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センサはIoT時代を切り開く〜電子部品ビッグ3は村田、TDK、日本電産

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IoT時代は、あらゆるものがセンサ、マイコン、ビッグデータなどでネットワーク化され、便利で暮らしやすい未来社会を構築しようというものだ。

例えば、中国政府は新しくできる橋すべてにセンサを付けるという規制を整備させている。今後はあらゆる国で橋、トンネル、公共建築物、病院、さらには一般家庭にまで送受信センサモジュールが付くことになる。こうした社会インフラ分野では半導体、電子部品、センサを融合したモジュールが主役となる状況が必ず訪れると言われる。

米国のトリリオンセンサプロジェクトは2023年に年間1兆個のセンサ(現在の100倍)が必要と指摘しているが、指数関数的に将来を見渡せば1兆個ではとても済まない、という意見もある。総量として何と45兆個が必要という声さえあるのだ。

JEITAによれば、センサの世界市場は2011年段階で2兆円弱であったが、2015年には3兆円を超えてきた。2020年には実に11年比3倍の6兆円弱になると予想されている。しかし筆者は、こんな金額では済まないと思う。東京オリンピックを迎える2020年には少なくとも10兆円以上の巨大マーケットになっていくことは間違いない。

生産現場におけるIoTシステムの導入は、加速度的に進んでおり、日本の大手企業も既に100社以上がすべての工場、事業所、研究所、営業所などをIoTシステムで再整備するという投資を考えているからだ。センサ大活躍の舞台が整いつつある。日本勢はセンサ市場全体の世界シェアの30〜40%を握っており、今後も世界トップを疾走していくことは間違いないだろう。

センサといっても様々な種類に分かれている。JEITAの予想によれば、2020年のセンサ需要額約6兆円のうち、最大のものは光センサであり全体の27%を占める。この主役は何といっても人間の目に当たる半導体であるCMOSイメージセンサだ。次に慣性センサ22%、圧力センサ20%、磁界センサ15%、その他13%となっている。

今や自動走行運転が世界の話題となりつつあるが、そうした先進運転支援システム(ADAS)においてもセンサは大活躍する。ADASで重要となる単眼カメラ、ステレオカメラ、ミリ波/準ミリ波レーダー、超音波センサ、レーザーレーダー、ライダー(編集室注1)などには膨大なセンサ需要が生まれる。単眼カメラやステレオカメラにおいてはCMOSイメージセンサで圧勝するソニーをはじめパナソニック、オムニビジョン、メレキシス、オンセミなどのセンサデバイスメーカーが活躍する。日本メーカーだけを拾って言えばミリ波レーダーでは三菱電機やパナソニック、レーザーレーダーでは浜松ホトニクス、住友電工デバイス、超音波センサでは村田製作所、日本セラミック、走査型レーダーでは浜松ホトニクスが出番を迎えている。

半導体技術を駆使するCMOSセンサを除けば、センサデバイスのほとんどは一般電子部品というジャンルのデバイスになる(編集室注2)。現状で約25兆円の世界市場を築いている分野で、日本の電子部品企業はマーケットシェアの約40%を握っていると言われる。IoTシステムがもたらす市場は、2020年度でおおよそ360兆円とまで言われており、数十年後には900兆円にまで膨れ上がるという。

IoTの電子デバイスにもたらすインパクトは、巨大であることは間違いない。そのデバイス分野で最も恩恵を受けるのは、センサモジュール全体を仕切ることができる一般電子部品メーカーだろう。先ごろ筆者は2016年3月期の国内電子デバイスメーカーの売り上げランキングを作ってみたが、驚くべき予想が出てきた。国内の電子デバイスの最大メーカーはもはや東芝ではなく、村田製作所がとって代わることになる。

今のところのデバイスメーカーランキングでは第1位村田製作所1兆2000億円、第2位TDK1兆1800億円、第3位日本電産1兆1500億円、第4位東芝セミコンダクタ1兆1000億円、第5位ソニー7800億円、第6位アルプス電気7750億円ということになりそうだ。何と上位6社中4社が一般電子部品メーカーであり、半導体メーカーは2社にとどまっている。

かつては、巨大な半導体メーカーを下から見上げていた電子部品各社のここに来ての一気台頭は目覚しい。あっという間に世界が変わる、というのは実にこのことだろう。

産業タイムズ 代表取締役社長 泉谷 渉

編集室注1)LIDAR(Light Detection and Ranging)のこと。レーザーレーダーなど光を使って360度走査し、周囲の物体との距離を測定する装置。グーグル自動運転車のルーフに載っている、クルクル回る装置はその一例である。

編集室注2)光センサ以外のセンサも、半導体MEMS技術で作っているものが多く、逆にMEMS技術で作る製品の大部分がセンサである。加速度センサやジャイロセンサ、圧力センサ、磁気センサなどはシリコンのMEMS技術を使っている製品が多い。従来、水晶で作っていた発振器でさえ、半導体MEMS技術で作っている製品もある。

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