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爆裂成長を続けるTSMCは2nmの新工場建設へ!!〜新竹に2兆円投資

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台湾TSMCの爆裂的成長が止まらない。2020年7〜9月期の半導体ファンドリ売り上げランキングにおいて、TSMCは実に前年比21%増を達成し、1兆2485億円の実績となった(編集室注1)。2位のSamsungはわずかに4%増であり、金額で言えば4032億円であったわけだから、何とTSMCはSamsungの3倍強の売り上げを上げて一人勝ちの様相となっている。ちなみに、3位のGlobalFoundriesは前年比3%減と振るわなかった。

Intel、Samsung、TSMCが半導体業界における3強と言われて久しい。Intelは、言うまでもなくパソコン、サーバを中心とするコンピュータのCPUで圧倒的地位を築いている。ところが最近はAMDの急襲に会い、たじろいでいるのだ(編集室注2)。その理由は、AMDがTSMCの最先端ナノプロセスで量産しているためであり、営業最前線においてはIntelが負けるケースが増えてきている。5nmプロセスで量産に成功しているのは、現段階でTSMCだけなのである。IntelもSamsungも5nmのEUV(極端紫外線露光)プロセスで満足できる歩留りは全く出ていない。ファブレス大手のクアルコムは、ファンドリの委託先をSamsungからTSMCに変更するとまで言われている。

さて、TSMCの新工場であるが、場所は新竹市の本社から2kmの距離にある新竹サイエンスパークである。現在建設中の施設R1の隣に用地を取得する。2兆円を投入し、何と2nmプロセスの新工場を立ち上げ、ファンドリでぶっちぎりトップの地位をさらに拡大する勢いなのである。TSMCは、すでに5nm品の量産は楽々と成功しており、年内に販売予定のAppleのiPhoneに採用が決定している。そして、3nmプロセスについては台南で建設中の工場で22年下半期に量産を予定する。

こうした情勢を踏まえて、露光装置の世界トップ企業であるASMLは台湾の台南に「グローバルEUV技術トレーニングセンター」を開設した。TSMCの立地する台南サイエンスパーク内に設置したのだ。

冗談抜きに、ここ数年のうちに不動と言われた世界チャンピオンのIntelを打倒して、台湾TSMCが半導体生産世界トップに躍進する可能性は十分に強まってきた。EUVの最先端プロセスでの強みを持つことは、ユーザーを大きく刺激する。

そしてまた、世界の多くの半導体メーカーが大型投資を回避する方向にあり、TSMCに対する依存度は高まるばかりだ。何しろ自前主義のIntelが、今後はファンドリのフル活用を言い出しており(編集室注3)、TSMCに発注する可能性もあるというのだからお話にならない。しかし「超」親日の台湾におけるエース、TSMCの大躍進は日本の半導体製造装置メーカーや多くの材料メーカーにすばらしい福音をもたらすことだけは、間違いのないところだろう。

産業タイムズ 代表取締役社長 泉谷 渉

編集室注
1. 台湾の市場調査会社のTrendForceが8月24日に2020年第3四半期のファウンドリ各社の売上額見込みを発表したが、産業タイムズも独自の調査をしているようで、売上額の数字が微妙に違う。
2. Intelは最近、データカンパニーになると標榜しており、データセンター向けのサーバやHPC(High Performance Computing)には力を注いでいる。PC向けに力を入れているのはモバイルPCで、従来のノートPCやデスクトップPCにはさほど力を入れていない。ただ、最近発表した第11世代のCoreプロセッサTiger Lakeは10nmプロセスながら、FinFETの設計を見直し性能では7nmのAMDのRyzen 7 4800U製品よりも良いと発表している(Intelの11世代プロセッサ、微細化よりもFinFETと多層配線に工夫)。
3. Intelはファウンドリをフル活用するとは明言していないが、選択肢の一つであるとは述べている。

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