選択を、なぜ、それほど忌避しようとするのか

◆いまこそ突き抜けた歴史的思考を持て
・日本の針路をめぐる戦いの最大の激戦場は「国内」だということ
 →「戦後」への執着と「冷戦後(のアメリカ一極時代)」への固執による日本の二周遅れを、いかに正すか
・多くの日本人が情報を見るときに、間違えやすい3点
 →1)「新しい見方か、古い見方か」にこだわること
  2)「多くの人がそういっている」ということだけを意味もなく根拠に
  3)「わが国にとって都合が悪いことは口にするな」
   …集団主義的な強いタブー感覚に発する自主規制
・長い苦難の時代を乗り越えてきた西欧のリーダーは、歴史的思考を外交に生かすことに長けている
 →歴史的思考が、これほどまでに重要な時期はない


〈あとがきにかえて〉
崩れる世界秩序――すべては湾岸戦争から始まった

・「ついに、そのときがきたのだ」、そんな思いでいっぱい
 →世界は激しく音を立てて崩れ、明らかにこれまでの秩序は後戻りすることのない大変動を始めた
・2016年6月にはイギリスの国民投票によるEUからの離脱が現実のものに
 →ヨーロッパ統合という冷戦後の世界の一大潮流が決定的な挫折を蒙った
 →何百年と繰り返されてきた欧州文明の本質に関わる「歴史の構図」
・アメリカはそれまでの「唯一の超大国」路線に基づくグローバルな覇権戦略から一転して、孤立主義への歴史的な撤退を進めてきている
 →ある種の「歴史の必然」ともいえる流れ
・あの湾岸戦争が今日の世界情勢の大きな混迷の原因
 →アメリカによる覇権創出のための戦争
 →この戦争での華々しい勝利が「アメリカの一極体制」をもたらした
・正義の独占は多くの挑戦者を生むから
 ――本質的に壊れやすい秩序システムに
 →その後の米一極覇権の世界では急速に各地に紛争が広がり、次から次へと世界の秩序を支える枠組みが崩れていく流れが加速
 →いまやわれわれの眼前に、もはや誰にでもわかる大きな危機が到来している
 →さすがにこの1-2年、アメリカでは冷戦後世界のこの劇的な秩序崩壊について、率直な反省と総括のための研究や評論が現れてきている
・私(著者)がいまや現実となった、この「冷戦後世界の暗転シナリオ」に悲観的な予測と警鐘を鳴らし続けてきたのには、次の3つの理由
 →第一:湾岸戦争後に広がった野放図なグローバリズムと独善的な「世界新秩序」論への批判と警鐘の必要があった
 →第二:「謙虚で慎重な現実主義」に則って、少しでも「ましな世界」をつくろうとすべきこと、そしてその可能性が十分にあること
 →第三:国としての自立、すなわち自らの運命を自ら切り拓こうとしない日本と日本人に、いわば「日本よ、目覚めよ」という必死の呼びかけとして声を発してきた
・最後に、より長い射程で未来を見つめると、いま世界はじつはむしろ「よい方向に向かって動いている」
 →もっと安定的で公平な、いわば「明るい多極化世界」というもの
 →2040年代には必ず訪れるであろう「よりよい世界」

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