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ダイヤモンドこそ究極の半導体材料だ!!〜シリコン限界を超える

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微細加工10ns以下の半導体製造プロセスについて大きな壁が立ちふさがっていることは誰でも知っている。とりわけ露光装置については、これまでの延長線上で行かれないとされており、EUVなど様々な次世代装置の開発が進められているものの、いまだブレークスルーは見られない。微細化限界を超えなければウエアラブル端末、ヘルスケア端末、さらにはM2Mに代表される長距離かつ高周波の無線通信の時代も見えてはこないのだ。

こうなれば材料そのものを変えてしまえ、という考え方が出てくるのも当然のことだろう。かつては、ガリウム系を中心とした化合物半導体が取って代わるといわれたが、コスト、使い勝手、安全性などの点で絶対の主役とも言うべきシリコンに置き換わることはほとんどできなかった。カーボンナノチューブやフラーレンなどのナノ材料を使おうという動きも出てきており、すでにトランジスタはおろかICの生産まで踏み込んできてはいる。しかしながら、これまたナノレベルの世界なので量産装置を作るところまでは至っていない。またコントロールしにくいという欠点もある。鉄でやったらいいだろう、という暴論もあるが、とにもかくにもシリコンに代わる材料を血まなこになって見つけなければ半導体の未来像は大きく揺らいでしまうだろう。

ところが、シリコンに代わる有力な材料は身近にあるのである。かなりセレブなお姉さまのいる高級クラブや貴賓たちが集う上流社会のパーティなどで、お美しい方の指に燦然と輝くダイヤモンドこそ高周波半導体の次世代材料としてかなりの期待がかかっているのだ。筆者などはガラスの指輪とダイヤモンドの指輪を見分ける能力もないため、女性たちにバカにされることもしばしばであるが、プレゼントされて一番嬉しいものはダイヤモンド、という女性は数多いだろう。

さて、佐賀大学に嘉数誠という教授がおられる。この方は同大学のグリーンエレクトロニクス研究所の所長であるが、京都大学で電気工学を学び、超格子の研究で工学博士を取得している。NTTの基礎研究所で長く半導体の研究にいそしまれたが、2000年ごろにダイヤモンドが持つ特性に気がつき、次世代半導体材料として実用化することを目標にひたすら研究を続けておられる。

「ダイヤモンドのトランジスタを作ったことで知られる高周波デバイスの権威であるドイツのコーン教授に直接薫陶を受けることができたことが大きい。多くの人ははじめに材料ありきで研究を始めるが、自分のスタンスは半導体デバイスそのものを深く研究しつつ同時並行でダイヤモンドという新材料の特性を調べていくことにあった。コーン教授とは激しい論争、つまりディベートしたが、このことが自分の研究を飛躍的に発展させるきっかけになった」(嘉数教授)。

ダイヤモンドの高周波特性は素晴らしい。しかも電子の移動度については現在のシリコンに比べて超高速なのだ。嘉数教授の研究室では1GHzでのパワー2.1W/mmという高いレベルのパワートランジスタ特性を確認できている。現状では電子ビーム露光、国のファンドリー、さらには九州大学の分析装置などを利用して量産に必要不可欠な技術の確立に一直線に進んでいるという。

「5年以内に技術的ブレークスルーを果たしたい。そして10年以内に実用・量産化に持ち込みたい。まず使える領域は、何といっても高周波のパワーデバイスだろう。ポストSiCと言い換えてもいい。すでに100社以上と共同研究または開発試作(30社以上から問い合わせがあり、すでに共同研究を5社と行っている)を行っており、これが完成すればM2M時代にふさわしいデバイスが誕生することになるだろう」(嘉数教授)。

コスト競争力であるが、人工ダイヤモンドはメタンガスのCVD成長で作られるためにシリコンと比べてもバカ高い値段にはならない。ダイヤモンド半導体の量産が確実になれば、宇宙航空、高速鉄道、医療機器などにも多くの恩恵をもたらすだろう。

産業タイムズ 代表取締役社長 泉谷 渉
(2015/01/14)

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