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岐路に立つ半導体業界…Moore則、シリコンscaling

IBMが半導体fabs売却を検討という報道が続き、時代の一区切りという見方も出てくる一方、同社の研究所ではシリコンに代わりnanotubeトランジスタがいよいよ出番にという先行きが発信されている。今年は、IBMの例が特に軸と感じるが、Moore則、そしてシリコンscalingの限界、あるいは打開を巡る議論が、SEMICON West(7月8-10日:Moscone Center in San Francisco)を迎えるこのタイミングにまたぞろ噴出している。技術のみならずビジネスとしてのブレイクスルーを図る業界挙げての猛突進に、本当に期待である。

≪IBMの例≫

まさに"岐路に立つIBM"と題して、次の通り3回シリーズで表わされたばかりであり、業界をリードするIBMとしての立ち位置を問うている。

◇IBM at the Crossroads: Employees Talk -In the Shadow of Layoffs -Some decide to leave -Analysts' views (6月23日付け EE Times)
→IBMの半導体メーカーとしての今後について、アナリストおよび現在そして以前のIBM従業員に語りかける3部作シリーズの1回目。

◇IBM at the Crossroads: IBM Responds-An IBM executive responds-Power slumps, RF foundry rises-Addressing morale (6月24日付け EE Times)
→3部作の2回目として、IBMが、半導体メーカーとしての今後についてアナリストおよびIBM関係者からのコメントに反応の旨。

◇IBM at the Crossroads: How IBM Got to this Point-A proud legacy-What went wrong (6月25日付け EE Times)
→3部作の最後として、半導体リーダーの立ち位置にありながらIBMがfabs売却を検討する岐路に如何に至ったか、分析する旨。

IBMの地元紙でもIBMに留まらず業界の1つの区切りという見方が出ている。

◇IBM deal may mark end of era (7月2日付け Poughkeepsie Journal)
→IC Insights社(Scottsdale, Arizona)のsenior市場リサーチアナリスト、Rob Lineback氏。IBM社のmicrochips製造事業からの撤退は、IBMだけについてでなく業界の時代の終わりを示すものである旨。IBMは、自前の半導体を作る大手integrated computerメーカーの最後となる旨。

ただ区切りと言っても仕方なく、次の手当てが要ることになるが、IBMの研究所からは、5-nmノードがシリコンの終わり、それからはcarbon nanotube-ベーストランジスタになっていく、と以下の発信である。

◇IBM: Commercial Nanotube Transistors Are Coming Soon-Chips made with nanotube transistors, which could be five times faster, should be ready around 2020, says IBM. -IBM: Carbon nanotubes will replace silicon in the 2020s (7月1日付け MIT Technology Review online)
→IBM発。carbon nanotube-ベーストランジスタが、2020年以降何年かでシリコン-ベーストランジスタに代わると見る旨。5-nmプロセスノードがシリコン半導体ラインの終わりになると予想している旨。「シリコンscalingが息切れするところであり、実際他に何もない」(IBMのT.J. Watson research center[Yorktown Heights, New York]、nanotubeプロジェクトリーダー、Wilfried Haensch氏)旨。IBMは1998年以降carbon nanotubeトランジスタを作ってきている旨。

◇IBM Pledges Nanotube Transistor by 2020 or Bust-After two decades of research, new innovations seem to be on the right track (7月2日付け EE Times)

最先端半導体の難しさについて、装置メーカーからは山道にさしかかるロードマップという表わし方である。

◇Silicon Highway Narrows, Twists (6月30日付け EE Times)
→capital equipmentメーカー2社(KLA-TencorおよびApplied Materials)のexecutives発。半導体ロードマップが山道のように狭くねじれてきている旨。半導体ベンダーは、20-nm以降でより狭いマージン、新しいプロセスおよび材料による高コスト化およびcomplexitiesに直面している旨。

微細化も難しいが、新メモリもということで、MRAMについての見方である。

◇Magnetic RAM Remains Niche Memory - for Now-Magnetic RAM has potential, yet still a niche memory tech (6月30日付け EE Times)
→Magnetic RAM(MRAM)は、多くの応用でDRAMおよびSRAMに置き換わる可能性はあるが、standalone MRAM半導体を出荷しているのはEverspin Technologiesだけであり、その移行には時間を要する見込みの旨。

Semicon Westを控えて、Moore則、そしてシリコンscalingについての問題意識が高まる一途の現時点を感じている。まずはコストメリットについてである。

◇Technology Node Transitions Slowing Below 32 nm (6月30日付け SEMI)
→微細化ノードで期待する生産コスト削減のメリットが減少しており、多くの場合scalingメリットに歩調が合っていない旨。

一方、Moore則については緊急時の決定を要するときと、次の論調が見られている。

◇Moore's Law in Triage at Semicon West-Commentary: Is Moore's Law dead or alive? (7月1日付け EET Blog)
→Moore's Lawを生かしておく方法を議論するために半導体エンジニアが世界から集まるSemicon Westが間近(7月8-10日)、5-nmノード, extreme ultraviolet(EUV) lithography, 450-mmウェーハなどの議論に期待。1990年代半ばにインタビューしたGordon Moore氏の見方では、18-24ヶ月ごとのトランジスタ倍増は終わるはず、原子の限界にぶつかる旨。終わる前にやることが本当に困難になって鈍化していく旨。

たまたま目に入って、Moore則は、3Dプリンタでも引き合いとなっている。

◇The Moore's Law of 3D Printing… Yes it Does Exist, And Could Have Staggering Implications-There is a Moore's Law for 3D printers (6月28日付け 3DPrint.com)
→Intelのco-founder、Gordon Moore氏が1965年に定めたMoore's Lawは、約50年の間半導体業界を導いてきているが、同様な定式化が3Dプリンタ事業で定着する可能性の旨。3D SystemsのCEO、Avi Reichental氏が昨年予想して曰く、"プリンタは性能で倍、コストで半分になろうとしている"旨。

半導体業界に身を置く立場での現時点での思いが込められた以下の表わし方である。留まるところのないscaling、Moore則という半導体業界独特の魅力、興奮というものは、どうしても維持していかなければ、と素直なところではある。

◇It's always interesting times for the semiconductor industry (7月2日付け New Electronics)
→半導体業界がMoore's Lawに付いていきたいとなれば、大口径ウェーハ上にさらに多くの半導体を作らなければならない旨。しかしその道筋は少数のメーカーの領分、たぶん3社であり、顧客もさらに多くはない旨。業界の重点が、より微細なfeaturesの留まるところを知らない追求から、through silicon vias(TSVs)本来の難しさにも拘らずsystem in package(SiP)のようなものに移るのか?半導体executivesはいつも興味深い時間の中に住んでいるが、いま行われている決定は我々を今までよりもっと興味深い時間に置く様相がある旨。


≪市場実態PickUp≫

【3Dメモリ搭載SSD】

3D V-NANDフラッシュメモリで先行するSamsungが、昨年と同様に早々と搭載したsolid state drives(SSDs)を発表、まさに駆け抜ける取り組みである。
ただ歩留り、コストの問題が残る様相の一方、今度は32-層3D V-NANDと昨年の24-層から飛躍しており、この層数が新たな競争指標となっている。

◇Samsung 3D V-NAND Technology Supercharges Brand New SSD 850 PRO Series-Samsung's SSD 850 PRO Series features 3D V-NAND flash memory (6月30日付け Forbes)
→Samsungが、clientシステム向けsolid state drives(SSDs)新シリーズ、SSD 850 PROを披露、該drivesの中核には以前のSSD 845 EVOシリーズで使われたtriple-core MEXコントローラは同じであるが、該新SSD 850 PROシリーズでは従来のMLCあるいはTLC NANDではなく最先端の32-層3D V-NANDフラッシュメモリが特徴となっている旨。

◇サムスン、パソコン向け3Dメモリ搭載SSDを発表 (7月2日付け 日刊工業)
→韓国サムスン電子が1日、半導体を用いた記憶装置のSSDに関する事業説明会をソウルで開き、2014年の戦略製品を発表、記憶素子を垂直に積載する3次元(3D)構造を採用した先端のNAND型フラッシュメモリを組み込んだ製品が目玉、信頼性を向上させ、製品の保証期間を業界最長という10年間とした旨。3Dメモリ搭載SSDは東芝も2015年度後半以降に投入する計画、サムスンは先行投入し競争を優位に進めたい考えの旨。

◇SSD競争、新段階へ−3Dメモリ搭載が主戦場に (7月3日付け 日刊工業)
→サムスンが1日に発表したSSD「850プロ」は従来モデルに比べ信頼性は10倍に向上したものの、最大記憶容量は1テラバイト(テラは1兆)と同社の既存SSDと同じ、価格も699ドル99セント(1テラバイト製品)とインパクトのある設定ではなかった旨。サムスン関係者は「まだ製造コストが高い。まずは信頼性をアピールする戦略をとった」と明かす旨。

【3D-ICs製造装置】

上記の3D V-NANDをはじめとして三次元半導体への注目に輪がかかってきているが、SEMICON West(7月8-10日:Moscone Center in San Francisco)を控えて、関連する製造装置の発表が行われている。

◇EVG clears key barriers to 3DIC/TSV HVM with fusion wafer bonding solution (6月30日付け ELECTROIQ)
→MEMS、ナノテクおよび半導体市場向けウェーハbondingおよびlithography装置サプライヤ、EV Group(EVG)が本日、次世代fusionウェーハbondingプラットフォーム、GEMINI FB XTを披露、through-silicon vias(TSVs)を擁する3D-ICsのhigh-volume manufacturing(HVM)の目標に半導体業界を近づけていくためにいくつかの性能ブレイクスルーを結びつけている旨。

◇Applied Materials advances ion implant technology for 3D chip architectures (7月2日付け DIGITIMES)
→Applied Materialsが、sub-2X-nmノードでのFinFETおよび3D NAND設計の製造用に開発したmedium-current ion implantationツール、Applied Varian VIISta 900 3Dシステムを発表の旨。

【Qualcommの動き】

この第一四半期のcellularベースバンドプロセッサ市場は、Qualcommの席巻ぶりがシェア66%で示される一方で、同社は、WiGig技術のWilocityを買収、さらに次項のSMICとの中国での28-nmウェーハ生産コラボと、活発な動きとなっている。

◇Qualcomm Dominated Cellular Baseband Market in Q1-Intel drops from third to fifth-Report: Baseband chip market was again led by Qualcomm in Q1 (7月1日付け EE Times)
→Strategy Analyticsの最新Handset Component Technologiesサービスレポート。2014年第一四半期のcellularベースバンドプロセッサ市場($4.7 billion:前年同期比2.5%増)は、Qualcomm社が依然席巻、Intel社がここ3年で初めてトップ3から落ちた(第5位)旨。
 1. Qualcomm  シェア66%
 2. MediaTek     15%
 3. Spreadtrum     5%

◇Qualcomm Buys Wilocity to Dominate 60 GHz (7月3日付け EE Times)
→ubiquitous 60-GHz技術立ち上げに向けて、Qualcommが、WiGigとしても知られるIEEE 802.11ad標準ベースの60-GHzワイヤレスチップセットを開発するWilocityを買収、Qualcommが60 GHzをロードマップに公式に統合する最初の大手プレーヤーとなる旨。

◇Qualcomm Buys Wilocity, Stepping Up Broadcom Challenge-Qualcomm purchases Wilocity, pulling in a partner (7月3日付け Bloomberg)
→Qualcomm(San Diego)が2日水曜、802.11ad WiGig半導体開発のWilocity(Caesarea, Israel)を買収、両社は以前Wi-Fiの高速版、WiGig技術でコラボしていた旨。Qualcommは、該Wilocity技術を同社モバイル機器用Snapdragon 810チップセットに統合、Broadcomに対する競合優位性を得る期待の旨。

【SMICの動き】

そのSMICも、下記の通り、中国で公正取引の懸案を抱えるQualcommと最新Snapdragonプロセッサを製造するコラボを打ち出すとともに、CMOSイメージセンサについて12-インチのsupply chainを構築している。

◇SMIC establishes 12-inch CIS supply chain in China (6月30日付け DIGITIMES)
→SMIC発。SMICと凸版印刷が中国に設立した合弁、Toppan SMIC Electronics (Shanghai)(TSES)の12-インチカラーフィルターおよびマイクロレンズ生産ラインが完成、商用operationsに入っている旨。

◇China's SMIC-Qualcomm 28-nm Deal: Why Now? (7月3日付け EE Times)
→Qualcommは、SMICの28-nmプロセス成熟を早めるサポートを行う一方、SMICは、PolySiON(PS)およびhigh-K dielectrics metal gate(HKMG)の両方で28-nmノードのQualcommの最新Snapdragonプロセッサを製造する旨。
中国は昨年後半にQualcommへのantitrust調査を打ち上げており、中国当局がQualcommに中国エレクトロニクス業界とのコラボを強いるやり方を探っているという憶測がたくさんある旨。

◇SMIC and Qualcomm collaborate on 28-nm wafer production in China (7月3日付け ELECTROIQ)
→Semiconductor Manufacturing International Corporation(SMIC)とQualcomm Incorporatedが、モバイル機器用Qualcomm Snapdragonプロセッサの製造に向け、28-nmプロセス技術および中国でのウェーハ製造サービス関連で協働していく旨。

【64-ビットcomputing】

アップルの「iPhone 5s」に搭載された「A7」プロセッサで注目キーワードとなった64-ビットであるが、ARM-ベース64-ビットcomputingを巡る直近の動きが以下の通りである。

◇Actions Licenses ARM for 64-Bit Tablets (6月30日付け EE Times)
→昨年までconsumer high-endタブレット市場を圧倒していたiPad、しかしSony Xperia Z2およびSamsungのGalaxy Tab Sのような新しいAndroid-ベース機器がAppleと激しい競争を演じている旨。多くの他のタブレットOEMsは高性能64-ビットタブレットを投入しようとしており、Actions Semiconductor(Zhuhai, Guangdong, China:広東省珠海)は、2014年後半に同社初のsystems on chips(SoC)の供給を開始、high-end機器を開発し易くする旨。Actionsは、64-ビットARM Cortex A50プロセッサファミリーに向けたlicense合意調印を発表、タブレット機器用ARM-ベース64-ビット半導体を届ける中国の大手設計メーカーの1つになる旨。

◇ARM Unveils Juno Platform for 64-Bit Android Development -ARM, Linaro team up to boost adoption of 64-bit Android devices (7月2日付け eWeek)
→ARM Holdingsとopen-sourceソフトウェアconsortium、Linaroが、"Juno"ハードウェア開発プラットフォームでコラボ、開発者がAndroidモバイルoperating system(OS)の64-ビット版用のアプリおよびツールを作れるようにする意図の旨。ARMは、ARMv8-Aアーキテクチャーを擁して64-ビットcomputingに突き進んでいる旨。


≪グローバル雑学王−313≫

世界に衝撃を与えたり、世界を震撼させる具体的な事件、事例として、ボスニア紛争を取り上げ、

 『国際メディア情報戦』
  (高木  徹 著:講談社現代新書 2247) …2014年1月20日 第1刷発行

より2回にわたって"情報戦"と言われる所以、中身を見ていく。世界を動かにはアメリカと、「ボスニア・ヘルツェゴビナ政府」のハリス・シライジッチ外相がPR会社と組んでのまずは活動ぶりである。
ところで、ボスニア・ヘルツェゴビナというと、今回の2014 FIFAワールドカップでただ1つの初出場国。敗退はしたものの、出場に至るまでの過程を描いたNHK総合テレビの次の番組に注目させられた。あのオシム監督の奮闘を取り上げた以下の概要である。
『NHKスペシャル:民族共存へのキックオフ〜“オシムの国”のW杯〜』
 …2014年6月22日放送 21:00 - 21:50 
→ボスニア・ヘルツェゴビナの初戦を特別な思いで見つめる男がいた。元日本代表監督のイビチャ・オシムである。ボスニア代表は3つの民族の混成チーム。3つの民族は互いに憎しみ合い、かつて20万人もの命が失われたボスニア内戦を戦った。そんなボスニアを団結させ、ワールドカップ初出場に導いた立役者がオシムだ。対立と憎悪を乗り越え、奇跡のチームはどうやって生まれたのか。ボスニア代表とオシムの戦いの記録を追う。当時ボスニアサッカー協会はムスリム系、セルビア系、クロアチア系ごとに3人の会長が存在する異常事態に陥っていた。セルビア系・ミレ・コバチェビッチは他の民族は我々が地上からもいなくなることを望んでいる、クロアチア系・ヨシプ・ベヴァンダはムスリム人がサッカー協会を独占しようとしたことが許せなかった、ムスリム系・ディーノ・ベギッチは他の民族に支配される不安があるのは事実だと話した。

第1章 情報戦のテクニック −ジム・ハーフとボスニア紛争

1 アメリカを動かし、世界を動かす

□「泣かない赤ちゃんはミルクをもらえない」
・第三世界での紛争当事者、クーデターでできた新政権、あるいは独裁国家などのバックに欧米のPR会社
 →ニューヨークに本拠を置く全米第5位のPR会社、「ルーダー・フィン」社の例
 →「国際メディア情報戦」において、今や日常茶飯事
・「ボスニア・ヘルツェゴビナのことわざに、泣かない赤ちゃんはミルクをもらえない」(ハリス・シライジッチ政府外相)
 →メディアの力を利用、欧米諸国にプレッシャー
・ボスニア紛争でボスニア政府をクライアントとしたルーダー・フィン社
 →著者にとって初めての「国際メディア情報戦」の取材となったこの問題
 →「作戦」を取り仕切ったジム・ハーフ氏

□PR会社と広告代理店の違い
・広告代理店→クライアントが購入するメディアの広告スペースを通じてメッセージ伝送
・PR会社…PR firm。日本ではこの業種の社会的認知度は低い。
 →広告を金で買う以外のことは、すべてやる
 →テレビなら通常の番組や報道、新聞なら記事の部分に、クライアントの意志を反映させるのが仕事
 →さまざまなテクニックや人脈が必要
・場合によっては国家をもクライアント
 →国際メディア情報戦で手法を発揮するのがルーダー・フィン社のような会社、ジム・ハーフのような専門家

□アメリカの助けを借りたい
・1992年4月、一人の「外務大臣」がアメリカに
 →1ヶ月前に「独立」宣言をしたばかりの「ボスニア・ヘルツェゴビナ政府」外相、ハリス・シライジッチ
・偉大な指導者、チトーのもとで存在していたユーゴスラビア連邦
 →1989年の冷戦終結とともに急速に崩壊への道
 →スロベニア、クロアチアなど、次々と「独立」
 →ボスニア・ヘルツェゴビナもサラエボを首都として、1992年3月独立を宣言
・ボスニアの場合、極めて複雑な民族構成
 →独立を求めていたのは、人口の4割にすぎないモスレム人、3割を占めるセルビア人は猛烈に独立に反対
・ボスニア内に住むセルビア人は、ボスニアの隣にある「セルビア共和国」と同じ民族
 →戦闘でも優位に
・なんとか国際社会の助けをと、アメリカに派遣されてきたのがシライジッチ外相
 →万策尽きたかに見えた彼に、最後にツキ
 →PR会社のエキスパート、ルーダー・フィン社のジム・ハーフの紹介

□ハーフの戦略「サウンドバイト」
・当初、ハーフの仕切りで開かれたシライジッチ外相の記者会見は、悲惨なもの
 →バルカン半島での民族紛争はあまりに遠い世界の出来事
・ここからハーフの戦術の連打
 →3つのキーワード:「サウンドバイト」「バズワード」「サダマイズ」
 →現在の国際メディア情報戦でも通じる基本的なテクニック
・「サウンドバイト」…テレビの業界用語
 →"ぶらさがり"での発言を、数秒から十数秒の長さにカット、ニュースの中に編集
 →その発言の短い断片のこと
 →抜群に上手かったのが、小泉元首相
・シライジッチ外相はただ一つ、「話が長い」という欠点
 →ハーフは、シライジッチ外相にアメリカのテレビでどう表現するべきか、短期間に教え込んだ
 →長くても十数秒の間にもっとも重要なことをシンプルなセンテンスで伝えるというテクニック

□生放送での駆け引き術
・シライジッチ外相には(著者も)会ってインタビュー
 →天性のナルシスト
・「短い間に、テレビ画面で如何に効果的に表現するか、そのレッスンを受けた」シライジッチ外相
 →生放送でスタジオのアンカーと中継を通じて対峙
 →シライジッチの場合、「間」の取り方
・「ボスニアに関わるアメリカのメリットはどこにあるのか?」
 →2秒から3秒、思い切り沈黙して「間」
 →「なぜかだって?」「人道に背く行為を、決して見過ごさないのが、アメリカという国の責任と誇り」
・シライジッチ外相を「つい今しがた、流血と殺戮の現場、サラエボからやってきた外相」とプレゼン
 →テレビというメディアの特性を生かして視聴者の心に
 →見事に成功

□シライジッチ外相の困った人柄
・シライジッチにはいろいろ短所、ハーフはそれがわかってくると、人前では出させないようあらゆる手
 →そしてそれを完璧に
 →現在に至るまでシライジッチは、サラエボの悲劇を伝える伝道者のイメージを保持
 →2008年には、ボスニア・ヘルツェゴビナの国家元首の地位に。2010年にも二期目。

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