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最先端半導体技術に立ちはだかる様々な試練、軋轢

微細化、大口径が最先端半導体技術を象徴するキーワードと思うが、その一つ、450-mmの先行きに注意信号が灯っている。Moore則とともにコストの問題と、技術および経済の両面から最先端に取り組むメーカーが絞られてきて、グローバルな連携が一層必須という現実がある。米ニューヨーク州が世界の大手半導体企業5社とともに進めている450-mmのアプローチについて、lithographyシステムの開発延期が昨年12月に決定されたという事態が表面化しており、課題含みは当然ながら早期克服を願って注目している。

≪450-mm浮上の事態≫  

米ニューヨーク州の地元紙に以下の通り、450-mmウェーハプロジェクトが後退、要のリソシステムを受け持つオランダのASML Holdingが開発を昨年12月に中止しているという内容が出て驚かされている。

◇Global chip project at risk ?-Supplier halts development of machines that would make new generation of computer chips-Push for 450mm wafers is seen slowing as ASML backs away (3月17日付け Times Union (Albany, N.Y.))
→半導体製造装置サプライヤ世界最大手の1つ、ASML Holdingが、450-mmシリコンウェーハを扱えるlithographyシステムの開発延期を昨年後半決定、この動きは、New York州からの出資を受けている業界団体、Global 450 Consortiumの実行可能性に疑問を呈している旨。「ASMLは、450-mm投入にはいくつかの半導体メーカーの間の整合が必要と常に言っている。昨年末、このような整合が見られないことから、ASMLは450-mm開発プログラムを休めている。」(ASMLのspokesman、Ryan Young氏)
→computer半導体業界への世界最大手サプライヤの1つが、Cuomo行政が推進している新世代のcomputer半導体工場向けのマシン開発の中止を決定している旨。Siウェーハ上にある個々の半導体のパターンを印刷するlithographyマシンを作るオランダのASMLが、AlbanyのSUNY College of Nanoscale Science and Engineeringでテストされる新型大口径ウェーハを扱える装置の開発中止を12月に決めている旨。半導体業界は現在、12-インチ、すなわち300-mmウェーハを用いて半導体を作っている旨。

同州のAndrew Cuomo知事肝いりのプロジェクトであり、以下の見出しとなっている。

◇Worry over Cuomo's push to 450mm chip fabs ? (3月17日付け Albany Times Union)

ここでの世界の半導体大手5社とは、インテル、IBM、Globalfoundries、TSMCそしてSamsung Electronicsであるが、インテルからは取り組みに変わりはないとするコメントがすぐさま出されている。

◇Intel bullish on new wafers-Chip manufacturer still plans to use larger silicon part even after supplier ends its role-Intel remains committed to 450mm wafer fabrication (3月18日付け Times Union (Albany, N.Y.))
→ASML Holdingの450-mmウェーハ向けlithographyシステム開発の後退にも拘らず、Intelは、将来に該大口径ウェーハを用いる計画を進めている旨。「この10年の後半のどこかで運用を見込んでいることでは、450-mmに対する我々の位置づけは変わっていない。ASMLに対する450-mm出資は計画に沿うように調整しており、引き続き業界パートナーとタイミングを揃えて協働していく。」(Intelのspokesman、Chuck Mulloy氏)

規模、インパクトの大きい話だけに、同じ地元紙の中、ASMLの装置開発中断の事態の報が連日繰り返されている。

◇ASML: Chip makers calling shots on 450mm pause (3月19日付け Albany Times Union)
→オランダのcomputer半導体装置サプライヤ、ASMLが、その顧客が望むところということで大口径450-mmウェーハを処理できるマシンの開発を"一時的に休止する"決定を行ったことを明確にしたいとしている旨。ここ何年か半導体業界は、工場稼働に向けて12-インチ、すなわち300-mmウェーハからもっと大きい約18-インチ、450-mmウェーハに取り組んでいる旨。
Andrew Cuomo知事は2011年に、AlbanyのSUNY College of Nanoscale Science and Engineeringにて450-mmマシン開発コラボに向けて大手半導体メーカー5社のグループを集めた旨。該グループは、2016年までに$1 billionの投資が宛がわれ、450-mm処理マシンを用いる試作製造ラインを設けるために該NanoCollegeで$365 millionのクリーンルームを活用しており、該拠点はこの種で世界初となる旨。

◇Need takes first place-ASML says chip fab "pause" responds to demands of industry-ASML talks decision to pause 450mm development (3月19日付け Times Union (Albany, N.Y.))
→ASML Holdingの450-mmウェーハ用lithographyシステムの開発を遅らせる決定は、顧客が引っ張ったものである旨。「ASMLが顧客のニーズに完全に対応するというのが現実。450-mmに関する彼らの決定が我々の行動を知らせている。」(ASMLのspokesman、Ryan Young氏)

経済・市場情勢からしびれをきらすことは十二分に分かるところがあるが、早く取り組みの整合がとれてこの事態克服を願うところである。

最先端はいろいろ打開していかないと前に進まないのが常、450-mmに限らず同様な問題意識が見て取れる以下の内容と受け止めている。

◇Samsung Xian NAND flash plant begins commercial runs (3月19日付け DIGITIMES)
→業界筋発。Samsung Electronicsの中国・西安(Xian)にある新しいNANDフラッシュ工場が、商用稼働を開始、弱含みなNANDフラッシュ市場に一層圧力を加えている旨。ある筋の指摘するところ、該西安工場の当初の生産はNANDフラッシュ市場の停滞から限定的、加えて3D NANDデバイスの歩留りが比較的低いこともSamsungのウェーハ生産立ち上げを抑えている旨。

◇半導体製造装置、BBレシオ1.12、2月は0.02ポイント増加 (3月20日付け 日経産業)
→日本半導体製造装置協会(SEAJ)、19日発。2月の日本製半導体製造装置のBBレシオ(3カ月移動平均の受注額を同・販売額で割った値、速報値)が1.12、前月から0.02ポイント増、2013年4月から11カ月連続で1を上回った旨。受注額は前月比8.3%増の1087億円、販売額は6.3%増の974億円。
SEAJによると、3次元構造のトランジスタ「FinFET」を利用した論理ICや、記憶素子を積層した3次元NAND型フラッシュメモリなどの生産に利用する先端の半導体製造装置の受注が好調としているが、技術的な難度の高さから販売が追いつかず、BBレシオが高い水準のまま推移している旨。


≪市場実態PickUp≫

正式には近々発表予定の今年の半導体設備投資ベンダー別データの3月アップデート版が表わされている。増加の傾向が見られるなか、SamsungとIntelがほぼ並んで引っ張って、TSMCとの3社で全体の半分以上を占める構図である。

【今年の半導体設備投資予測】

◇Semi Makers Spend Big on Capex (3月21日付け EE Times)
→まもなくリリースされるMarch Update to the 2014 McClean Report発。
半導体capital spendingは増加の傾向にあり、市場リーダーが引き続き投資の大きな比率を占めていく旨。実際、Samsung, Intel, およびTSMCで今年の半導体業界capex全体の半分以上を占める旨。SamsungとIntelが今年各々$11 billionを投資、リードする旨。向こう3年にわたって、Samsungはメモリ生産の約60%を目指して$35.3 billionを投資、対してIntelは$32.6 billionと見込まれる旨。
・≪表≫ 2014年半導体capital spendingトップ10サプライヤ予測
http://img.deusm.com/eetimes/2014/03/1321573/Semicapex-McKeefry-03_21_14.png

特許収支という言い方がより以前からあるかと思うが、我が国の知的財産で海外に対しての儲けが初めて1兆円を越えている。この領域でもアジア勢が伸びているなか、今後一層の奮起が求められるところである。

【知財黒字】

◇「知財黒字」初の1兆円超、2013年度、特許収入増 (3月22日付け 日経 電子版)
→日本企業が特許や著作権などの知的財産を使って海外でどれぐらい稼いだかを示す「知財収支」の黒字額が2013年度に初めて1兆円を超える見通し、円安や海外生産の拡大で、日本本社が海外子会社に特許を貸して受け取る収入が急増、著作権からの収入も伸びている旨。輸出の伸び悩みやエネルギー輸入の拡大による大幅な貿易赤字の一部を穴埋めしている旨。

コンピュータの巨人という印象がいまだにあまりに強く、小生には1970年代からのいろいろな接点が思い出されるIBM。100年以上に及ぶ歴史の中のハイライト、推移データに注目して以下の通りである。

【IBMの歩み】

◇IBM: 11 Historic Changes at Big Blue (3月18日付け EE Times)
→100年以上にわたってIBMが歩んだ歴史、11点のslideshow:
・A Century of Building, Buying & Selling
・Humble Beginnings
 …1911年6月16日、New York州でComputing-Tabulating-Recording Company(C-T-R)としてスタート
・Solidly Business-Oriented
 …1931年、IBM 400シリーズaccounting machine打ち上げ
・Putting Typewriters in the Hands of the Masses
 …1935年、初の商用電気タイプライター、IBM Electromatic
・Hitting Big-Time Computing
 …1950年代、さらに技術シフト、初の真空管ベース大規模コンピュータ、IBM 701(1952年)
・The Golden Age of Mainframes
 …1964年、メインフレームcomputersファミリー、System/360投入
・Investing in the Network
 …1974年、computingシステム用networking protocol、Systems Network Architecture(SNA)発表
・So Many Directions, So Little Time
 …1982年、2つの産業用ロボットシステム、IBM 7565およびIBM 7535
・A Legacy of Innovation
 …2000年、personal computing機器のNetVistaファミリー
・Users Have Choices
 …1990年代、computing選択肢の増大するアレイ
・Changing the World
 …2010年、ソフトウェア市場にさらに深入り

また、同社の従業員数、売上高の推移にも改めて注目させられている。

 1922年     2,043人     $9 million
 1931年    6,331人     $19 million
 1935年    8,654人     $21 million
 1952年    41,458人     $412 million
 1964年   149,834人    $3.23 billion
 1974年   292,350人    $12.67 billion
 1984年   394,930人    $45.94 billion
 1994年   219,839人    $64.05 billion  
 2004年   329,000人   $96.5 billion
 2010年   426,751人    $99.87 billion

ARM Holdingsが台湾でのイベントにて、2018年までを見据えた半導体製品の展開目標を以下の通り表わしている。スマートフォンはもちろん、サーバおよびネットワーキング装置での積極的な浸透ぶりである。

【ARMターゲット】

◇Britain's ARM sees 50 pct rise in value of smartphone-related chips by 2018-Exec forecasts strong growth for value of ARM-based smartphone chips (3月20日付け Reuters)
→ARM Holdings発。スマートフォンのARM-ベース半導体valueが、2013年の$13 billionから4年で$20 billionになると見る旨。初のARM-ベースサーバ用半導体が2014年に出荷される旨。

◇ARM targeting the networking, server markets -ARM wants to increase its share of networking/server market by sixfold (3月21日付け The Taipei Times (Taiwan))
→台湾・台北でのnews conferenceにて、ARMのinvestor relations vice president、Ian Thornton氏。ARM Holdingsは、高エネルギー効率サーバおよびenterprise networking装置に入る半導体のシェアを昨年の5%から2018年までに30%にもっていく計画の旨。

Imagination Technologies Groupが、ray tracing技法を取り入れたモバイルグラフィックスプロセッサを発表している。ゲーム応用など高められるその効果内容が以下の通りである。

【Ray Tracing】

◇Imagination Offers Ray Tracing (3月18日付け EE Times)
→Games Developers Conference(San Francisco)にて18日、Imagination Technologiesが、モバイル応用のray tracingグラフィックスに向けた待望のハードウェア設計を打ち上げ、該Wizardブロックは、128 arithmetic unitsを擁するmulticore ray tracing unitをtile-ベースグラフィックス用のtextureおよびrenderingブロックと一緒に統合している旨。

◇Mobile games could look better with ray-tracing tech from Imagination-Imagination Technologies introduces a ray tracing processor in its latest mobile GPU-Imagination offers ray-tracing tech for mobile devices (3月18日付け Network World/IDG News Service)
→Imagination Technologies Groupが、新しいPowerVR GR6500モバイルグラフィックスプロセッサでray tracingを供給、該技術によりモバイルゲームなどの応用についてより豊かなdetailが得られる旨。ray tracingは、ゲーム開発者により豊かなdetailsとともにwriting codeに費やす時間を削減する旨。

◇Ray tracing makes its way into mobile devices (3月20日付け EE Times India)
→高品質ダイナミックlighting and shadow効果が得られ、ゲームエンジンの他のエレメンツも強化できるhybrid rendering技法、ray tracingについて。


≪グローバル雑学王−298≫

言語も民族もバラバラなまま、統一されずに今日まできているというインドについて、仏教のヒンドゥー教との違い、ヒンドゥー教のイスラム教の対立を乗り越えようとした宗教、シク教についてなど、

 『世界は宗教で動いてる』
  (橋爪 大三郎 著:光文社新書) …2013年6月20日 初版1刷発行

より迫って見るインド編2回の後半である。ターバンを巻いたインド人は少数派のシク教徒、勤勉・有能で政治、経済をリードしている人たちとなっている。


第四講義 ヒンドゥー教とインド文明−カーストは本質的に平等

クエスチョン4 仏教はヒンドゥー教とどう違うか

・仏>神 …仏教の一番大事な不等式
・仏教は、人間中心主義。人間の能力を極めて高く評価する。
 →仏は自分自身、自分の理想。仏になることを目指して、努力することが大事。
・仏教の経典には、インドの神々が登場
 →インドの神々を「天」と訳した
 →「梵天」「広目天」「毘沙門天」「弁財天」「韋駄天」・・・
  …みな、ヒンドゥーの神々
・「○○天」の役割 →お釈迦様の応援団
・ヒンドゥー教の逆襲
 →仏教をヒンドゥー教の一部として包摂、ブッダはヒンドゥー教の神の化身だとする考え方
 →仏<神 という不等式が成立してしまう

クエスチョン5 シク教とはなにか

◆多即一
・ヒンドゥー教にいう「一即多」あるいは「多即一」
 →「神々が大勢いても実は、ひとつの神がいるのと同じ」
・互いに干渉しないのがインド社会のルール
 →無関心が制度化
・ヒンドゥー教とまったく反りが合わないのがイスラム教
 →イスラムは仏教と違って、ヒンドゥー教の一部には絶対にならない。水と油
・タージマハールという立派なイスラム建築
 →イスラム王朝、ムガール帝国(1526〜1858年)が建てた
 →インドの民衆がヒンドゥー教を信じるのを妨害しなかった

◆シク教
・ターバンを巻いたインド人
 →インドでは少数派のシク教徒。どんな職業にも就くことができて、しかも勤勉
・ヒンドゥー教とイスラム教、両者を融合することはできず、もう一つの宗教、シク教に
・イギリスの植民地統治は、分割統治が基本
 →イギリスは、インド植民地軍を、有能でしかも少数派のシク教徒を中心に編成
・しばらく前まで、海外に出てビジネス、留学しようかは、ほとんどがシク教徒
 →とにかく勤勉、インドのユダヤ人との呼び方
・最近はヒンドゥー教徒も近代化、変わったインド

クエスチョン6 インド文明とはなにか

・インドの特徴 →孤立した、完結した世界
 →言語も民族もバラバラなまま、統一されずに今日まで
 →相互無関心、それが国民統合を難しく
・日本では、政府の行政指導が、社会慣行や宗教的ルールよりも強力
 →これぐらい近代化にプラスに作用、人びとの行動や考え方が変わる国は珍しい

クエスチョン7 覚りと解脱

・世界の正しい認識 + 自己コントロール →覚り
・覚りが本体で、解脱は結果
・仏教には、脱インド的な要素が最初から
 →インドの枠を飛び出して、中国に伝わり、日本へ
・ヒンドゥー教は、インドの外に出ていくことができない
・この世界の真理に目覚めて、その真理に基づいて行動すること、それが覚り

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