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IoT革命で激増する半導体は生産工場向けに!!〜半導体は200兆円に発展か?

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今や中国エレクトロニクスの中核に座ったファーウエイ(華為)によれば、IoTマーケットは2025年以降に23兆ドル、すなわち日本円で2300兆円以上になるとしている。かつてCisco SystemsがIoT全体で1100兆円との信じがたい予測を我田引水で出していたが、さすがに中国、もっとデカいことを言っているのである。

2025年には400億個のスマートデバイスが出回り、1人平均5個は使用するとも言うのだ。ビッグデータの成長も通常予想よりもはるかに上回り、2016年段階でデータ生成量8 ZB(ゼタバイト)は、2025年以降早期に10倍の180 ZBにまでになるとも予想している。 クルマは100%IoTとしてインターネットにつながり、90%の人は何らかの形でAI(人工知能)を使うようになるともいう。

こうしたファーウエイの見通しは、あまりに能天気ともいえるのだが、この間のAI、自動車、ロボット、センサの動きを見る限り、あながち大げさ、ホラ吹きとばかりは言えないのかもしれない。

世界の半導体設備投資は2018年も好調であり、初の10兆円台に乗せて行く。そしてまた国内半導体メーカーも11年ぶりに1兆円を超える投資を2年連続で断行するという勢いなのだ。2018年度の各社別投資を見れば、東芝メモリが4500億円、ソニーが1600億円と突出しているが、ロームが前年度比39.5%増の780億円、日亜化学が同87.8%増の770億円、さらに富士電機が同199.1%増の332億円を投入するというアクティブな姿勢を打ち出している。

さてこのうちソニーであるが、ここ3年間で半導体を中心に1兆円の投資を実行することも明らかにしている。もちろん世界シェア50%以上を握るCMOSイメージセンサのウェーハ能力を上げることがコアとなるのだ。300mm換算で月産10万枚の能力を倍増の20万枚に上げて行き、3年後の半導体事業の営業利益を最大2000億円以上とし、ソニー全体の中での稼ぎ頭にするという構想を打ち出している。

長くソニー半導体のトップリーダーとして活躍してきた上田康弘執行役員の話を聞く機会に先ごろ恵まれたが、これはインパクトがあった。半導体主力の熊本工場には1万点の生産設備があるが、ここにはすべて自社のCMOSイメージセンサを取り付けて生産管理をしている。また、半導体製造にAIを活用し、徹底的な生産計画の見直しを実行し、生産効率が抜群に上がったと言う。

筆者はこの話を聞いていて、実は震えるほどの驚愕が心の中に生じた。もし、世界の産業全ての生産工場にAIが導入され、設備の1点1点にCMOSイメージセンサをはじめとする半導体が、メモリも含め搭載されていくとしたら、ほとんどカウントできないほどの膨大な数の半導体が出て行くことになる。

次世代IoT時代における半導体を引っ張る柱は、自動車、ロボット、農業など様々なことが言われているが、実のところ一番半導体を使うのは、あらゆる産業の世界の生産工場の設備なのだと断言してもよいだろう。

そんなとんでもないことになれば、あながちファーウエイの言うIoT市場2300兆円はただの放言とは言えないかもしれない。すなわち2300兆円のうち、約10%弱を半導体が担ったとすれば200兆円という半導体の巨大市場が構築されることにもなる。シェークスピアではないが、ただの「夏の夜の夢」で終わるのか、それは来るべき時代が証明していくことになる。

産業タイムズ 代表取締役社長 泉谷 渉

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