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中国によるMicron買収提案の報道、大胆な動きへの様々な反応

半導体業界のM&A(mergers and acquisitions:合併と買収)の進行にここ数ヶ月注目し続けている感じ方があるが、これに輪をかけるように、しかも本当かと思うような大胆な内容の買収提案が報道され、世界の半導体および関連業界に敏感な波紋を呼んでいる。米Wall Street Journalが、中国国有企業のTsinghua Unigroup(紫光集団)が、米国のMicron Technologyの総額230億ドル(約2兆8430億円)での買収を提案と報じたのが発端の模様で、これを受けTsinghuaのChairmanもMicronへの関心を示したとなっている。米国はもとより、韓国、台湾はじめ直後の市場の受け取りを以下追っている。

≪敏感な波紋の広がり≫

発端とされる米Wall Street Journalから本件の記事が、以下の通り目に入ってきており、即座に各紙が続いている。

◇State-Owned Chinese Chip Maker Tsinghua Unigroup Makes $23 Billion Bid for Micron-If it goes through, deal would be biggest Chinese takeover of a U.S. company (7月14日付け The Wall Street Journal)

◇Chinese chipmaker Tsinghua prepares $23B bid for Micron Technology (7月14日付け ELECTROIQ)

◇Tsinghua Makes $23B Bid For Micron-In what would be the largest takeover of a U.S. company by a Chinese firm, China's state-owned Tsinghua has reportedly offered to buy memory giant Micron Technology for $23 billion. (7月14日付け Semiconductor Engineering)

早々、米国政府が黙ってはいないとの表し方が見られている。

◇China Bids $23B for Micron-Beijing could contribute from $20B fund  (7月13日付け EE Times)
→中国を半導体最前線にもっていく大胆な動き、Tsinghua UnigroupがMicron Technology買収に$23 billion入札の動きの旨。該取引は中国半導体業界の最大の戦略的な穴の1つを埋めることになるが、全面的に米国ホワイトハウスへの政治的問題を引き起こす見込みの旨。

◇China's Tsinghua Unigroup Plans $23 Billion Offer for Micron-China-owned firm reportedly will offer $23B for U.S. chipmaker (7月14日付け Bloomberg)
→中国国有企業、Tsinghua Unigroupが、Micron Technology(Idaho)買収に向けて$23 billionで入札予定の旨。中国の最大海外企業買収となるこのような取引には、米国で財務省のCommittee on Foreign Investmentによる精査が入る旨。

TsinghuaのChairman、Zhao Weiguo(趙偉国)氏が、本報道を受けてMicronへの関心を示しているとのことである。

◇Tsinghua Unigroup signals interest in Micron after WSJ report (7月13日付け Bloomberg)
→中国の半導体設計メーカー、Tsinghua Unigroupが米国・Micron Technology社への総額230億ドル(約2兆8430億円)での買収を提案とのWall Street Journalの報道を受けて、TsinghuaのChairman、Zhao Weiguo(趙偉国)氏はMicronに関心があることを示唆した旨。

この報道を受けた世界の市場の敏感な反応であるが、まずはメモリ市場への見方である。

◇China's Micron management could spark chip price war-Experts: Battle over chip prices could result from acquisition of Micron (7月14日付け Reuters)
→Micron Technologyが中国が支援するメーカーに買収されると、メモリ半導体業界で過剰供給および価格競合の高まりが生じる可能性の旨。

Micronが標的になった経緯の分析である。

◇How Micron Became a Takeover Target-A recent setback reined in Micron stock that had been surging, inviting an offer from Tsinghua (7月14日付け The Wall Street Journal)

肝心のMicronからは、該買収提案を受け取っていないとの公式反応である。

◇中国の清華集団から買収提案受け取っていない=米マイクロン広報 (7月14日付け ロイター)
→米半導体大手、マイクロン・テクノロジー の広報担当者は、中国の清華集団から買収提案を受け取っていないと明らかにした旨。これに先立ち、米ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)紙は関係筋の話として、中国政府系プライベートエクイティ企業の清華紫光集団がマイクロンに対し、230億ドルでの買収を提案したと伝えていた旨。

TsinghuaのChairman、Zhao Weiguo(趙偉国)氏の人となりの一端が表わされている。

◇Sheepherder Turned Billionaire Eyes Micron to Build Chip Empire -Billionaire with humble beginnings leads firm pursuing $23B Micron bid (7月15日付け Bloomberg)
→中国でかつて羊飼いとして働いたZhao Weiguo(趙偉国)氏が、今では半導体メーカー、Micron Technology買収に向けて$23 billionで入札する会社を率いている旨。Tsinghua Unigroupでは、cloud computing, 半導体およびモバイルなどの事業活動を行っており、Zhao氏は、教育に$100 million以上を寄付、自分の成功のカギとしている旨。

Tsinghua Unigroupはそもそも、1988年に清華大学の支援を受けて創業、2013年にSpreadtrum Communications並びにRDA Microelectronicsというモバイル用半導体メーカー2社を買収して以降、中国最大手のチップ設計メーカーとなっているとのこと。また、昨年にはIntelが同社へ15億ドルの投資を行い、株式の20%を取得。さらに今年5月にはHP(Hewlett-Packard)の中国にあるネットワーク機器子会社の経営権を取得しているとのことである。
Tsinghua傘下のRDA Microelectronicsによる台湾のIC design house買収が現在下記の通り進められている。

◇RDA Microelectronics looking to acquire S2-Tek, says paper (7月15日付け DIGITIMES)
→中国語・Economic Daily News(EDN)発。中国・Tsinghua Unigroup(紫光集団)傘下のRDA Microelectronicsが、Sunplus TechnologyおよびSilicon Integrated Systems(SiS)が設立したTV SoC合弁、S2-Tek(台湾)を買収する計画、該取引は早くて2015年第三四半期に完了する見込み、順調に進めば、Tsinghua Unigroupの最初の台湾IC design house買収になると特に言及の旨。

台湾・DIGITIMESの本件分析の論調が次の通りである。

◇Digitimes Research: Tsinghua Unigroup acquisition of Micron faces difficulties, but is a must for China for further development (7月15日付け DIGITIMES)
→7月14日付けWall Street Journal報道によると、中国のTsinghua UnigroupがMicron Technology(米国)買収に$23 billion($21/株相当)を充てる計画、この額は中国政府のChina National Semiconductor Industry Investment FundのCNY120 billion($19.32 billion)を上回るものである旨。該買収が実現するには多くの関門があり、完了する見込みは僅かしかない旨。・・・
Tsinghua UnigroupがMicron買収に失敗すれば、MicronとInotera Memoriesとの間のようにMicronとの連携を形成しようという可能性はあるが、このような展開が起きるかどうか、さらに注目していく必要がある旨。

メモリ半導体をリードする韓国では、最も穏やかではなく以下の反応である。

◇中国「米マイクロン買収」…韓国半導体が緊張 (7月15日付け 韓国・中央日報)
→中国国営企業の紫光集団がメモリ半導体世界3位の米マイクロンテクノロジーの買収を提案、買収が実現すれば、世界1、2位のメモリ半導体企業であるサムスン電子とSKハイニックスに相当な打撃を与えると懸念される旨。この影響で14日、両社の株価はそれぞれ3.24%安、6.66%安となった旨。ウォールストリートジャーナルなど海外メディアによると、紫光集団はマイクロンを230億ドルで買収すると提案、1株あたりの価格は21ドルで、13日の終値に比べ19.3%高い旨。

日経の分析、次の通りである。

◇中国半導体、脱・外資狙う、米マイクロンに買収提案 (7月15日付け 日経 電子版)
→紫光の幹部によると、現在は買収をマイクロン側に非公式に打診している段階の旨。近く中国の経済政策を取り仕切る国家発展改革委員会(発改委)に買収手続き入りを正式に報告する旨。
紫光は中国の名門大・清華大学が1988年に設立した投資会社が前身、大学自身が運営予算を稼ぐべきだとする当時の政策により設立された旨。理工系に強い清華大の特長を生かし、主にハイテク分野に投資してきた旨。

台湾・DIGITIMESの論調が続いている。

◇Commentary: Why Micron Technology is being targeted for acquisition (7月16日付け DIGITIMES)
→中国の国有Tsinghua Unigroupが、DRAMおよびNANDフラッシュ半導体大手サプライヤ、Micron Technology(米国)の買収に興味を示しており、いくつかの筋がこれではあり得ないとしている$23 billionの取引の旨。
Micron, Samsung ElectronicsそしてSK HynixがDRAMおよびNANDフラッシュ半導体ベンダーの世界トップ3であるが、なぜMicronが中国の会社による買収の標的になるのか?Micronは事実上、DRAM技術、財務構造および生産コストに関する限り該トップ3プレーヤーの間では最も弱い旨。・・・
この買収取引計画は、Micronのboard of directorsそして株主、そしてさらに米国政府の承認を得る必要がある旨。Committee on Foreign Investment in the United States(CFIUS)は、Micronが米国で唯一のDRAM半導体メーカーということで中国の事業継承には反対する可能性の旨。

韓国でも然り、実現性は薄いものの本報道のインパクトの大きさというものが強く表わされている。

◇【社説】中国の技術追撃、半導体も安心できない=韓国 (7月16日付け 韓国・中央日報)
→中国紫光集団がメモリ半導体メーカー世界2位のマイクロン買収に乗り出した。1株当たり21ドル、総額230億ドルで会社を買い取るという提案をしたと外信は伝えている。・・・
成功の可能性は事実大きくないように見える。市場では紫光集団が提示した価格が現在の株価よりそれほど高くなく、経営陣と株主の支持は受けにくいと分析する。米国政府が経済安保上の問題で認めないだろうとの見方も有力だ。・・・
マイクロン買収企図に見るように韓国が最もリードしている産業までも脅威を感じることになった。抜け出す道は絶え間ない研究開発と革新しかない。持っている技術を守り人材流出を防ぐ案も考えなければならない。産業競争力を守るために政府と企業がともに悩み協力する時だ。

本件を含めた現状の半導体業界M&Aの嵐に対して、台湾が取り残される不安が地元メーカーにより表わされている。中国における投資拡大を台湾政府に求め続けている背景がある。

◇Taiwan Chipmakers Leery of M&A Wave -Consolidation may lead to marginalization (7月17日付け EE Times)
→台湾の半導体メーカーが、半導体業界で続いているグローバルmerger and acquisition(M&A)の波で自分たちが立ち往生に置かれる不安があるとしている旨。台湾の半導体executivesによると、最近発表されているIntelとAltera、NXPとFreescale、並びにTsinghua UnigroupとMicronのM&A計画は、大手プレーヤーが半導体業界が成熟してきて持続性強化を狙っている兆候であり、自分たちは中国での投資制約を緩和するよう台湾政府に求めている旨。


≪市場実態PickUp≫

【SEMICON West 2015】

恒例のSEMICON Westが開催され(2015年7月14日〜16日:Moscone Center, San Francisco)、まずは製造装置最大手、Applied MaterialsのCEO、Gary Dickerson氏のプレゼン概要である。

◇Applied Materials Steers Solo Course on Chip Tools-Firm bets its new production systems will grab market share-Applied Materials aims to gain market share with new production systems (7月13日付け The Wall Street Journal)
→Applied MaterialsのCEO、Gary Dickerson氏。同社の戦略は、同社の生産技術を信頼して半導体メーカーのニーズに適合することである旨。同社のTokyo Electronとの合併計画は4月にだめになった旨。Applied Materialsは、特にetching技術において半導体生産者の速度およびdata-storage capacityを上げるニーズに同社toolsが対応するよう意図している旨。

◇Great future ahead, says Applied Materials’ Dickerson (7月13日付け ELECTROIQ)
→月曜13日のアナリストmeetingにて、Applied MaterialsのCEO、Gary Dickerson氏。

スマホの飽和感、半導体業界のM&Aが覆っている市場の現状のなか、今後のいろいろな切り口での見方である。

◇Strong dollar to create economic uncertainties in global market (7月13日付け ELECTROIQ)
→月曜13日午後のSEMI/Gartner Market Symposiumでのプレゼンは、Uncertainties Aheadで括られる可能性の旨。

◇SEMI forecasts three years of growth in chip equipment spending (7月14日付け ELECTROIQ)
→SEMIが今回リリース、SEMI Capital Equipment Forecastのmid-year版。
世界半導体製造装置販売高について3年連続で伸びる見通し:
 2014年       2015年       2016年
 $37.5 billion   $40.2 billion   $41.8 billion
           7%増        4%増

・≪グラフ≫ SEMIの2015年mid-year予測一覧:装置の種類別、世界地域別
http://electroiq.com/wp-content/uploads/2015/07/SEMI-Press-Conference-Highlights-Market-Forecast-Economic-Conditions-Figure-2-1024x611.jpg

◇PC, Mobile Slump Hits Chips-Chipmakers to see weak sales growth, Gartner says (7月15日付け EE Times)
→Gartnerのアナリスト、Bob Johnson氏。今年の半導体販売高は2.2%増止まり、来年はほぼフラット1.3%増と見る旨。伸びが4-5%に戻すのは2017-2019年、主に従来の市場での控え目な増加を見ている旨。

今回のSEMICON Westを見渡しての関心事項が挙げられている。

◇10 Views of Semicon West (7月17日付け EE Times/Slideshow)
→今回の場で、半導体メーカーをMoore's Lawの道筋から押しやる物理法則を補う方法として半導体stacksに焦点が当てられた旨。以下の内容項目:
 Roadmap being drawn for chip stacks
 Qualcomm calls for shared data mining
 AMD takes a victory lap …Fiji 2.5-D package of graphics and DRAM
 Many litho options lumber forward
 Transistor stacking is crucial but difficult
 Hope is cooking in the lab
 Can IoT drive the industry

【GlobalfoundriesのFD-SOI】

Globalfoundriesが、業界初、22nm FD-SOI(fully depleted silicon-on-insulator)技術プラットフォーム、“22FDX”を打ち上げている。このプラットフォームによると、ファウンドリーFinFET対応よりdie sizeが20%小さく、28-nmよりマスク数が10%少なく、並びにimmersion lithography層数が約50%少なくなるとしている。以下の各紙反応が見られている。

◇Globalfoundries Launches Own FDSOI Processes (7月13日付け EE Times)

◇Globalfoundries' CEO: Why FD-SOI and Why Now (7月13日付け EE Times/Blog)
→More-than-Mooreがニッチではなく今や主流、とGlobalfoundriesのCEO、Sanjay Jha氏。

◇GLOBALFOUNDRIES launches industry's first 22nm FD-SOI technology platform (7月13日付け ELECTROIQ)
→GLOBALFOUNDRIESが、次世代connected機器の超低電力要求に適合するよう特に開発された新しい半導体技術を打ち上げ、該“22FDX”プラットフォームからは、28-nm planar技術相当のコストでFinFETのような性能およびエネルギー効率が得られ、急速に進化する主流モバイル、Internet-of-Things(IoT), RF connectivityおよびネットワーキング市場に向けた最適ソリューションを供給する旨。

◇GloFo takes FD-SOI to the 22nm node-GlobalFoundries touts FDX platform with 22nm FD-SOI process (7月13日付け New Electronics)

◇Globalfoundries rolls out 22nm FD-SOI technology (7月14日付け DIGITIMES)

◇High Customer Interest in FD-SOI, GloFo Says (7月16日付け EE Times)
→Semicon West tradeshowの場にて、Globalfoundries(Santa Clara, Calif.)のグローバル設計ソリューション、vice president、Subramani Kengeri氏。同社が最近発表、2017年半ばまでにhigh-volumeの可能性がある22-nm fully depleted silicon-on-insulator(FD-SOI)製造プラットフォームへの顧客の関心が異常なほど高い旨。

【厳しい先読みの四半期業績】

4〜6月期の業績発表から、まずはインテル。2年ぶりの減収減益となっており、パソコンの低迷を今年度は埋めきれないニュアンスの内容である。

◇Intel Hits Q2 Target Despite PC Slump (7月15日付け EE Times)
→「第二四半期の業績結果は、データセンター、メモリおよびIoTの伸びがoperating profitの70%以上を占めて骨の折れるPC市場をカバーし、事業の変容を示している」(IntelのCEO、Brian Krzanich氏)旨。

◇インテル売上高1%減、今期下方修正、パソコン向け苦戦 (7月17日付け 日経産業)
→米インテルの4〜6月期の売上高が前年同期比5%減の$13.195 billion(約1兆6300億円)、純利益が同3%減の$2.76 billionで2年ぶりの減収減益の旨。2015年12月期の売上高が前期に比べ約1%減少しそうだと発表、従来の予想は「ほぼ横ばい」であった旨。PC需要の不振を受けて、インテルは2015年の設備投資額を$7.7 billion前後と従来予想から$1 billion削減した旨。

TSMCについて、4〜6月期は同社目標は満たしたものの本来なら盛り上がる先行きの市場ながら下方のトーンの強い以下の見方となっている。

◇TSMC Trims 2015 Outlook-Foundry has excess inventory, maintains capex target (7月16日付け EE Times)
→TSMCのChairman、Morris Chang氏。顧客が今年はじめに積み上がった在庫を消化しており、残る今年の見通しが以前の予想より悪くなっている旨。

◇Lower Smartphone Demand Drops Taiwan Semiconductor Quarterly Profit-TSMC reports slowdown in profit growth during Q2 (7月16日付け IndustryWeek/Agence France-Presse)
→TSMCの第二四半期net incomeが前年同期比33%増、第一四半期は同65%増であった旨。中国はじめ市場でのスマートフォン需要軟化および強いドルが、伸びの低迷を招いている、とco-CEOのMark Liu氏。

◇TSMC 2Q15 profits rise despite revenue drop (7月16日付け DIGITIMES)
→TSMCの2015年第二四半期連結売上げがNT$205.44 billion($6.60 billion)、前四半期比7.5%減、しかし同社目標範囲NT$204-207 billionには入っている旨。該四半期のnet profitsがNT$79.42 billion($2.55 billion)、前四半期比0.5%増、同社史上2番目に高い四半期水準の旨。

【スーパーコン性能トップ500】

これも恒例、International Supercomputing Conference(ISC-2015)(7月12-16日:Frankfurt, Germany)が開催され、スーパーコンの大方を動かしていると言えるIntelからのプレゼン概要である。

◇Intel Showcases Its Supercomputing Future at ISC-Supercomputer ecosystem displayed (7月13日付け EE Times/Slideshow)
→Intelが、International Supercomputer Conference 2015(ISC:7月12-16日:Frankfurt, Germany)にて、プロセッサからinterconnection fabrics、ストレージおよびソフトウェアまで同社のtop-to-bottom integrationを披露、また、すべての価格/性能水準でhigh-performance computing(HPC)を供給するよう、同社の次世代72-core Xeon Phi、拡大するCenters-of-ExcellenceおよびHewlett-Packard(HP)とのアライアンスについてさらに詳細を示す旨。

米国とで年に2回発表される性能ランキング・トップ500と理解しているが、今回のランキング発表を受けた記事3点を見い出している。

◇中国のスパコン天河2号が演算速度世界5連覇 (7月14日付け 新華網日本語)
→ドイツ・フランクフルトで13日開かれたスーパーコンピュータの国際会議で今年上半期の性能ランキング・トップ500が発表され、中国の「天河2号」が演算速度毎秒3京(京は1兆の1万倍)3860兆回で第1位となり、2013年上半期からの5連覇を果たした旨。第2位は米国の「タイタン」で、日本の「京」は第4位だった旨。

◇Top 10 Supercomputers in View-Intel powers 86 percent of the Top500 (7月16日付け EE Times/Slideshow)
→International Supercomputing Conference(ISC-2015)(7月12-16日:Frankfurt, Germany)にて今週始め発表された世界トップ500スーパーコンピュータについて。今回のトップ10には新顔、King Abdullah University of Science and Technology(KAUST:Saudi Arabia)の第2世代Shaeenスーパーコンピュータであり、196,608個のIntel Xeonコアを使用、5.5 petaflops(quadrillion operations per second)の性能で第7位の旨。

◇韓国、スパコン性能別ランキング14位に下落…日本は3位 (7月16日付け 韓国・中央日報)
→韓国科学技術情報研究院(KISTI)、15日発。ドイツ・フランクフルトで開かれた「国際スーパーコンピューティング会議(ISC)2015」で世界最高の性能を誇るスーパーコンピュータ「TOP500リスト」が公開された旨。スーパーコンピュータの性能別国家ランキングは、233台を保有している米国が1億6126万ギガフロップスで1位を記録、次いで37台を保有している中国が2位(4956万ギガフロップス)、39台を保有している日本が3位(3369万ギガフロップス)にそれぞれ入った旨。韓国は252万ギガフロップスで14位、これは昨年より2ランク落ちた順位の旨。

【10-nmへの取り組み】

先陣争いが注目される10-nmノードへの取り組みであるが、SamsungとTSMCの競い合いの現状である。

◇Competition over 10 nano system semiconductor getting fiercer -Production competition for next-gen 10nm chip heats up (7月13日付け MK.co.kr (South Korea))
→Samsung ElectronicsおよびTSMCが10-nm半導体に取り組んでいる旨。
Samsungはノンメモリベースシステム半導体領域への参入は遅い方であったが、14-nm製品の生産で1月にTSMCを凌いだ旨。TSMCは10-nm半導体生産に$1 billion投資の旨。

最先端を引っ張って予告通り実現してきているIntelであるが、10-nmについて先延ばしが以下の通り確認されている。Moore's Lawの定義づけの見直しが取り沙汰されているが、今後とも注目を要するところである。

◇Intel Confirms Delay in 10nm Processors to 2017-Launch of Intel 10nm processor is postponed to 2nd half of 2017 (7月15日付け eWeek)
→2007年以降、Intelのプロセッサスケジュールは規則正しくチクタクと鳴り響いていたが、変わろうとしている旨。IntelのCEO、Brian Krzanich氏によると、同社は3つ目の14-nmプロセッサ、"Kaby Lake"をロードマップに加え、10-nmプロセッサの時間軸を2017年後半に先延ばしする旨。

◇Keeping up with Moore's Law proves difficult for Intel-For the last 40 years, Moore's Law predicted that processors could double in power every two years. Intel acknowledges that it's on more of a two-and-a-half-year cycle. -Moore's Law may need its timetable tweaked (7月16日付け CNET)
→Moore's Lawはプロセッサ能力が2年毎倍増と予測しているが、Intelはさらに6ヶ月かかるとしている旨。

◇Moore's Law Is Showing Its Age-The prediction about squeezing transistors onto silicon has been revised again. (7月16日付け The Wall Street Journal)


≪グローバル雑学王−367≫

新たな東西冷戦構造を見ていく後半はロシアを中心に、欧米から迫られる結果としてのアジアへの接近、そして日本との関係を、

『「逆さ地図」で読み解く世界情勢の本質』
 (松本 利秋 著:SB新書 301) …2015年5月25日 初版第1刷発行

より新たなパワーバランスとして見ていく。プーチン大統領在任期間中にぜひとも北方領土問題の打開を図ること。これは今まで本欄で読んだ中の数冊に共通する主張であるが、ここではエネルギー地政学の観点から見えてくる考え方が展開されている。


第一章 逆さ地図でわかる新たな東西冷戦の始まり =2分の2=

■追い詰められたロシアの突破口はアジアへの接近策

◇欧米とロシアのせめぎ合いになったウクライナ問題
・ヨーロッパ行政地図で一目瞭然
 →西欧式の政治システムと経済システムを持った国が凄まじい勢いでロシア国境に迫っている
・欧米側はポーランドやバルト三国をNATOあるいはEUに加盟させ、欧米の勢力圏を史上かつてない範囲にまで東方に拡大
・ロシアにとってのウクライナ問題
 →過去20年間延々と続いてきた欧米とロシアの水面下でのせめぎ合いが大きく浮上、絶対に譲れない局面に

◇中国に接近するロシア
・1990年代に起こったバルト三国の民主化とNATO加盟
 →続く2000年代のグルジア(現ジョージア)、ウクライナ、キルギスなどの民主化
・これに対するロシアの対抗策
 →中長期的には中国と接近、中央アジアやインド、パキスタン、イランなど周辺諸国を経済的に取り込もうとする戦略

◇石油と天然ガスに依存するロシア経済
・良くないロシアの内実
 →主な原因は腐敗と国家資本主義体制の経済状況が足かせ
・現在ではロシアの輸出の75%は石油と天然ガスで占められているという極めて歪な状況
 →国際競争力がなく、商店で売られている商品の大半が輸入品
 →技術革新も困難を極め投資も低迷
・ロシアのGDP成長率は、2013年には1.5%に達せず、2014年には2%
 →BRIC諸国の中では、他の三国からはるかに引き離され
・中露両国は結束してアメリカに対抗しようとする反面、アメリカの市場を必要としており、中央アジアでは互いに影響力を競っている
・ウクライナ問題の基本モチーフ
 →冷戦終結後のユーラシア大陸を巡る英米のシーパワーと、中露のランドパワーの覇権争い
 →アジアを巻き込んだ全地球的規模で展開

■エネルギー地政学で見えた新しい日露関係

◇近くて遠い国ロシア
・ロシアを中心に見る地図
 →まず見えてくるその国土の広さ
・ヨーロッパ・ロシアは、サンクトペテルブルクを中心にした地帯からウラル山脈まで
・北方領土の国後島から北海道の知床半島までは、直線距離でたった25km
・現在では、釧路からサハリンまで直行フェリーも
 →1990年当時は、飛行機を乗り継いで二泊三日
 →感じざるを得ない日本と北方領土の間に横たわる政治的距離

日露間に横たわる北方領土問題
・北方四島の領土問題は、この70年の間一般の日本人にはほとんど関心が持たれていない
 →大きな原因の1つは、戦争終結の日に対する我々の常識
 →1945年8月15日、ソ連政府は千島侵攻作戦の実施を命令、ソ連軍が日本領に侵攻、北方四島を次々に占領
・北方領土問題は、日本の戦後を引きずっている問題
・結論を先に言えば、日本は欧米側についてロシア制裁の行動を採るべき
・日本の戦略的立場
 →以下の地域の民主主義市場体制の国々(リムランドとヒンターランド)との積極的な政治・経済協力
  …「自由と繁栄の弧」−ヨーロッパから始まって、東欧、バルト三国、中央アジア・コーカサス、中東、インド、さらには東南アジアを通って北東アジアにつながる地域
  …「安保ダイヤモンド戦略」−日本、インド、オーストラリア、ハワイを結ぶ地域
 →欧米が採っている、ロシア・中国のランドパワーを、大陸に封鎖するという地政学の戦略とシンクロ
・欧米の戦略で封じ込められたロシアは、遅かれ早かれ窮地に
 →ロシアは必ず日本に近寄ってこざるを得なくなる

◇北朝鮮に接近するロシア
・2014年4月、ロシア連邦議会は旧ソ連時代の北朝鮮の債務約100億ドルの免除を決定
 →ロシア経済のアジアシフトが中国一辺倒ではなく、多様なチャンネルを構築しようとしていることを示唆
・ロシアの北朝鮮債務免除と、北朝鮮へのパイプライン敷設の先には、大量消費国日本が控えている

◇ロシアには日本の協力が必要だ
・日本のLNG(液化天然ガス)購入量は、世界のLNG出荷の約3分の1を占める
 →2013年は過去最高となる7兆6000億円
・一連の動きを見れば、日本とロシアが接近することは、互いにウィン・ウィンの関係
 →地政学的戦略論からすればロシアは、必然的に日本を頼らざるを得ない条件がそろっている
 →ロシア経済は、石油・天然ガスに依存し過ぎており、そのために価格が自分では決められない状況に
・ロシアは日本の協力が必要で不可欠なことは認識しているはず
 →シベリア開発、ロシアの製造業など生き残りをかけた長期戦略は、日本の協力なくして成り立たない
・ロシアは必ず日本に近寄ってこざるを得ない
 →日本はその時まで事態を冷静に見つつ、戦略の軸足を欧米側に置いて、自己の外交政策を貫いていくこと

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